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【映画】悪の魅力が際立つ!シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼』(松也版)

  • 2026.1.31

こんにちは、リビングふくおか・北九州Web地域特派員のマイメッコです。 歌舞伎の舞台を、映画館のスクリーンで体感できる「シネマ歌舞伎」。その中でも異彩を放つ話題作、シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼』(松也版)が、福岡・kino cinéma天神で公開されています。

出典:リビングふくおか・北九州Web

野心と嘘を抱え、王座へと突き進む男・ライの姿を描いた本作は、松本幸四郎と尾上松也のWキャスト上演でも注目を集めた一作。今回は「松也版」公開にあわせ、主演の尾上松也さんが登壇し、作品への思いを語りました。 私は2025年2月、幸四郎版・松也版の両方を実際に観劇。この記事では、舞台を知る視点と取材で聞いた言葉を交えながらたっぷりと魅力を紹介します。

ほとばしる悪の魅力!シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 朧の森に棲む鬼』(松也版)

出典:リビングふくおか・北九州Web

©︎松竹株式会社

主人公は、卑しい身分から成り上がろうとする男・ライ。彼は朧の森で不思議な存在と出会ったことをきっかけに、権力への欲望を加速させ、次第に周囲を欺きながら運命を切り開いていきます。嘘と欲望に翻弄される人間の姿が、色濃く描かれた作品です。

また本作は「歌舞伎NEXT」シリーズの名の通り、伝統的な歌舞伎の枠にとらわれず、現代的な感覚やエンターテインメント性を強く打ち出しているのも特徴。シェイクスピア作品を思わせる重厚な構造を持ちながらも、荒々しい立廻り、スピード感のある展開、そして歌舞伎ならではの様式美が重なり合い、初めて歌舞伎に触れる人でも物語に引き込まれる構成になっています。

尾上松也が語る作品への想い

出典:リビングふくおか・北九州Web

公開初日の2026年1月23日、上映後の舞台挨拶に登壇した尾上松也さんは、シネマ歌舞伎として公開されることへの思いを問われ、次のように語りました。 「魂削って走り切った作品です。お客さまの反応も非常に多かったですし、(終演後の)『朧ロス』の声もたくさん聞きました。でも、演じている僕たち自身も『朧ロス』になりかけていて。それがまた映画になって、違った視点で観ていただけるというのは、すごく嬉しいですね」

その言葉からは、舞台を終えた達成感と同時に、この作品がシネマ歌舞伎として“もう一度蘇る”ことへの喜びがにじんでいました。

オファーを受けた時の想い

『朧の森に棲む鬼』は、2007年に初演された舞台作品です。本作への出演オファーについて、松也さんは「嬉しかったですね」と率直に振り返ります。作品そのものに強い憧れがあり、初演で主人公・ライを演じていた市川染五郎さん(現・松本幸四郎)の舞台を、当時から敬意をもって観ていたといいます。

「『歌舞伎NEXT』第二弾で、『朧の森に棲む鬼』をやると聞いたとき、もし出演できるならぜひキンタ役でと思っていたんです」 ところが実際に告げられたのは、予想外のWキャストでのライ役でした。 「まさかのWキャストでのライ。驚きましたね」

出典:リビングふくおか・北九州Web
稽古に入って感じたことは

「緊張もあったんですけど、楽しかったですね。初演の残像が残っているので、それに引っ張られるのかなと思っていたのですが、今回は“新しい朧を作る”という現場の空気感があり、やりやすかったです」と振り返る松也さん。 その方向性があったからこそ、幸四郎版・松也版と、全然色が違うものになったといいます。

幸四郎版と松也版の違いについて

「シネマ歌舞伎で言うと、おそらく僕の方がアップが多いような気がします(笑)」 この一言に、会場からは笑いも起こります。

ライという人物像については、事前に話し合ったわけではないと前置きしたうえで、松也さんは自身の受け止め方を話しました。 「僕が観た幸四郎さんのライは、簡単に言うと“勝利の物語”。鬼になるべくして生まれ、鬼の王になっていく男の物語です。一方で僕のライは、人間が悪に取り込まれ、鬼を超越した悪になったと思い込むけれど、実は思うままに操られている“敗北の物語”というイメージでした」 同じ役を演じながらも、物語の重心は大きく異なる。Wキャストだからこそ生まれた解釈の幅が、作品に奥行きを与えていることが伝わってきます。

シネマ歌舞伎注目シーン

出典:リビングふくおか・北九州Web

松也さんは、舞台では味わえない映像表現の魅力を、次のように語ります。 「舞台では見ることができない距離や角度、表現が随所にあります。表情がかなり細かく見られるので、舞台とは違った発見があるかもしれません。作品自体が、何度も見ることでより理解が深まっていく作品だと思います」

スクリーンでより鮮明になる感情
出典:リビングふくおか・北九州Web

©︎松竹株式会社

私自身、舞台で観たときの息をのむほどの熱量と緊張感に包まれた記憶が、今も強く残っています。 シネマ歌舞伎では、それに加え、ライの表情や視線の揺れがより鮮明に伝わってきました。群像の迫力、殺陣のスピード感といった舞台の魅力はそのままに、一人ひとりの表情や感情の機微が浮かび上がることで、物語がよりくっきりと見えてきます。 壮大な物語の中で、抗えない魅力をまとった「悪」に、美しささえも感じる瞬間がありました。

尾上松也さんからメッセージ

舞台挨拶の最後に、松也さんはあらためてシネマ歌舞伎への思いを語りました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

「まだ観ていない方にもおすすめですし、歌舞伎への足掛かりとしてもシネマ歌舞伎は最高のコンテンツだと思います。(既に観た方も)舞台とは違った視点で、新しい発見があると思います。作品の良さを映像にしているので、ぜひ、シネマ歌舞伎で観ていただけたら嬉しいです」

また、1月30日は松也さんの誕生日。サプライズで花束が贈られる場面もあり、会場は温かな空気に包まれました。

出典:リビングふくおか・北九州Web

魂を削るほどの思いで作り上げられた舞台が、今、シネマ歌舞伎としてスクリーンに蘇ってきます。 福岡・天神の kino cinéma天神 で、ライの内に潜む「悪」の魅力と、その行き着く先を体感してみてはいかがでしょうか。

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