1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 重要なのはカロリーでも品数でもない…90歳を超えてもヨボヨボ知らずの夫婦が毎食欠かさず食べていたもの

重要なのはカロリーでも品数でもない…90歳を超えてもヨボヨボ知らずの夫婦が毎食欠かさず食べていたもの

  • 2026.7.29

健康寿命のために食生活で何を気をつけるべきか。『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』(光文社)を出した実践女子大学教授の守田和弘さんは「メニューの多様性よりも、本能に基づく安定した習慣と、最低限の栄養の確保が健康のカギとなる」という――。

カゴに入った野菜を見せる農家
※写真はイメージです
90歳を元気に超えた「毎食同じ」祖父母

私の祖父母は、食卓に毎食のように「魚の干物」を並べていました。

しかも、それはまるで塩そのものを舐なめているかのように非常にしょっぱいものでした。

栄養学的に見ると、塩分過多は高血圧や腎臓病のリスクを高めるはずです。さらに、献立はいつもほとんど同じ。朝も昼も夜も、ベースはご飯と干物、味噌汁、漬物。たまにお刺身や煮物、果物が加わる程度。

食品の研究に携わるようになり、栄養学の知識を多く学んだ私は、「こんな食生活で大丈夫なのだろうか」と、実家の祖父母の健康を内心とても心配していました。

しかし、二人とも90歳を超えても大きな病気ひとつせず、老衰で亡くなるまでは毎日元気に畑に出ていました。血圧も正常、腎臓も元気。認知機能の低下もなく、目も耳もすっきり良好でした。お医者さんからも「この年齢でこの健康状態は珍しい」と言われるほどでした。

この経験から学んだのは、「教科書的な『正しさ』だけでは、人間の健康は語れない」ということです。食事の内容だけでなく、習慣や心理的な安心感、生活全体のリズムが健康に大きく影響するのだと実感したものでした。

「昼は毎日ラーメン」でも健康なワケ

「健康のためには、毎日いろいろなものを食べなければならない」――そう言われることが多いですよね。

その一方で、テレビなどでは「週5で吉野家」「昼は毎日ラーメン」「毎日CoCo壱番屋のカレー」と豪語する食通の方を見かけることがあります。なかには「食べたインスタント麺の種類は何千種類」「365日レトルト食品生活」など、驚くようなエピソードも。

そんな話を聞くと、「自分も毎日同じような食事ばかりしていて大丈夫なのかな」「好きなものばっかり食べて、将来、栄養が偏って病気になったりしないかな」と不安になる方も多いでしょう。

でも、心配しすぎる必要はありません。

きちんと必要な栄養がとれていれば、毎日同じ食事でも健康に暮らしていくことは十分に可能です。

確かに理想をいえば多様な食材をとることが望ましいのですが、実際のところ、同じ食事でも栄養バランスがとれていれば大きな問題はありません。

「おいしいと感じる安定」は大事な感覚

たとえば、牛丼やカレーなど、同じメニューを週に何度も食べている人でも健康に過ごしている例は少なくありません。

これは、主食(炭水化物)・主菜(タンパク質・脂質)・副菜(ビタミン・ミネラル)という基本構成が揃っていれば、自然と必要な栄養素を補えているからです。

祖父母の食事を振り返ってみても、実はご飯(炭水化物)、干物やお刺身(タンパク質・脂質)、煮物や味噌汁、漬物、果物(ビタミン・ミネラル)と、シンプルながらも基本的な栄養素はそれなりにカバーできています。

アジの干物
※写真はイメージです

つまり、「毎日同じ=栄養が偏る」とは限らないのです。

実際、長寿地域の人々の食卓も実はとてもシンプルで、似たような食材を毎日食べていることが多いのです(詳しくは、本書『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』の第3章で紹介します)。

人間は「食に慣れる」生き物でもあります。

毎日同じ味を繰り返すことで、体はそのリズムを覚え、安心感が生まれます。食事の満足感や幸福感は、味のバリエーションよりも「おいしいと感じる安定」から生まれる部分が大きいのです(*1)。

好きなメニューが定番になるのは、「自然な本能」と考えることができます。

食事の最適化で心も体も健やかに

もちろん、まったく同じ味では飽きることもあります。その場合は、調味料を少し変えたり、調理法をアレンジしたりすれば十分です。

たとえば、同じ野菜でも「炒める」「蒸す」「和あえる」といった調理法を変えるだけで風味ががらりと変わります。これは「多様化」ではなく、「小さな変化」で楽しみを生み出す工夫です。

要するに、健康のカギは「バリエーションの数」ではなく、「基本が整っているかどうか」です。

本書の第1章でお話しした、炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルという五大栄養素が満たされていれば、献立が少なくても大きな問題はありません。むしろ、同じメニューでも栄養の土台が安定しているほうが、体調もメンタルも整いやすいといえます。

