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次世代スターがご案内! 歌舞伎のとびら【vol.7 中村福之助さん】

  • 2026.7.1
©松竹

力強い見得や隈取、荒々しく豪快な演技――江戸時代、初代市川團十郎によって確立された“荒事”。7月の歌舞伎座でその大役に挑む中村福之助さんに、歌舞伎ならではの魅力を語っていただきました。

理屈抜きに勢いと迫力で見せる

今年1月、荒事の代表的な役である『鳴神』の鳴神上人に抜てきされ、見事に期待に応えた福之助さん。「幼い頃から見てきた父(芝翫)の鳴神上人は、ヒーローのような存在でした。荒事らしさは後半からなので、そこにつなげるためにどう伏線を打つか。緻密に組み立てながら、最後は理屈抜きに勢いと迫力で見せる。それが荒事の魅力だと感じています」

自主公演「神谷町小歌舞伎」を立ち上げるなど、近年めざましく活躍している成駒屋三兄弟。それぞれの個性を「兄の橋之助は父の芸をそのまま引き継ぎ、弟の歌之助は父の柔らかい和事や二枚目を、僕は父が演じてきた中でも強い役を担っていくタイプ」と分析するように、福之助さんに荒事はぴったり。『寿曽我対面』の五郎も二度勤めています。「五郎は荒事の中でも、バチバチと音が鳴っているような炎のイメージがあります。性根が子どもなので声のトーンも高い。僕は声が低いので、そこが大きな壁です」

1月に勤めた『鳴神』。 ©松竹

『鳴神』ではその低い声が武器に。「若いときは高い声を求められる役が多いですが、(坂東)玉三郎のおじさまが『低い声を出せる若手はいないから、その空いている枠に飛び込むべき』と言ってくださったんです。その教えが今につながっています」

そして、7月は『鎌髭』の悪七兵衛景清を勤めます。「こういう役は主役としての空間掌握力が大事。それこそ成田屋のお兄さん(團十郎)の圧倒的なオーラは、歌舞伎役者ならではの魅力だと思います。経験を重ねて、少しでもその境地に近づいていきたいです」

7月の『鎌髭』。両作品とも鷹之資さんとのダブルキャスト。「本番前はふたりでいろいろ相談しますが、初日以降は特に意識しません。母からは常々『顔で笑って、心で泣いて、はったりで生きていきなさい』と言われているので、幕が開いたら、はったりの精神で、自信をもって舞台に立つようにしています」 ©松竹

歌舞伎っ子ではなかったその感覚も大切に

今年は福之助を襲名して10年。その間には多くの葛藤も。「僕は兄弟のように根っからの歌舞伎っ子ではないので、周りの熱量との違いに辞めようと決心したことも。そんなときスーパー歌舞伎Ⅱ『新版 オグリ』のお話をいただき、新しい環境に触れて気持ちが変わり今に至ります。やるからには書き出し(配役の筆頭)に載る役者にならないと、と。なので、『鳴神』や『鎌髭』のチラシを見たときはすごく嬉しかったです」

歌舞伎っ子ではなかったことも、福之助さんの強みに。「歌舞伎って中には眠くなってしまう演目もありますよね。父は理解できないと言いつつ、『その感覚は大切かもしれない』と。お客さまが絶対に眠くならないように勤めたい、という意識は常にもっています」

この先の目標は?「襲名する前年、将来の自分への手紙を書いたんです。10年後宛の手紙は『今、何の仕事してる?』という書き出しでした(笑)。ただ、28歳までに歌舞伎座で演し物をするという目標があったので、7月に叶うことは嬉しいです。この先は、自分たちの世代がお客さまを歌舞伎の世界へ誘っていかなければと思っています。そして、もう一つ。神谷町小歌舞伎を10年後も続けていたいです」

案内人こぼれ話

Hearst Owned

昨年9月は札幌競馬場へ北の大地で深まる競馬愛

競馬好きで連載コラムをもつほど。「動物が大好きで、休演日はよく動物園にいました。競馬は2018年に訪れて以来、夢中になったんです。迫力や臨場感はもちろん、一頭を支える人々のドラマにも魅了されています」

公演情報

©松竹

『鎌髭』のほかに、楽しく軽妙な舞踊劇『末広がり』、光秀の葛藤を描く『時今也桔梗旗揚』、緊迫した台詞の応酬が胸打つ『御浜御殿綱豊卿』、鳶と力士が火花を散らす『め組の喧嘩』、獅子物の大曲『春興鏡獅子』と、人気作が豪華配役で上演されます。

【歌舞伎座】七月大歌舞伎
2026年7月2~26日 ※9・17日は休演
昼の部 11時開演、夜の部 16時15分開演
昼の部/『末広がり』『時今也桔梗旗揚』『御浜御殿綱豊卿』
夜の部/『鎌髭』『神明恵和合取組 め組の喧嘩』『春興鏡獅子』
出演:片岡仁左衛門、中村梅玉、中村歌六、中村扇雀、中村芝翫、片岡孝太郎、松本幸四郎、市川團十郎、尾上松也、中村隼人、中村福之助、中村鷹之資、市川染五郎 ほか
●チケットホン松竹 tel.0570-000-489

中村福之助さん
PROFILE 1997年11月13日生まれ。中村芝翫の次男。祖父は七世中村芝翫。2000年9月歌舞伎座『菊晴勢若駒』で、中村宗生を名乗り初舞台。’16年10、11月歌舞伎座『熊谷陣屋』の伊勢三郎、『祝勢揃壽連獅子』の狂言師後に仔獅子の精、『芝翫奴』の奴駒平などで三代目中村福之助を襲名。

Interview&Text:NATSUKO OHKI
25ans(ヴァンサンカン)8月号掲載(2026年6月26日発売)

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