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こりゃムリなくダイエットが成功するわ…東大教授「毎日の食事から控えめにしたいたった2つの栄養素」

  • 2026.8.23

栄養学の視点から見た、科学的に正しいダイエット方法とは何か。『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)を出した東京大学大学院教授の喜田聡さんは「健康的にダイエットを成功させるためには、脂肪と糖分を取りすぎないことがポイントだ」という――。

白いプレートにDIETの文字
※写真はイメージです
誰もが経験する「心理的な食行動」とは

食は生命の維持に必要不可欠ですが、もう一つの重要な役割は、美味しい食物は心に愉しみ、幸福感、満足感を与えてくれることです。また、「同じ釜の飯を食う」という言葉もありますが、古の時代から食(会食)は社会的つながりを作る手段として使われてきました。

【図表】食の使命
出典=『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)

興味深い点として、我々は時には生命維持には必要のない摂食行動を示します。食事の締めにデザートを食べたくなる「別腹」はその代表例です。

また、仕事が忙しい時や試験勉強などストレスがかかった時に食べたくなる「ストレス食い(やけ食い)」、観光地でいい匂いがして食べたくなる「衝動食い」、残食がもったいなくて食べてしまう「もったいない食い」などの心理的な食行動は誰もが経験します。

【図表】メタボ家計BEFORE⇒AFTER
出典=『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)

以上は、心理学的にも指摘されているヒトの摂食行動現象です。

我々の食習慣はメタボリックシンドロームなど多くの疾患の環境要因となっています。そこで、疾患リスクを減らすためには食習慣を改善することが第一と誰もが理解しています。しかし、ダイエットが失敗しやすいように、健康にはよくないとわかっていながらも、好きな食物を食べたい欲求は強く、食習慣をなかなか改善できません。

「好き嫌い」の影響を強く受ける摂食

では、上記のような摂食行動はどのように制御されているのでしょうか。

我々の摂食行動は食物に対する嗜好性(好き嫌い)に強い影響を受けます。我々はそれぞれの食物に対する嗜好性を評価して、食べるか食べないかを意思決定しています。

エネルギーと栄養要求性に基づく摂食行動の「代謝制御」に対して、食嗜好性に基づく摂食行動の制御を「認知制御」と呼びます。摂食行動の代謝制御は視床下部と末梢組織の連携で制御しているといえますが、認知制御は視床下部と認知、情動(感情)、意思判断に関わる脳領野との連携で制御されていると考えられます。

【図表】摂食行動の認知制御
出典=『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)

代謝制御のメカニズムの解明は分子レベルまで進展していますが、認知制御のメカニズムの解明はこれからです。

食経験の積み重ねはなぜ重要か

人文心理学の分野で知られているマズローの欲求理論に基づいて、ヒトの摂食欲求(食欲)の発達段階を表現したものが図表4です。各階層で摂食行動の欲求が満たされれば満足感や幸福感が得られます。

【図表】マズローの欲求階層説に基づいた摂食行動の欲求(食欲)階層
出典=『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)

底辺層は、先天的な食嗜好性です。甘味やうま味を好み、苦味、酸味を嫌うことは、先天的に備わる神経回路により決まっています。最下層より上の層は、食行動の経験によって現れる階層になります。

複雑に認知制御される食欲の階層

下から2段目「安全と安全欲求」では、安全で安心できる食物を求めます。例の食物新奇性恐怖は、経験のない食物に抵抗を感じて積極的に食べない現象です。食わず嫌いや偏食の一因も食物新奇性恐怖である可能性があります。定番の食物を好むことは子どもに顕著です。

一方、嫌悪学習は、何かを食べてあたると、その食物は安全でないと学習して、それを敬遠する現象です。子どもの頃の食物の嫌悪学習はかなり永続的であり、大人になっても影響が残るように思われます。食物新奇性恐怖と嫌悪学習は動物にも観察されます。

下から3段目の「愛情と所属欲求」では、観察学習や同調による皆と同じものを食べたい欲求です。マスメディアで人気があると紹介された食物や、行列のできる食物を食べたくなることがその例です。

この上層の「尊敬と承認欲求」は、皆が食べられないものを食べたくなる現象です。予約の取りにくいレストランで食事をする、即完売することで有名な食物を食べて優越感を味わうこと、食べたものをSNSに投稿して「いいね!」をもらいたい欲求もこの層です。

最上位層は、自分が食べたいものを食べれば満足という境地です。

以上までで、食欲の発達段階と説明しましたが、食経験の積み重ねに伴い上層の新たな欲求段階に到達するものの、下位の欲求が失われるわけではありません。到達した階層までの全ての欲求を混合して、あるいは併用して、摂食行動は複雑に認知制御されています。

栄養学的に理想のダイエット法とは

ダイエットして体重を減らすためには、単純にいえば、1日の消費カロリーが摂取カロリーを上回ること(インプット<アウトプット)の継続が必要です。

一方で、ダイエットが健康を妨げないことも重要です。栄養学的には理想のダイエットをどのように考えればよいでしょうか?

喜田聡『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)
喜田聡『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)

ダイエットにおいて大切な点は、健康を保つため、33種類の栄養素を過不足なく摂取することです。太る原因は中性脂肪(トリアシルグリセロール)を貯め込むことです。この観点から、脂肪や脂肪に変換される糖分を取らなければよいことになります。

しかし、栄養学的な観点からは、脂肪は決して悪玉ではなく、細胞膜などを中心にして体を作る観点からは欠かせない栄養素です。また、糖分は生命維持に必要なエネルギー産生に不可欠です。そこで、健康的にダイエットを成功させるためには、脂肪と糖分を取りすぎないことがポイントになります。

さらに、タンパク質、ビタミン、ミネラルは必要量摂取する必要があります。毎日の食事の成分を調べて、脂肪と糖分のみを控え気味にすることが健康なダイエットです。

【図表】栄養バランスから考えるダイエットの成功と失敗
出典=『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)
認知行動療法によるダイエット成功の秘訣

異なる視点からいえば、過食症や肥満の認知行動療法を参考にすることもダイエットを成功させる秘訣といえます。以下がその例です。


①体重パターンの認知化(自己モニター):毎日体重をメモすることでその増減の理由を認識して、食生活の問題を把握します。

②生活習慣の改善:通勤時にコンビニに寄って必要のない食物を買う習慣があれば、通勤経路を変えます。

③感情コントロール:仕事が忙しいと口寂しくてスナック菓子を食べてしまう場合、カロリーの少ないものに変更します。

④栄養・食品の知識:栄養素と食品の知識を増やして、カロリーの少ない食物を選択します。

⑤運動習慣:ありきたりですが、運動習慣をつけます。

【図表】認知行動を利用する減量
出典=『大学4年間の栄養学が10時間でざっと学べる』(KADOKAWA)

喜田 聡(きだ・さとし)
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授
1994年3月、東京大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士課程修了。東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科教授などを経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻教授。日本神経精神薬理学会理事、日本農芸化学会理事を歴任。文科省科研費新学術領域(領域提案型)「マイクロ精神病態」領域代表、ムーンショット型研究開発事業として「食の心理メカニズムを司る食嗜好性変容制御基盤の解明」のプロジェクトマネージャーなども務めた。

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