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「勝手に見てごめんね」先輩が残していた一枚のメモ。優しかった先輩を、怖いと思った理由

  • 2026.9.5
「勝手に見てごめんね」先輩が残していた一枚のメモ。優しかった先輩を、怖いと思った理由

丁寧に教えてくださる、いい先輩だった

三年ほど前、同じ部署に十歳ほど年上の先輩がいました。

入ったばかりで何も分からない私に、先輩は仕事を一つずつ丁寧に教えてくれました。手順書の余白には、分かりやすいように手書きで補足まで入れてくれていました。

「分からないことがあったら、遠慮しないで聞いてね」

何を質問しても嫌な顔をされません。忙しい日は、私が頼む前に仕事の進み具合まで確認してくれました。

「ありがとうございます。本当に助かります」

私はすっかり先輩を頼るようになっていました。

ひと月ほど経ったころです。朝、会社へ行くと玄関で先輩を見かけることが増えました。

自動ドアを抜けると、傘立ての近くに立っていて、私を見つけると手を上げます。

「おはよう。今日も早いね」

それが何日か続いた朝、先輩は笑いながら言いました。

「今日も早く来たね。玄関で3日続けて待ってたよ」

そのときの私は、少し驚きながらもうれしく感じていました。気にかけてもらっているのだと思ったのです。

一度断っただけなのに、空気が変わった

やがて、昼休みも毎日のように誘われるようになりました。

「今日も一緒に食べよう。席、取ってあるから」

ある日だけ、先に別の約束があったので断りました。

「ごめんなさい。今日は先に約束していて…」

「あ、そうなんだ。分かった」

それだけでした。

ところが午後になると、先輩とはほとんど目が合いませんでした。書類を渡すときも私の手元だけを見ています。

怒っているようには見えないのに、いつもとは明らかに違いました。

私は「断り方が悪かったかな」と気になってしまい、翌日は自分から昼食に誘いました。

そのころから、小さな違和感が重なるようになりました。

ある日、普段は私しか使わない引き出しを開けると、小さなメモが入っていました。

「これ可愛いね。勝手に見てごめんね」

中に入れていた私物について書かれていました。

一瞬、手が止まりました。それでも私は、「ちゃんと謝っているし、悪気はなかったんだろう」と考えることにしました。

仕事の外まで見られている気がした

決定的に怖くなったのは、休日のことでした。

友達と入ったカフェで写真を一枚撮り、公開設定にしていたSNSへ投稿しました。店の名前も場所も書いていません。

三十分ほどすると、先輩から連絡が来ました。

「あのカフェ、美味しいよね。私も行こうかな」

私は画面を見たまま固まりました。

先輩とはSNSで直接つながっていませんでした。

公開している以上、投稿を見る方法がまったくないわけではありません。それでも、どうやって見つけたのだろうと思うと、急に怖くなりました。

それからしばらくして、私が先輩にだけ話した家族のことを、別の同僚から聞かされました。

「この前、家のことで大変だったんだって?」

なぜ知っているのか尋ねると、先輩から聞いたと言われました。

そこで初めて、上司に相談しました。

上司が先輩と話をしてくれたあと、朝の玄関で待たれることはなくなりました。必要以上に話しかけられることも減りました。

ただ、完全に気にならなくなったわけではありません。

ある同僚が、ぽつりと言いました。

「あの人、悪い人じゃないんだけどね。ちょっと距離が近いんだよね」

今、私は別の部署にいます。廊下で先輩と会えば、お互い普通に挨拶をします。

それでも会社の玄関を入るとき、今でも一度だけ傘立てのほうを見る癖が残っています。

親切にしてもらっていると思っていたころ、先輩がどこまで私のことを見ていたのか。それだけは、今も分かりません。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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