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【60代二拠点生活】ハワイで骨折して気付いた!「好きなものだけに囲まれる暮らし」の豊かさ【リサ・ステッグマイヤーの二拠点生活Diary】

  • 2026.9.8

家族でハワイに移住したリサさんの、ハワイと東京の二拠点生活の日常をお届けするエッセイ。
今月は「骨折をきっかけに見直したこと」についてのお話です。

人生初の骨折を経験

皆さん元気にお過ごしですか? この連載が掲載されるころには、日本はすっかり夏本番でしょうか。寒い時期には暑さが恋しくなり、暑くなると今度は涼しさが恋しくなる。人間とは本当に勝手なものです。 ハワイには住宅問題や物価高などさまざまな課題がありますが、それでもここに住み続けたいと思うのは、やはり1年を通して気候が比較的穏やかで過ごしやすいからです。年齢を重ねるにつれ、体にやさしい環境のありがたさを実感するようになりました。 そんな私ですが、5月半ばに人生初の骨折を経験しました。テニスの試合中に華麗なプレーをしていて負傷した……というかっこいい話ではありません。ごく普通にテニスをしていたとき、足首をひねり、そのまま転倒してしまったのです。その瞬間、「これはちょっとまずいかもしれない」と思いました。実はその日は朝からヨガに行き、その後テニスに。少し疲れていて、「今日はやめておこうかな」とも思ったのですが、行けばきっと楽しいだろうと向かった矢先の出来事でした。 後悔しても仕方がありません。人生にはそういう日もあります。帰宅して夫に話すと、「ただの捻挫かもしれないから冷やして様子を見たら?」とのこと。頭が痛いと言えば「水分ちゃんと取った?」、どこか調子が悪いと言えば「少し寝れば治るんじゃない?」。わが家だけなのか、それとも世の男性全般に共通するものなのかはわかりませんが、どうも女性ほど深刻には考えないようです。もちろん、そのおおらかさに助けられることもあります。でもこのときばかりは違いました。 いやいや、これは尋常な痛みではない。足はみるみる腫れて、夫もさすがにただの捻挫ではないと思ったのでしょう。頭痛なら水分不足、体調不良なら睡眠不足という夫ですが、今回は状況の深刻さが伝わったようで、そのまま病院へ連れて行ってくれました。

レントゲンの結果は第5中足骨骨折でした。幸い手術やギプスは必要ありませんでしたが、しばらくは特殊な靴を履き、足をできるだけ高くして過ごすようにと言われました。そこで私が真っ先に聞いたのは、「泳いでも大丈夫ですか?」ということでした。普通なら、いつごろ治るのか、いつ歩けるようになるのかを気にするところです。でも、私の頭に浮かんだのは泳げるかどうかで
した。我ながら少し呆れますが、それだけ水泳が生活の一部になっているのだと思います。 先生からは「キックはしないでくださいね」と言われました。ならばと考えたのが、足を使わずに泳ぐ方法です。プルブイを脚に挟み、キックをしない。壁も蹴らない。ターンも慎重に。実は先生には内緒ですが、骨折して3日後にはもうプールへ行ってしまいました。もちろん足は使いません。それでも水の中に入れたことは、私にとって大きな救いでした。

