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新緑の季節に訪れたい、植物をまとう名建築10

  • 2026.5.11
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いよいよ新緑の季節。街を見渡せば、木々だけでなく建物までもが鮮やかな緑に染まっている。山のように連なる緑のテラスや、長い年月をかけて蔦が覆った情緒あふれる佇まい。建物全体が呼吸しているかのようなその姿は、眺めるだけで日常を忘れさせてくれるはず。新緑の季節にこそ訪れたい、10の場所をご案内。

©Katsumasa Tanaka

白井屋ホテル/群馬県

群馬県前橋市に佇む「白井屋ホテル」は、建築家・藤本壮介が全体設計を手がけ、創業300年の老舗旅館を大胆に再生したアートホテル。歴史を継承する「ヘリテージタワー」と、旧利根川の土手をイメージして新築された「グリーンタワー」の2棟で構成される。「グリーンタワー」は、街の中に突如現れた緑の丘のような佇まいが印象的。藤本壮介がかつての河岸段丘を再構築した、建築と街、そして自然が溶け合うその姿は、前橋の街に新たな生命を吹き込む“めぶく。”場所としてのシンボルとなっている。

©Shinya Kigure

内部の見どころは、ヘリテージタワーを貫く圧倒的な4層吹き抜けの空間だ。床を解体し、剥き出しになった力強いコンクリート躯体に、レアンドロ・エルリッヒによる光のアートが絡み合い、屋内広場のような開放感を創出している。藤本壮介、ジャスパー・モリソンやミケーレ・デ・ルッキ、「ミナ・ペルホネン」ら世界的クリエイターがデザインした28の客室や共有部には異なるアートが置かれ、滞在そのものがアート体験となる。美食ガイド掲載のレストランや、新素材研究所が手がけた空間など、あらゆるジャンルが熟成され調和していて、訪れるたびに感性を揺さぶるインスピレーションを与えてくれる。

©Shinya Kigure

白井屋ホテル
住所/群馬県前橋市本町2-2-15

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麻布台ヒルズ/東京都

六本木ヒルズと虎ノ門ヒルズの中間に位置する「麻布台ヒルズ」は、圧倒的な緑に包まれた“Modern Urban Village”を体現するコンパクトシティだ。故シーザー・ペリらが手がけた超高層タワーと、トーマス・ヘザウィックによる有機的な低層部が融合する景観は、新時代の東京を象徴している。敷地の約3分の1を占める24,000㎡もの緑地には約320種の植物が息づき、オフィスや住宅、商業施設、そして日本初上陸のホテル「ジャヌ東京」などが、多様な都市機能を有しながら自然と調和するように集積している。

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街の核となるのは、季節の植栽が彩る広大な「中央広場」だ。ヘザウィックによる「The Cloud」と一体化したアリーナが未来的な刺激をもたらす一方、約200㎡の果樹園ではミカンやレモンなど11種の樹木が実り、都心であることを忘れさせる豊かな情景が広がる。東西を結ぶ桜麻通りには様々な樹木が芽吹き、街の至るところにパブリックアートが点在するのも興味深い。再生可能エネルギーを100%活用するこの広場のような街は、ただ歩くだけで、都市と自然が共生する健やかな心地よさに満たされるはず。

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麻布台ヒルズ
住所/東京都港区麻布台1-3-1

© Museo d'Arte Ghibli

三鷹の森ジブリ美術館/東京都

三鷹の森の一部として溶け込むこの美術館は、建築そのものがひとつの表現となっている。威張らず、肌触りの温かな建物を目指したという館主・宮﨑駿の言葉通り、光が射し込むオレンジ色の壁や木々の隙間から見える丸い屋根が、井の頭公園の緑と美しく優しい調和を見せる。歳月とともに色濃くなった景観が屋上庭園のロボット兵を優しく包み込み、中庭の井戸や薪置き場といった、自然の息遣いを身近に感じられる仕掛けが随所に息づいている。

© Museo d'Arte Ghibli

館内は、螺旋階段や空中廊下が縦横無尽に交差する不思議な構造だ。天井のガラスドームや窓のステンドグラスにはジブリのキャラクターが描かれ、射し込む光が幻想的な世界を創出している。“子どもたちを一人前に扱う”という方針のもと、自らの手で扉を開け、何かを発見する喜びが尊重されているのが特徴だ。本やがらくたが溢れる展示室、そしてフィルムのきっぷ。細部まで徹底された“感じたい人が感じられる”しつらえが、訪れる者の想像力を静かに、けれど力強く刺激し続けている。

