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独占入手!~脚本家が作成したメモ~第四弾・大迫美郷編/これさえ読めば“沼る”ドラマ「エラー」の登場人物が理解できる!!

  • 2026.5.6
©️ABCテレビ

畑芽育&志田未来がW主演を務めるドラマ『エラー』(ABCテレビ・テレビ朝日系列 毎週日曜よる10時15分放送)は、とある女性を死なせてしまったユメ(畑芽育)と、その死により生きる意欲を失ってしまった女性の一人娘・未央(志田未来)が、真実を知らないまま友情を育んでいく物語である。

【エラー】まだ間に合う!ここまでのあらすじ振り返り

本作の脚本を手がけたのは“シナリオ界の芥川賞“ともいわれる城戸賞で佳作を受賞した弥重早希子氏。そんな弥重氏自身も一筋縄ではいかない物語と語る『エラー』は、1話ごとに登場人物たちの過去や裏の顔、嘘などが明らかになり、放送のたびに、「先が読めない」「”取り返しのつかなさ”を描くのが上手すぎる」と大きな反響が…

©️ABCテレビ

そこで今回、視聴者の反響を受けて、ABCマガジンでは弥重氏がドラマ『エラー』の脚本を書くにあたり作成した各登場人物のバックストーリーを独占入手。ユメ、未央、佐久間(藤井流星)・美郷(榊原郁恵)というキャラクターがどのようにして生まれたのかが書かれており、ドラマ本編の謎を解くきっかけとなりそうだ。TVerでは、第1話から5月3日(日)に放送された第4話まで無料配信中。これで、ドラマの真相により近づけること間違いなし。第四弾は、榊原郁恵演じる大迫美郷編をお届けする。

©️ABCテレビ

ドラマ“エラー”バックストーリー 大迫美郷のこと】

通り過ぎていく人たちと話すことが美郷は好きだ。

『大迫美容室』のお客のほとんどは、顔見知りの近所の人たちだったが、それでも稀に一見さんが来ることもあり、そういうお客さんが美郷は、密かに嬉しかった。

話したくない人、話したい人、話さない人、話してしまう人。

色々なお客さんがいたけれど、そこで交わす数言の会話が、美郷はとても好きだった。

みんな生きてる。みんな人間。そんな気持ちになれるから。

平成一桁ガチババァという言葉を美郷が初めて聞いたのは、店を閉める半年ほど前にやってきた女性のお客さんからで、当時は誰もそんな言葉を使っていなかったから、もしかすると「平成一桁ガチババァ」という言葉はこの女性が世に生み出した言葉なのかもしれない。その女性は、「実家に帰省中なんですけど、ちょっと時間ができた通りがかりで」と予約もなしにふらっと入ってきた。ほとんどの客が顔見知りで、ましてやこんなに若い客は珍しく少し驚いたが、セミロングの髪を一つに束ねたその女性は、ちょうど未央と同い年くらいで、気まずそうに笑うところもなんとなく未央を彷彿とさせた。

「どうぞ」美郷は笑顔で女性を中へと招いた。

「こんな店だけど、全然、派手なカラーとかもできますよ」

「いやー私、平成一桁ガチババァなんで」

ついつい若い人の髪をいじりたくなった美郷に、女性はそう苦笑を返した。結婚して東京で暮らしているというその女性は、新宿のシネコンでパートをしているらしく、学生バイトたちといわゆるジェネレーションギャップを感じることが多いと言う。そんな時に、同世代のパート仲間に「うちら平成一桁ガチババァだね」と言ってみたところウケたらしい。シャンプーを終え、美郷がハサミを入れ出す頃には、店に入ってきた時の緊張は解けたのか、コロコロと笑いながらたくさん喋った。その笑顔はどこか幼く、美郷は、「ババァってのは私みたいな人のこと言うんだから」と笑う。