不自由さは体だけではなく心の元気まで奪ってしまいます

しばらくして、友人の一人が「少しだけ海に入ってみる?」と誘ってくれました。そのひと言が、どれほど嬉しかったことか。ただ、海へ入るまでが一苦労です。砂浜を普通に歩くと激痛が走るため、片足でケンケンをしながら進み、無理な場所では砂浜を這うように前進。いま思い返しても、なかなかの光景だったと思います。 案の定、見知らぬ人から“Are you OK? Did you get stungby a jellyfish?”(大丈夫? クラゲに刺されたの?)と心配されてしまいました。まさか骨折した足で海へ入りに行こうとしているとは思わなかったのでしょう。「いえ、骨折です」と答えながら、自分でも少しおかしくなってしまいました。 それでもなんとか海へたどり着きました。海の中では友人たちとおしゃべりをしたり、のんびり泳いだり。気がつけば1時間ほど海で過ごしていました。もちろん足は使えませんし、普段のように自由に泳げるわけではありません。それでも久しぶりの海はやっぱり気持ちのいいものでした。海に入れたことも嬉しかったのですが、それ以上に友人たちと過ごす時間が楽しかったのです。 怪我をすると、どうしても「できないこと」ばかりに目が向きがちです。でもあの海の日、私はできなかったことよりも、「まだできること」のほうに目を向けられた気がしました。そしてなにより、手を差し伸べてくれた友人たちのやさしさが深く心に沁みました。 今回の骨折で改めて身に染みて感じたのは、健康のありがたさです。私たちは普段、自分の足で歩き、好きな場所へ行き、好きなことをしています。あまりに当たり前過ぎて忘れてしまいがちですが、ほんの小さな骨1本を痛めただけで、日常生活は驚くほど不便になってしまうのです。 骨折して数日後には、Amazon でニー・スクーターを注文しました。膝を乗せて移動する小さな乗り物なのですが、これが想像以上に便利! プールの駐車場からプールまで。スーパーの駐車場から店内まで。歩くと痛い距離でも、ニー・スクーターがあるだけでずいぶん気持ちが楽になります。 骨折して初めて知りましたが、世の中には本当にいろいろな便利グッズがあるものです。とはいえ、自由に歩けないことには変わりありません。そして不思議なことに、不自由さは体だけではなく心の元気まで奪ってしまいます。ハワイの空は相変わらず青いし、海も変わらず美しい。にもかかわらず、気分が晴れない瞬間があるのです。そんな自分に少し驚きました。環境が人を幸せにしてくれる部分はもちろんあります。でも最後はやはり健康なのだと実感しました。

骨折で気づいたこと

さらに今回の骨折で、もうひとつ意外な発見がありました。それは「好きなものだけに囲まれて暮らしたい」ということです。もちろん必要なものはあります。でも骨折して家で過ごす時間が増えたことで、本当に好きなものや必要なものだけがあれば充分なのではないかと思うようになりました。 比較的、家の中は片づいているほうだと思います。それでも骨折して行動範囲が狭くなると、いままで気にならなかったものまで目につくようになりました。この棚の中のもの、最後に使ったのはいつだったかな。この引き出しの中に入っているもの、本当に必要かな。そんなことを考える時間が増えました。 特に東京とハワイの二拠点生活をしていると、そのことを強く感じます。東京にもものがあり、ハワイにもものがある。便利な反面、それらを管理する時間や労力も必要になります。そんななかで、私がハワイ暮らしで便利だと感じるのが寄付文化です。 私自身の経験では、ハワイでは使わなくなった衣類や家庭用品などを受け入れてくれる団体が身近にあり、比較的気軽に手放すことができます。車で持ち込める施設もあり、私自身もこれまで何度か利用してきました。まだ十分使えるものだから、これからも誰かが使ってくれると思うと、気持ちよく手放すことができます。 若いころは、たくさん持つことが豊かさだと思っていました。でも年齢を重ねるにつれ、「管理しなくてはいけないものが少ないこと」もまた豊かさなのだと思うようになりました。今回の骨折は決して嬉しい出来事ではありませんでしたが、自分の体のありがたさを再確認し、暮らしを見直すきっかけを与えてくれました。治ったらまずは思いきりキックをして泳ぎたい。 そしてテニスですが……。こちらは少し時間をおいて考えようと思います。少なくともいまは、水泳だけで充分です。それまでは焦らず、少しずつものも見直しながら、東京とハワイの二拠点生活をいまよりもう少し身軽に楽しんでいきたいと思っています。

文/リサ・ステッグマイヤー ※素敵なあの人2026年9月号「東京⇔ハワイ リサ・ステッグマイヤーの二拠点生活Diary vol.06」より
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

この記事を書いた人 リサ・ステッグマイヤーさん

1971年、米国生まれ。13歳で来日し、知的な美しさとバイリンガルとしての見識を活かしてタレント、司会など幅広く活躍する。趣味は水泳、トライアスロン、芸能界きっての器好きでもある。

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