© Museo d'Arte Ghibli

三鷹の森ジブリ美術館
住所/東京都三鷹市下連雀1-1-83(都立井の頭恩賜公園西園内)
※日時指定予約制

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地中図書館/千葉県

サステナブルファーム&パーク「KURKKU FIELDS」の緑豊かな谷筋に、ひっそりと隠されるように存在する「地中図書館」。建築家・中村拓志が手がけたこの建築は、かつての建設残土で埋め立てられた土地を再生し、植物や微生物たちの繁栄の下に慎ましく佇んでいる。小さな大地の隙間をくぐり抜けると、雫のような形をした中庭を囲むように、洞窟を思わせる安らかな居場所が現れる。大地を母性の象徴と捉え、耕す人の休息の場として設計されたこの空間は、まさに土の中の微生物と共生するように本と出会い、知を蓄えるための拠点。

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内部は床や壁、天井がなめらかな土仕上げで繋がり、梁や柱といった建築的要素を排した静謐な空間が広がる。大地の傾斜をそのまま活かした「本のコリドー」は、天井の低い隠れ部屋が点在し、本を引き抜くと万華鏡が現れる仕掛けや、ピンホールカメラのように空を映す天窓が想像力を刺激する。最深部には、細い木材が幾重にも重なり合って高い天井を支える、ドーム状のホールを配置。自然の呼吸を感じる換気システムや本型の照明に包まれ、自分自身の内面を耕すような思索の時間を静かに堪能できそうだ。

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地中図書館
住所/千葉県木更津市矢那2503 (KURKKU FIELDS場内)

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碌山美術館/長野県

北アルプスの麓、安曇野の自然に溶け込むように佇む「碌山美術館」。日本近代彫刻の先駆者である荻原守衛(碌山)を顕彰するため、1958年、長野県下の小中学生を含む約30万人もの力によって誕生した。新緑に映える建築群の中心は、蔦をまとい、焼きレンガを積み上げた西欧教会風の「碌山館」だ。尖塔には不死鳥が飛翔し、入口には「LOVE IS ART, STRUGGLE IS BEAUTY」という碌山の力強い言葉が刻まれている。地域の人々に愛され守られてきたその佇まいは、まさに安曇野の原風景といえる。

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敷地内には、守衛の絵画やデッサンを展示する「杜江館」や、高窓から自然光を採り入れた「第二展示棟」など、多彩な建築が点在する。「第一展示棟」では彫刻家・高村光太郎らなど守衛の友人たちの作品も紹介され、近代彫刻が歩んだ確かな軌跡を辿ることができる。また、地域の教員らの奉仕作業により建てられた「グズベリーハウス」は、枕木を用いた校倉造りに石葺屋根を載せた、あたたかみ溢れる意匠が印象的だ。現在はDVDの上映や鋳造資料の展示を行うほか、鑑賞の合間に立ち寄れる憩いの場として親しまれている。

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碌山美術館
住所/長野県安曇野市穂高5095-1

©︎Nacása & Partners

ラ コリーナ近江八幡/滋賀県

小高い丘からの眺めに感銘を受けたミケーレ・デ・ルッキが名を授けた「ラ コリーナ近江八幡」。藤森照信が設計・監修したメインショップは、草に覆われた屋根が周囲の山々と呼応し、豊かな生命力を放っている。“自然に学ぶ”をコンセプトとした広大な敷地には、和洋菓子の専門店やフードコンテナ、田んぼや畑などが立ち並び、山で拾ったどんぐりを苗木から育て敷地内に植えるなど、未来へ向けた森づくりが着実に行われている。訪れるたびに新しい発見に出会えるこの場所は、ゆったりとした自然の流れに寄り添いながら、長い年月をかけて手がける壮大な丘の構想そのものといえる。

©︎Nacása & Partners

内装には、自然素材の新たな表現に驚かされる独創的な仕掛けが満ちている。メインショップの天井を埋め尽くす黒炭のピースは、藤森の指導のもとスタッフ自らが施したもので、視覚的な美しさと消音という機能性を両立させた。また、100本以上の栗の木が林立するカステラショップは、その圧倒的な質感で訪れる者を魅了する。お菓子づくりのこだわりを聞くバームファクトリーツアーや、自然との繋がりを学ぶ体験プログラムといった“小さな旅”も用意されており、建築から食、そして環境活動までがシームレスに繋がっている。ガラス張りの工房でバームクーヘンが焼き上がるライブ感を楽しみながら、五感のすべてで自然の循環を体感できるのが、この場所の醍醐味だ。

