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次世代スターがご案内! 歌舞伎へのとびら【vol.5 尾上辰之助さん】

  • 2026.5.13
©松竹

歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」で、尾上左近改め三代目尾上辰之助襲名披露が行われています。「ヒーローのような存在」だという祖父、そして父が名乗った名跡を継ぐ、今の心境は――。

覚悟をもって受け継ぐ――襲名は、“襲命”

「辰之助を襲名してもう一回誕生日を迎えることになる」と小さい頃から思ってきたという、憧れの名跡。「襲名が決まったときは純粋に嬉しかったのですが、その日が迫るほどにだんだんと怖くなる気持ちも出てきています。ただ、多くの先輩方のもとでいろいろな経験をさせていただき、左近としてやり残したことはないと言えます」

40歳で早世した初代辰之助さんに会えなかったことが、辛いけれども強みでもあると話します。「祖父が若い頃のインタビューで答えているんです。〝先輩方が崇拝する偉大な名優を直接知らないからこそ、恐れずやっていけるのが我々世代の強みだ〟と。僕も恐れず、のびのびと自分なりの辰之助像を作っていけたら。でもやはり祖父に少しでも近づきたいので、祖父の生きた証を集めることが趣味になっています」

辰之助さんの宝物のひとつが、お祖父さまの描いた絵。「自分の部屋にその絵と祖父が最後に勤めた『毛抜』のポスターを飾っています。節目にはポスターに向かって話しかけたり(笑)。襲名も報告しました。今回は、祖父の話をいろいろ教えてくださり、可愛がってくださった先輩方やうちの古いお弟子さんなど、すでに亡くなってしまった方々への思いをささげる襲名でもあると思っています。(松本)白鸚のおじさまが“襲名の『名』の字は『命』なんだ。襲名とは命を継ぐもの”と話されていますが、祖父と父が命をかけて守ってきた大切な名前を、覚悟をもって受け継ぎたいです」

憧れに向かって毎日が一世一代の気持ちで

襲名披露狂言の『寿曽我対面』の五郎は、代々の辰之助襲名で演じられてきた大切な役。「典型的な荒事でありながら、二枚目の要素もあると父に教わりました。荒事らしい勢いや大きさと同時に、それをどれだけ自制して演劇として成立させられるか。難しいですが、十郎に出てくださる八代目菊五郎のお兄さんの胸を借りて、精一杯勤めます」

襲名披露狂言の『寿曽我対面』の曽我五郎。「シャープな美しさのある荒事。祖父の五郎はどこか破滅的で、なおかつ繊細さも感じます。少しでもそこに近づきたいです」 ©松竹

もう一役が『菊畑』の虎蔵実は牛若丸。松緑家で勤めるのは新辰之助さんが初めて。「七代目菊五郎のお兄さんの虎蔵に憧れていました。最初の若衆の可愛らしさや色気、後半の総大将としての重みや強さ、その切り替わりが魅力的なお役です。強い立役のイメージのある辰之助という名に、自分の色を三代目として加えられたらと思っています」。その色のひとつが女方。「七代目のお兄さんのような、兼ねる役者が目標です。父からは、兼ねるとは立役と女形両方を100%でやれる役者のこと。目指すなら人生2回分頑張らないといけない、と言われました。憧れに向かって努力していきます」

「父に襲名披露で何がしたいか聞かれたときに、真っ先に浮かんだ」という、『菊畑』の虎蔵実は牛若丸。「七代目菊五郎のお兄さんに教えていただきます」 ©松竹

新辰之助の門出となる5月。「曽祖父の二代目松緑の〝毎日が一世一代〟という言葉を大切に、日々これが最後だと思って舞台を勤めます。お客さまに感動を届けられる、三代目辰之助になっていきたいです」

案内人こぼれ話

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インドア派の辰之助さんが旅行好きになったきっかけ
「止まれない性格なんです」と話すとおり、多忙な日々を駆け抜ける壱太郎さんが、美しい景色を満喫した貴重な休日。「昨年8月、弾丸で旅に出て、長崎県五島列島の福江島へ。そこの高台から海を望んだときの一枚です」

公演情報

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九世團十郎と五世菊五郎を顕彰する「團菊祭」。辰之助襲名披露狂言の『寿曽我対面』と『菊畑』では劇中口上が行われます。立廻りも魅力的な『南総里見八犬伝』、変化舞踊の名作『六歌仙容彩』、様式美が詰まった『助六』と、歌舞伎を贅沢に味わえます。

【歌舞伎座】團菊祭五月大歌舞伎
2026年5月3~27日 ※11・19日は休演
昼の部 11時開演、夜の部 16時半開演
昼の部/『南総里見八犬伝』『六歌仙容彩』『寿曽我対面』
夜の部/『鬼一法眼三略巻 菊畑』『助六由縁江戸桜』
出演:七代目尾上菊五郎、中村梅玉、尾上松緑、八代目尾上菊五郎、市川團十郎、坂東巳之助、尾上右近、左近改め三代目尾上辰之助 ほか
●チケットホン松竹 tel.0570-000-489

尾上辰之助さん
PROFILE 2006年1月20日生まれ。尾上松緑の長男。祖父は初代尾上辰之助(三世松緑追贈)。’09年10月歌舞伎座『音羽嶽だんまり』稚児音若で藤間大河の名で初お目見得。’14年6月歌舞伎座『倭仮名在原系図 蘭平物狂』繁蔵で三代目尾上左近を名乗り初舞台。5月に三代目辰之助を襲名。

Interview&Text:NATSUKO OHKI
25ans(ヴァンサンカン)6月号掲載(2026年4月28日発売)

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