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次世代スターがご案内! 歌舞伎のとびら【vol.6 中村時蔵さん】

  • 2026.6.5
©松竹

情熱的な恋に生きる深窓の令嬢、恋に恋する純粋な乙女――。歌舞伎にはさまざまなお姫さまが登場します。古風な面差しと華やかな佇まいで、古典のヒロインを鮮やかに描く中村時蔵さんにその秘訣を伺いました。

姫に必要なのは初々しさ、華やかさ、そして品格

歌舞伎の女方には、忠義に厚い奥方、色香漂う傾城、可憐な娘など幅広い役柄がありますが、なかでも高貴な身分のお姫さまを演じるうえで大切な3カ条を挙げていただくと――。

「まずは、お箸より重いものを持ったことがないというような初々しさ、世間知らずなところ。次に華やかさ。お姫さまは衣裳も豪華ですが、それに見合うような内面から出る華やかさが大事です。そして何より欠かせないのが品格だと思います」

その最高峰とされる大役が「三姫」といわれる、『本朝廿四孝』の八重垣姫、『鎌倉三代記』の時姫、『金閣寺』の雪姫。時蔵さんは4月の歌舞伎座で八重垣姫を初役で勤め、三姫すべてを経験されました。「八重垣姫は歌舞伎の中でも一番格の高いお姫さま。許婚の絵姿を見て恋に恋する女性です。だからこそ恋に突っ走ってしまうのですが、下品にならないよう、その情熱と品格を上手く混じり合わせないといけない。難しい役でした」

4月に勤めた八重垣姫。赤い衣裳なので“赤姫”と言われる。「時姫もそうですが、赤姫の赤は華やかさと当時に、格の重さも求められる色」 ©松竹

「八重垣姫の次に格が必要とされる」というのが、時姫です。「時姫は敵対する父と恋人の間で板挟みになりながら、最後は恋人を選ぶ。八重垣姫より少し精神年齢が高いイメージですが、大人の女性に見えてはいけないと思います。舞台上での道具の扱いが手慣れていると姫らしくならないので、そのあんばいにも苦心します」

雪姫の背景を台詞ではなく、風情で

そして、この6月に勤めるのが雪姫。三人の中で唯一の既婚者です。「雪姫は、幕開きが一番肝心だと感じています。以前は腰元で今はお姫さまであること。そして捕らわれている夫と慶寿院の間で揺れ動いていること、それらを台詞ではなく、風情で伝えられたらと思っています」

雪姫の衣裳は鴇色(淡いピンク)。「雪姫は、もともと足利将軍の母慶寿院に仕えていた腰元です。他のふたりとは違い、夫もいる。色気のある格が大事になります」 ©松竹

手を縛られた雪姫が、舞い散る桜の花びらを集めて爪先で鼠を描くのも美しい場面です。「雪姫の情熱が奇跡を起こすので、自分自身も強い気持ちをもって演じています。『金閣寺』は歌舞伎らしい要素がつまったファンタジーに溢れた作品。歌舞伎を初めてご覧になる方にも楽しんでいただけると思います」

もう一演目『華舞於河賑 俄獅子』は題名どおり、時蔵さんの親戚「小川家」が勢揃いします。実は『金閣寺』の共演者も小川家の面々。「めったにないことで、みんなで力を合わせて勤めます。『俄獅子』は子どもたちも全員揃いますので、その頑張りを見ていただけたら(笑)」

時蔵さんが初めてお姫さま役を勤めたのは2006年、18歳のときでした。「20年もたっているとは! お姫さまに限ったことではありませんが、若い頃はとにかく父に『品よく、行儀よく』と言われていました。その教えを大切に、これからも精進していきたいです」

案内人こぼれ話

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ブロマイドに宿る役の真髄と先人の思い
楽屋の鏡台には勤める役に合わせ曽祖父や祖父(三代目、四代目時蔵)の写真を飾る。「これは曽祖父のお嬢吉三ですが、役への思いも含めすべてが凝縮されています。先輩方にも“穴が開くほど見なさい”と言われるんです」

公演情報

©松竹

『金閣寺』『俄獅子』に加え、華やかな舞踊『戻駕色相肩』、昭和の人気ドラマを映画監督の井上昌典さんと中村獅童さんの演出で舞台化する『子連れ狼』、凄惨な殺しの場も見どころとなる鶴屋南北の傑作『盟三五大切』と、見応えのある演目が並びます。

【歌舞伎座】六月大歌舞伎
2026年6月3~25日 ※10・18日は休演
昼の部 11時開演、夜の部 16時半開演
昼の部/『祗園祭礼信仰記 金閣寺』『戻駕色相肩』『子連れ狼』
夜の部/『華舞於河賑 俄獅子』『盟三五大切』
出演:七代目尾上菊五郎、中村梅玉、中村歌六、中村萬壽、中村又五郎、中村錦之助、尾上松緑、中村獅童、中村勘九郎、中村七之助、尾上松也、中村時蔵 ほか
●チケットホン松竹 tel.0570-000-489

中村時蔵さん
PROFILE 1987年11月22日生まれ。中村萬壽の長男。91年6月歌舞伎座『人情裏長屋』の鶴之助で初お目見得。94年6月歌舞伎座『極付幡随長兵衛』の倅長松ほかで四代目中村梅枝を襲名し初舞台。2024年6月歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』のお三輪ほかで、五代目中村時蔵を襲名。

Interview&Text:NATSUKO OHKI
25ans(ヴァンサンカン)7月号掲載(2026年5月28日発売)

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