©︎Nacása & Partners

ラ コリーナ近江八幡
住所/滋賀県近江八幡市北之庄町615-1

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なんばパークス/大阪府

南海ホークスの本拠地・大阪球場跡地に建つ「なんばパークス」は、ジョン・ジャーディ、大林組、日建設計が手がけた、都市と自然が融合する巨大な“地形”。最大の特徴は、地上9階まで段丘状に続く「パークスガーデン」だ。約500種、10万株の植物が覆い尽くすこの空間は、商業施設の上に広大な緑の大地を重層させるという大胆な構想を体現している。ヒートアイランド現象の緩和や生態系の再生に寄与するこの人工の森は、新緑の中、曲線の階段やテラスを巡るだけで街歩きの本来の楽しさを思い出させてくれる。

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地層のような色彩が施された「キャニオンストリート」を軸に、ショッピングや映画館、ホテル、オフィスが集う。館内にはWi-Fi完備の屋外ワーキングスペースや、最上階の「はらっぱ広場」など、草花に囲まれて過ごせる場が点在。専属ガーデナーによる解説ツアーや幻想的なナイトガーデン、季節限定のBBQといった多彩なコンテンツも、ここでの時間をより鮮やかに彩る。

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なんばパークス
住所/大阪府大阪市浪速区難波中2-10-70

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アクロス福岡/福岡県

エミリオ・アンバーツと日本設計、竹中工務店の共同構想によって生まれた「アクロス福岡」は、日本設計と竹中工務店が設計を担当したグリーン建築の先駆的作品だ。建物を一つの山に見立てた南側のステップガーデンは、隣接する公園の緑が最上階まで繋がっていくような壮大な景観を創出。1995年の竣工時から樹種は2倍以上に増え、今や200種類以上が息づく自然そのものの生態系を育んでいる。

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内部は本格的なシンフォニーホールや国際会議場、伝統工芸のギャラリー、オフィスなどが集積する文化・情報の交流拠点だ。地上12階までを貫く巨大なアトリウムが自然光を館内へ届け、外側の鬱蒼とした森と開放感に満ちた吹き抜けが鮮やかな対比を描き出す。高い環境性能とデザイン性が結実した空間は、多機能な都市施設でありながら、生命力あふれるオアシスとして成立している。

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アクロス福岡
住所/福岡県福岡市中央区天神1-1-1


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体験学習施設ぐりんぐりん/福岡県

福岡のアイランドシティ中央公園に位置する「ぐりんぐりん」は、建築家・伊東豊雄が手がけた、緑と建築が溶け合う共生空間。巨大なリボンのように縦横にうねるコンクリートの屋根を豊かな緑が覆い、今や本物の丘のような佇まいを見せている。緑に包まれた屋上の遊歩道を散策すれば、ここが建築の上であることを忘れてしまうような錯覚に陥るはず。360度の大パノラマで街や海を一望できるこの屋上緑化は、視覚的な美しさのみならず、室内温度を下げる環境的な役割も兼ね備えている。

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花と緑をテーマにした施設内には、3つの異なる個性が宿る。開放的な北のフリースペース(写真)から、マレーシアの姉妹都市から贈られた亜熱帯植物がガラス天井の下で瑞々しく生い茂る中央ブロック、そして水生生物の観察が叶う南ブロックへと、多彩な情景が連続する。さらに、園内に点在するユニークな休憩所「フォリー」にも注目。かつて18世紀イギリスの庭園を彩った“風変わりな建物”を意味するその造形を巡りながら、建築と自然の新しい関係を体感したい。

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体験学習施設ぐりんぐりん
住所/福岡市東区香椎照葉4-1

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那覇市役所/沖縄県

沖縄を代表する建築家・国場幸房が設計した那覇市役所本庁舎は、2012年に竣工した環境共生型建築だ。“亜熱帯庭園都市”のシンボルとして、ひな壇状の屋上庭園や緑化ルーバーを大胆に配し、建物全体が植物をまとう。ブーゲンビレアやカエンボクなど90種類におよぶ地域特有の植物たちが壁面を彩り、開花時期や色彩の異なる草木が層を成すことで、単調さを排した生命力溢れる佇まいを実現している。

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深い庇とルーバーに守られた内部は、通風と採光に恵まれた開放的な空間。中央に吹き抜けを配したシンプルな構成により、屋内のどこにいても外の緑陰が視界に入り、訪れる人に穏やかな安らぎを届けてくれる。災害に強い免震構造を採用した防災拠点としての安心感とともに、時間とともに表情を変える光が緑のカーテンを照らし出す様子も印象的。那覇の日常に溶け込み、自然とともに呼吸を続ける建築といえるだろう。

那覇市役所
住所/沖縄県那覇市泉崎1-1-1

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