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人と店の歴史が詰まる。ラーメンどんぶり物語 〜前編〜

  • 2026.8.21

ラーメンどんぶりには人と店の歴史が詰まっている。コレクター・加賀保行さんの約650個に及ぶ蒐集品(しゅうしゅうひん)から、語るべき逸品を厳選。一杯のどんぶりに眠る個性的な物語を紹介。

photo: Hikari Koki / text: Masae Wako / edit: Sho Kasahara

青山〈麺屋武蔵〉のどんぶり、中野〈青葉〉のどんぶり、横浜〈くじら軒〉のどんぶり
フィガロジャポン

解説

青木健(デザイナー、エッセイスト)
あおき・けん/ラーメン専門クリエイター。〈凪〉
〈Japanese Soba Noodles 蔦〉などのロゴやどんぶりデザインにも携わる。著書にラーメン文化を綴った『教養としてのラーメン』(光文社)。

加賀保行(どんぶりコレクター)
かが・やすゆき/自称“日本一のラーメンどんぶりコレクター”。日本全国を巡って、店で直接譲ってもらったり、店舗HPで購入したり等、25年間で集めたどんぶりは650個にも及ぶ。

“96年組”のどんぶりが起こした革命は、“青”だった⁉

今からちょうど30年前の、1996年。その後のラーメン界に大きな影響を及ぼす3店が創業した。東京・青山の〈麺屋武蔵〉、東京・中野の〈青葉〉、横浜の〈くじら軒〉。ラーメンファンの間で“96年組”と呼ばれるこの3店は、それまでの常識にとらわれず、魚介風味を強調した新感覚のラーメンを打ち出したのだ。

「内装やBGMなどによる洒落た雰囲気作りも相まって、ラーメンファンの層をぐんと広げました。そして、ラーメンが変わればどんぶりも変わります。象徴的なのは、3店とも“青”を取り入れていたことですね」(加賀保行)

「それは和食器では馴染みのある、染付の器のような藍色。当時は食欲をそそる赤系のデザインが多かったので、青系のどんぶりは新鮮でした。柄も、幾何学模様の雷文や鳳凰といった中華料理文脈のデザインではなく、松竹梅や唐草など日本の伝統柄をモダンにアレンジしたものを使用。あくまでも推測ですが、96年組のどんぶりを見て、青い器にラーメンが映えることに気づいた人がいたのかも。その後、青系どんぶりを使う店が増えたように思います」(青木健)

麺屋武蔵

青山〈麺屋武蔵〉のどんぶり
H9×口径18.5cm。
青山〈麺屋武蔵〉のどんぶり
フィガロジャポン

サンマの煮干しを使ったスープが特徴。写真は〈麺屋 武蔵〉にて、かつて使われていたもの。「波模様は武蔵=巌流島のイメージかなと想像します」(青木)

「センスのよさはアパレルから転身した創業者ならでは。丸みも深さもある形状なので、スープがたっぷり入り、麺に絡みやすいんです」(加賀)

青葉

中野〈青葉〉のどんぶり
縁の内側には柴垣文と呼ばれる縞模様と、シンプルな唐草模様。H8.5×口径20.5cm。
中野〈青葉〉のどんぶり
フィガロジャポン

豚骨と魚介のいいところを合わせたダブルスープの人気の立役者。

「口縁が外側に反っていてスープが飲みやすい“反丼(そりどん)”です。青系どんぶりも衝撃でしたが、見込み(器の内底)と高台に入れた屋号だけが赤というのも潔くていい」(青木)

くじら軒

横浜〈くじら軒〉のどんぶり
H8.5×口径21cm。
横浜〈くじら軒〉のどんぶり
フィガロジャポン

魚介系と動物系だしをバランス良く合わせたさっぱり系スープが特徴。

「こちらも反丼で、やや大きめ。器の外側は白地に唐草模様で、内側のかわいい総柄は“新古代波”と言うそうです」(加賀)

「見込みには松竹梅をグラフィカルにしたような模様が。ロゴの“く”はクジラの尾びれがモチーフ」(青木)

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