1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. CFCLがスピーカーとなって伝える、コットンをめぐる“見えない価値”と「種と人」の物語

CFCLがスピーカーとなって伝える、コットンをめぐる“見えない価値”と「種と人」の物語

  • 2026.5.12
Hearst Owned

ファッションにおけるサステナビリティは、いまや避けて通れないテーマとなっています。リサイクル素材や環境配慮型の生産など、その取り組みは広がりを見せていますが、見落とされがちな視点があります。それが、「素材がどのように生まれているのか」という根本的な問題です。

Hearst Owned

そこへの問題提起として、和光 本店地階 アーツアンドカルチャーでは、現代を生きる人々のための道具としての衣服を提案するCFCLの思想を背景に、素材から製品に至るまでのプロセスに焦点を当てた展示イベント「CFCL: from Cotton Fields to Dress」を開催。特に、オーガニックコットン認証への移行期間中にある「コットン・イン・コンバージョン」に着目し、インドにおける綿花の収穫から製品化に至るまでの工程を追った映像および展示を初公開しました。

CFCLの代表兼クリエイティブディレクター、高橋悠介さんと、インドに12年間駐在し、ORGANIC FIELDの根幹を担ってきたスタイレム瀧定大阪 ORGANIC FIELD室 室長の髙森俊滋さんによる、編集者をはじめ情報発信者を対象にしたトークセッションでは、「種と人」というキーワードのもと、コットンをめぐる現実とその裏側にある構造について、詳しい情報が共有されました。

情報発信者に向けて共有された「コットン」市場のいま

ブランドが、いま改めてコットンに立ち返る理由

最近では、リサイクルポリエステルを中心に展開してきたブランドが、改めてコットンに注目しています。その理由としては、「機能性に優れるポリエステルも、真夏の暑さや肌への負担という点では限界があるけれど、コットンは吸湿性や肌あたりに優れており、日常における快適性を支える素材」というシンプルな理由だといいます。「365日着られる服」を目指すうえでは、天然素材としてのコットンは欠かせない存在というわけです。

本質を追求すると、わずか2.9%しか存在しない「オーガニック」の現実

一般的に“サステナブルな素材”として認識されているオーガニックコットンですが、その実態は決して広く普及しているとはいえません。現在、世界のコットン生産量に占めるオーガニックの割合は、わずか2.9%に留まっており、主な生産地もインドなど限られた地域に集中しているそうです。

さらに問題視されているのは、“認証”の信頼性とのこと。コットンは収穫後、複数の工程を経て流通しますが、その過程で混合や偽装が起こるケースも指摘されています。つまり、ラベルだけでは実態を完全に保証できない構造が存在しているといえるのです。

市場で評価されにくい「コットン・イン・コンバージョン」の盲点

こうした中で重要な役割を果たすのが、CFCLも取り入れている素材「コットン・イン・コンバージョン」と呼ばれる存在です。これは、農薬や化学肥料を使用しない栽培へ移行している途中段階(1〜3年目)のコットンを指すそうですが、品質としてはオーガニックと大きな差がないにもかかわらず、正式な認証が得られず、市場では評価されにくいという課題があります。

しかし、本来オーガニックコットンを増やすためには、この「移行期間」を支えることが必要不可欠。コンバージョンが広がらなければ、オーガニックの供給も増えません。それにも関わらず、多くの市場では「認証の有無」のみが判断基準となり、この中間的な存在は見過ごされてきたそうです。

問題解消のために開始した、畑から一気通貫で行うトレーサビリティ

こうした課題に対しスタイレムでは従来の調達方法を見直し、「畑からのトレーサビリティ」に取り組んでいるそうです。インドにおいて農家と直接契約を結び、種の提供から収穫、加工に至るまでを一貫して管理しているほか、現在は約1500件の農家と連携し、全量買い取りやプレミア価格の支払いや認証取得のサポートなどを行っているといいます。

無農薬栽培への移行は収穫量の減少というリスクを伴いますが、こうした支援によって農家の収入が安定していくのです。

手作業に支えられてきた、コットン製品が完成するまでの工程

コットン製品が完成するまでには、想像以上に多くの工程が存在します。収穫された綿は種と繊維に分けられ、不純物が取り除かれ、糸へと紡がれていきます。その過程では機械化が進んでいる部分もありますが、最終的な品質を担保しているのは“人の手”です。

わずかな異物が混入するだけでも製品として成立しなくなるため、現場では細やかな確認作業が繰り返されています。こうした工程の積み重ねは、最終製品の価格に必ずしも明確に反映されるわけではありませんが、確実に価値として存在しているのです。

DYEING TC LUCENT SLEEVELESS BALLOON DRESS ¥79,200 Hearst Owned

ストーリーを伝えるためにファッションが担うべき役割

この見えにくい価値をどのように伝えていくべきなのか、その一端を担うのが、ファッションブランドの役割です。素材の背景やストーリーを、デザインや体験を通じて可視化し、消費者に届けることが求められます。また、継続的に同じサプライヤーと取引を行うことで、生産側は将来の需要を見通すことができ、農家の拡大や、より安定した供給体制の構築にも繋げることができます。

サステナビリティは理念だけでは成立しません。「売れる」ことが成立して初めて、持続可能な仕組みとして機能するのです。

<Profile>

YOSUKUE SUZUKI / Hearst Owned

高橋悠介(わたなべ ゆうすけ)/CFCL代表兼クリエイティブディレクター
1985年東京都生まれ。文化ファッション大学院大学修了後、2010年株式会社三宅デザイン事務所入社。2013年にISSEY MIYAKE MENのデザイナーに就任。2020年に株式会社CFCL設立。2022年よりパリ・ファッションウィークに参加。2024年、Vogue Business 100 Innovators: Sustainability thought leaders の1人として、2025年にはThe BoF 500 Classに選出された。

Hearst Owned

髙森俊滋(たかもり しゅんじ)/スタイレム瀧定大阪 株式会社 R&D部 ORGANIC FIELD室 室長
1976年生まれ、大阪出身。1999年、瀧定大阪(現・スタイレム瀧定大阪)に入社。13年間にわたり、日本国内を中心にテキスタイル事業の営業に従事。2012年のインド現地法人設立を機に現地駐在を開始し、2017年に同法人の代表取締役社長に就任。2024年より現職。

今回のトークセッションで提示された「種と人」という言葉は、象徴的でありながら本質を突いたものです。種は素材の出発点であり、人はそれを育てる存在です。その両者に目を向けることは、ファッションの起点に立ち返ることでもあります。

オーガニックか否かというラベルだけで判断するのではなく、その背景にあるプロセスや関係性に目を向けること。それこそが、これからの新しい価値基準となっていくのかもしれません。CFCL商品は和光 本店地階 アーツアンドカルチャーでもご覧いただけます。ぜひ訪れてみてください。

「和光」
住所/東京都中央区銀座4-5-11
営業時間/11:00~19:00
TEL/03-3562-2111
URL/www.wako.co.jp

問い合わせ先
CFCL
MAIL/press@cfcl.jp
URL/cfcl.jp

元記事で読む
の記事をもっとみる