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大口取引先の社長として現れたのは、数か月前に切り捨てた友人の恋人でした

  • 2026.8.19
ハウコレ

名刺を差し出す手前、顔でわかりました。あの日の話は、最後まで一度も出ませんでした。深く頭を下げたのは、私のほうでした。

友人の恋人が出て行った自動ドアを見送りながら、私は祝福の言葉より先に検索窓を開いていました。

冗談のふりで口にした本音

友人が、ひと回り上の恋人を紹介してくれた席でした。会社を経営していると聞いた瞬間、頭に浮かんだのは、うまくいっていない自分の毎日でした。友人の恋人が電話で席を立つと、私は経営者の年収を検索し、出てきた数字を友人に向けました。冗談に聞こえるよう、笑いながら言いました。「どうせお金目当てでしょ」「ひと回りも上って、普通に考えたらそういうことじゃん」。友人は「そういう目で見られてたんだ」と短く言って、それきり恋人の話をしませんでした。守りたいふりをして、置いていかれたくなかっただけでした。

大口取引の担当になって

学生のころから続く友人とのチャットは、用件だけになりました。謝る文面を何度か打ちかけて、消しました。受け入れてもらえなかったらと思うと、送れませんでした。そのころ会社で大口の新規取引が動き始め、担当は私になりました。先方の社長への挨拶が山場だと、上司から聞かされていました。

応接室に現れた社長

通された応接室で待っていると、社長が入ってきました。名刺を差し出す手前、顔でわかりました。用意した挨拶の順番は崩れ、私は誰よりも深く頭を下げました。商談中、友人の恋人は一度もあの日の話をしませんでした。説明の拙い部分まで丁寧に確かめて、最後は契約をまとめてくれました。お金目当てと切り捨てた相手に、私は会社ごと助けられていました。帰りの車で上司は上機嫌で、私は窓の外ばかり見ていました。

そして...

帰り道に打ち始めた文面を、数日かけてやっと送りました。「お金目当てって言ったのは、あなたが羨ましかったから」「ごめん。今さらだけど、直接謝らせてほしい」。返信は短くて、会う日と、あの店の名前だけがありました。私はカレンダーにその日を書き入れて、まず謝ることだけを決めています。

(20代女性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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