そこから女性は、「平成一桁ガチババァあるある」を話してくれたが、美郷はあまりピンと来なかった。未央も平成6年生まれ、「平成一桁ガチババァ」のはずだから、シール集めとか、匂いのついた消しゴムとか、なんとなくそんなものがあったなぁとは思うものの、あまり記憶がない。未央の父・聡が大腸癌で亡くなったのは、未央が小学校に上がる前のことで、あれからは本当に大変だった。自宅の一角を改装して店を出し、ようやく軌道に乗り出したところではあったが、役所勤めの聡の収入あってこそ家計は回っていた。だからと言って、店を閉めるわけにもいかず、美郷は、店の休日には毎週、働きに出た。毎朝、新聞配達もやった。色々な仕事をやった。そんな中で、そういえば、未央がシールを買いたいとか、たまごっちがどうのこうの、と言っていたっけ。幼い未央が「あげる」とさしだした、クマのシールのそのプニプニとした感触をちょっとだけ思い出す。

「小学校は第6だった?」

この辺が地元だと女性が言っていたので、美郷はそう聞いてみた。もしかして、未央と同級生なんてこともあるかもしれないと軽い気持ちだったが、女性は「まぁ」とお茶を濁した。

美郷も特に気にすることなく、世間話に移ったが、前髪を切り終え、軽くセットをしていた時に、「私、遺書書いてるんですよ」と女性は突然言い出した。「野菜高いっすよね」「たまごっち、娘さん持ってました?」と言っていたのと同じトーンでそんなことを言い始めたので美郷はびっくりしたが、そんな美郷を察したように「お守りなんです」と女性は微笑む。

この辺が実家というのが嘘だったことを別に取り繕おうともせず、女性は、夫の実家がこちらにあり、夫の両親の介護のために毎週こちらに一人で来ていることを喋り始めた。小学校に上がったばかりの子供が1人いるが、それでも長男の嫁として夫の両親は自分が見なければいけないということになっていて、新宿のシネコンバイトのシフトの合間を縫ってこちらに来ていると言う。はっきり言って疲れちゃってる。「ここで店やってるお姉さんには悪いんですけど……」と美郷を気遣いながらも、こんな退屈な街で、夫のお母さんと2人きりになると泣きたくなる。そんな時にふと思い立ち「遺書」を書いてみた。すると不思議なことに、もうちょっと踏ん張ろうという気になった。理屈は説明できないけど、限界を迎えた時に「遺書」を見ると「死にたいって思っても生きてていいんだ、って思えるから」

「子供もいるのに、最低かな」女性がそう呟くのを美郷は遮った。

「そんなことない」当たり障りのない言葉だったけど、美郷は本当にそう思っていた。

前下がりのボブになった女性は、そんな美郷を見て微笑んだ。

その夜、美郷は、ふと、またあの感覚に囚われた。寂しいとも違う。虚しいとも違う。だけど、どうにも落ち着かない。理由はあるんだろうか。老いることが怖いのか。そんな気もするし、そうじゃない気もする。世界がおかしな方向に動いているからだろうか。悲しいニュースや理不尽な話を聞く度に美郷は落ち込む。精神的に弱いのか。そうかもしれない。でも、もっと些細なことのような気もする。そんな些細なことで落ち込んでいいんだろうか。夫の両親の介護に疲れ果てているあの女性に比べたら……と思った時、「そんなことない」自分で口にしたその言葉を、あの女性なら美郷にも言ってくれるような気がした。

美郷は紙とペンを取り出し、「未央へ」と書いた。残酷なようにも思えたが、とにかく思いつくままに筆を走らせる。未央は時々、思い出したように「ご飯でも食べよう」と誘ってくれる。実際に何度かご飯を食べに出かけたこともあるが、いつも美郷はもどかしくなる。母親然としたことしか言えなかったり、本当に思っていることを言えなかったり。それは恐らく未央の方も同じだろうと感じるから、未央とご飯を食べることはめちゃくちゃ嬉しいと同時に少しだけ億劫だ。だけど、手紙になら、手紙と言っても遺書だけど……躊躇う度にお酒を少し飲む。そして、素直に思っていることを書き進める。書き終えてみると少しだけスッキリしていた。やっぱり捨ててしまおうか、と思ったが、「お守り」にしようと思った。そして美郷は、その手紙をそっと手帳にしまった。

©️ABCテレビ

(※)榊原郁恵の「榊」は「木へんに神」が正式表記

ドラマ『エラー』は、ABCテレビ・テレビ朝日系列で毎週日曜夜10時15分放送。放送終了後、TVerで見逃し配信。

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