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次世代スターがご案内! 歌舞伎へのとびら【vol.3 中村隼人さん】

  • 2026.3.24
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眉目秀麗な姿から放たれる美しいオーラで“歌舞伎界のプリンス”と称される中村隼人さん。歌舞伎に登場する多彩ないい男を演じる、その秘訣や心得について教えていただきました。

歌舞伎のなかの“いい男”

無駄をそぎ落としシャープに、きれいに

江戸の粋な男伊達、上方の若旦那、陰のある青年…。歌舞伎には実に多彩ないい男が登場します。そんな役柄を魅力的に演じている隼人さんが思う、歌舞伎のいい男とは?

「その代名詞といえば、『与話情浮名横櫛』の切られ与三郎や『三人吉三巴白浪』のお坊吉三ですよね。ただ、いわゆる歌舞伎の二枚目は少し情けない男として描かれることも多いんです。僕としては、男気ある人物にいい男の魅力を感じます」

なかでも強く憧れるのは、『仮名手本忠臣蔵』の早野勘平。「忠義一途な侍でありながら、恋人おかるとの逢瀬にふけり、主君の大事に居合わせられなかった。その色気も必要なお役。いつか演じてみたいです」

切られ与三郎は一昨年の新春浅草歌舞伎で勤めています。「姿勢、歩き方、体の角度、とにかくきれいに見せることが大切と(片岡)仁左衛門のおじさまに教わりました。動きをシャープに、無駄をそぎ落とし美しく見せていく」。そのため体には相当な負荷がかかるそう。「『関の扉』の宗貞を勤めた際には(坂東)玉三郎兄さんに『いい男に見せるには、何もしていないときほど辛い体勢をするんだよ』と教えていただきました」

一方で、「二枚目よりも陰のある悪役」に惹かれるという隼人さん。「歌舞伎には“色悪”といわれる役があります。『四谷怪談』の伊右衛門に代表される、色気のある悪人。そういう自分とは違う役柄に挑戦して、お客さまの期待をいい意味で裏切っていけたらと思っています」

『与話情浮名横櫛』の切られ与三郎。「背中に棒が入っているように、頭の先まですっと伸ばすことを教わりました」 ©松竹

歌舞伎の技とその先にある色気

2月の歌舞伎座でも辰巳芸者ふたりにほれられるいい男、丹次郎を演じた隼人さん。3月は『三人吉三』のお坊吉三を勤めます。

「盗賊に堕ちた男ですが、元は育ちのいい武士の子。退廃的な空気感のなかに、その品を保つことが大事です。アウトローでありながら、どこか甘ったれの部分もあり、お嬢吉三との色模様も感じさせます」。これまで序幕「大川端」のお坊吉三は三度勤めていますが、通し上演は初めて。「同じ吉三という名の三人が出会ったことで、お互いが救われ、命を燃やしていく。そのエネルギーをもって演じたいです」

『三人吉三巴白浪』のお坊吉三。「河竹黙阿弥の美しい七五調の台詞廻しはメロディ性があって心地がいいので、耳からも楽しんでいただけたら嬉しいです」 ©松竹


今、32歳の隼人さん。目指していきたい大人の男性像は?

「渋さと色気は追い求めていきたいですね…舞台の上で(笑)。でも色気って難しい。以前、山口馬木也さんに『色気って何ですか?』と尋ねたら、『秘密の数かな』と(笑)。となると、僕の性格上、無理なんです。すべて話したくなってしまうので」。その素直さと探究心が隼人さんの色気につながっているのかもしれません。「歌舞伎は、化粧や衣裳、鬘のシケまで含めて、どうすればかっこよく映えるのか考え抜かれてきた世界です。蓄積されてきた技術に助けられながら、その先にある色気を追求していきたいです」

案内人こぼれ話

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ニューヨーク公演の合間にタイムズスクエアやNBAへ
昨年11月、カーネギーホールで舞踊『獅子』を披露。「貴重な経験となりました」。NY観光も満喫。「NBAも観戦したのですが、客席の熱狂がすごかったです。いろいろな刺激を受けつつ、改めて日本のよさも感じました」

公演情報

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昼夜ともに河竹黙阿弥の名作が通し上演されます。『加賀見山再岩藤』がなぜ「骨寄せの岩藤」と言われるのか、その理由はぜひ舞台で。『三人吉三』は台詞も絵面も美しい、白浪(盗賊)物の代表作。『壽春鳳凰祭』は、歌舞伎の発展を寿ぐ舞踊です。

【歌舞伎座】三月大歌舞伎
日時:2026年3月5~26日
※11、19日は休演
昼の部 11時開演、夜の部 16時半開演
昼の部/通し狂言『加賀見山再岩藤 骨寄せの岩藤』
夜の部/『壽春鳳凰祭』、通し狂言『三人吉三巴白浪』
出演:七代目尾上菊五郎、中村梅玉、中村歌六、中村萬壽、
尾上松緑、中村時蔵、坂東巳之助、中村隼人 ほか
●チケットホン松竹 tel.0570-000-489



中村隼人さん

PROFILE 1993年11月30日生まれ。中村錦之助の長男。2002年2月歌舞伎座『菅原伝授手習鑑 寺子屋』の小太郎で、初代中村隼人を名乗り初舞台。端正な容姿と実力で、古典から新作まで次々と大役を担い、映像でも活躍している。4、5月は「大阪松竹座さよなら公演」に出演予定。


Interview & Text : NATSUKO OHKI
25ans(ヴァンサンカン)4月号掲載(2026年2月27日発売)

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