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次世代スターがご案内! 歌舞伎のとびら【vol.9 中村歌昇さん】

  • 2026.9.1
©松竹



明治から昭和にかけての名優、初代中村吉右衛門の功績を顕彰し、2006年に始まった「秀山祭」。9月の歌舞伎座で恒例となったこの公演への思いを、同じ播磨屋である中村歌昇さんに語っていただきました。

果てなき頂を追い求めていく

秀山祭が始まって20年。二代目吉右衛門を師と仰ぐ歌昇さんにとって、大切な公演です。

「初代を顕彰するべく始まりましたが、今は二代目吉右衛門のおじさまの功績も重なり、偉大なおふたりの芸を後世へつないでいく公演になっています。その重みは言葉では表せません。

おじさまは僕にとって“頂のない山”のような存在なんです。必死に登り続けても、頂上は見えない。それでも、おじさまの教えを受け継いでいくことが播磨屋の人間としての役目だと思いますので、懸命に精進していきたいです」

昼の部では、躍動感溢れる『三社祭』を弟の種之助さんと勤めます。

「アクロバティックな振りもありつつ、善玉と悪玉が漁師に乗り移ったりするところは歌舞伎ならでは。理屈抜きに楽しい作品です。兄弟で踊る強みを生かし、息の合った舞台をお見せしたいです。体力のいる舞踊なので、37歳の僕の奮闘ぶりも見守っていただけたら(笑)」

夜の部では、『一條大蔵譚』で吉岡鬼次郎を演じます。

『一條大蔵譚』の鬼次郎は、種之助さんとの勉強会「双蝶会」も含めて今回で3度目。「一本筋の通った男で、演じるたびに魅力を感じます」 ©松竹


「2012年の研修発表会や’15年の新春浅草歌舞伎で大蔵卿を勤めた際は、吉右衛門のおじさまに教えていただいた大事な作品です。大蔵卿は源氏再興をひそかに願うがゆえに“作り阿呆”を通している。その人がたった一日、自分の本音を吐露する場面。その思いを引き出し、受け止めるのが忠義一途な鬼次郎です。大蔵卿の悲劇性が引き立つように勤めたいと思います」

昼の『ひらかな盛衰記』には長男の種太郎さんと次男の秀乃介さんが出演。「家でも義太夫を語りながら芝居ごっこをしているほど」芝居好きな兄弟。舞台出演の際は毎日反省会をするそう。

「必ず翌日の目標を立てるんです。目標を達成していく体験が、人としての成長にもつながるといいなと思っています」

ふたりの偉大な名優その芸と教えを後世へ


秀山祭での印象深い役として挙がったのは、『車引』の梅王丸。

「吉右衛門のおじさまの梅王丸にずっと憧れていました。初めて勤めたのは’14年のこんぴら歌舞伎で、おじさまが丁寧に教えてくださいました。その梅王丸を秀山祭で演じさせていただける――嬉しかったですね。おじさまの『どんなお役も命がけで勤めなさい』という言葉は常に胸にあります」

2023年の秀山祭で勤めた『車引』の梅王丸。「化粧の仕方から元禄見得など決まりの形まで、二代目吉右衛門のおじさまにこまかく教えていただいた大切なお役です」 Ⓒ松竹


今年で歌昇を襲名して15年。

「もう15年とは! 意識していませんでした」と笑顔を見せつつ、「目指すべき役者像の輪郭が見えてきた」と凛としたまなざし。

「僕の役者としての芯にあるのは、吉右衛門のおじさまの芸に対する姿勢や教えです。舞台に出るときはいつも、おじさまが客席に座っていると思って勤めています。

果てなき頂を追い求めていくことが自分の人生。おじさまの教えを体現し、それをお客さまに伝えられる役者になることが、一番の恩返しだと思っています」

案内人こぼれ話

KASHO NAKAMURA

手持ち花火に夏を感じて――

毎年、種太郎さんの同級生とそのご家族で集まり、花火をするのが夏の恒例行事。「写真はそのときの種太郎です。打ち上げ花火とは違った美しさや線香花火のはかなさ。親子で夏を感じられる大事なひとときです」

公演情報

Ⓒ松竹

昼の部は華やかな『春調娘七種』と『三社祭』に続き、源平合戦を題材にした時代物『ひらかな盛衰記』。夜の部はご祝儀舞踊『雛鶴三番叟』、親子の情が胸打つ『沼津』、人形との掛合いも楽しい『京人形』、そして『一條大蔵譚』と昼夜で名作が並びます。

【歌舞伎座】秀山祭九月大歌舞伎
2026年9月2日~26日 ※9・18日は休演
昼の部 11時開演、 夜の部 16時開演
昼の部/『春調娘七種』『三社祭』『ひらかな盛衰記』
夜の部/『雛鶴三番叟』『沼津』『京人形』『一條大蔵譚』
出演:片岡仁左衛門、中村魁春、中村歌六、中村萬壽、中村雀右衛門、
中村又五郎、中村錦之助、片岡孝太郎、松本幸四郎、尾上松緑、
八代目尾上菊五郎、中村時蔵、中村歌昇、中村種之助、中村隼人、
市川染五郎、尾上辰之助、市川團子 ほか
●チケットホン松竹 tel. 0570-000-489

中村歌昇さん

PROFILE 1989年5月6日生まれ。中村又五郎の長男。’94年6月歌舞伎座『道行旅路の嫁入』の旅の若者で四代目中村種太郎を名乗り初舞台。2011年9月新橋演舞場『舌出三番叟』の千歳、『車引』の杉王丸ほかで四代目中村歌昇を襲名。播磨屋の芸の継承に、真摯に取り組む花形俳優。

Realization : NATSUKO OHKI
25ans(ヴァンサンカン)10月号掲載(2026年8月28日発売)

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