毎日同じ食事をとることは、手抜きではなく「最適化」です。

体に合うパターンを見つけて続けることは、立派な自己管理です。「今日も好きなものを食べられる」――それだけで、心も体も健やかになれるのです。

限られた食材で生き延びた人類の進化

私たちはしばしば「毎日同じものばかり食べてはいけない」と思い込みがちですが、ちょっと考えてみましょう。

多くの動物は、毎日ほぼ同じ餌を食べながらも健康を維持しています。たとえば羊や牛は、ほとんど同じ草や干し草を食べます。もちろん、彼らは人間とは異なる消化システム(反芻胃はんすうい)を持っているため、草だけからでも必要な栄養を作り出すことができます。

パンダは竹ばかり、コアラはユーカリばかり食べますが、これは彼らの体が、その食事に特化して進化してきたからです。肉食動物のライオンも、ほぼ毎日同じような食事をしています。彼らは多様な食材を求めるのではなく、狩りで得た栄養価の高い肉をとることで健康を維持しています。

では、人間はどうでしょうか?

人間は雑食性で、多様な食材を食べられる能力をもっています。しかし、だからといって「毎日違うものを食べなければならない」わけではありません。

歴史を振り返ってみても、人類は長い間、限られた食材を繰り返し食べてきました。農耕が始まる前の狩猟採集時代、人々は季節ごとに手に入る食材を繰り返し食べていました。現代のように「毎日違うメニュー」を食べられるようになったのは、ごく最近のことです。

それは選択肢が少なかったからというより、生き延びるための合理的な戦略でもありました。体は、安定した栄養供給に適応するように進化してきたのです。

栄養の確保と摂取の安定性が健康の基礎

実は、「食事の多様性も大切ですが、それ以上に栄養の確保と摂取の安定性が健康の基礎となる」という考え方もあるのです。

毎日同じメニューを食べ続けることで、体は食べる量やタイミングを覚え、消化吸収や代謝のリズムが安定します。体内の酵素やホルモンが予測可能なリズムで働くため、腸内環境も整いやすくなり、血糖値の急激な変動も抑えられます。

私自身も、研究に没頭していた時期は、毎日ほとんど同じ昼食をとっていたことがあります。

コンビニのおにぎりと即席味噌汁、サラダ。変化はほとんどありませんでしたが、不思議と体調は安定し、食事について悩む時間も減りました。今思えば、それは「単調」ではなく、「安定」だったのです。

近年の研究では、「腸内細菌と食習慣の関係」も注目されています。

腸内細菌は、毎日食べるものに適応して変化していきます(*2)。たとえば、毎日納豆を食べる人の腸内には、納豆の栄養を効率的に利用できる細菌が増えます。同様に、毎日ヨーグルトを食べる人、毎日野菜を食べる人、それぞれの腸内環境は、その食事に最適化されていくのです。

納豆
※写真はイメージです

つまり、同じものを食べ続けることで、その食事を効率的に消化吸収するための腸内環境が育つ、という側面もあるのです。

単調な食事でも栄養バランスを保つ方法

もちろん、毎日同じものを食べる場合でも、「栄養素が偏らないように工夫する」ことは大切です。肉や魚、卵、豆、野菜、海藻、果物など、必要な栄養素を少しずつ組み合わせるだけで、単調な食事でも栄養バランスは保てます。

守田和弘『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』(光文社)
守田和弘『食べたいものを、食べていい 「毎日牛丼」生活も肯定する科学』(光文社)

つまり、食事の多様性よりも、「本能に基づく安定した習慣と最低限の栄養の確保」が健康のカギとなるのです。

人間も動物の一種です。動物たちが毎日同じ餌を食べて健康を維持しているように、私たちも本能と習慣に沿った食生活を送ることが、長生きと健康への自然な道といえます。

無理に多様性を求めるのではなく、体が必要とする栄養を安定してとりながら、食事を楽しむ――それがもっとも自然で、科学的にも安心できる方法なのです。

【参考文献】
*1 Rozin,P.(2005).The meaning of food in our lives: A cross-cultural perspective on eating and well-being. Journal of Nutrition Education and Behavior, 37,S107-S112.
*2 David,L.A,Maurice,C.F.,Carmody,R.N.,Gootenberg,D.B., Button,J.E,Wolfe,B.E.,Ling,A.V.,Devlin,A.S.,Varma,Y.,Fischbach,M.A.,Biddinger,S.B.,Dutton,R.J.,& Turnbaugh,P.J.(2014). Diet rapidly and reproducibly alters the human gut microbiome.Nature, 505(7484),559-563.

守田 和弘(もりた・かずひろ)
実践女子大学教授
実践女子大学教授・博士(農学)。富山県生まれ。静岡大学農学部卒業、筑波大学大学院生命環境科学研究科博士課程修了。富山県農林水産総合技術センター食品研究所、東京医療保健大学を経て現職。2017年日本食品科学工学会奨励賞受賞。専門は食品科学。食の科学を探求しながら、食べる喜びと健康の両立について思考を巡らす。好物は牛丼。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