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「わかった」しか返せない私が、娘の帰省の前日から仕込んでいたもの

  • 2026.8.18
ハウコレ

冷蔵庫に貼った紙には、娘の言葉が少しずつ増えていきました。駅のロータリーで娘を待つ間、私は何度も時計を見ました。

娘に宛てた長い返事を消して、私はまた「わかった」とだけ打ち直しました。

長い返事は、いつも途中で消えました

娘が家を出てから、やりとりはメッセージだけになりました。近況が届くたび、私は返事を書き始めます。体は大丈夫か、無理はしていないか。書いているうちに説教じみてきて、読み返すたびに押しつけがましく思えました。送って呆れられるのが怖くて、削っていくうちに、最後に残るのはいつも「わかった」だけでした。

娘の言葉を、紙に書き写した

連休の前、娘から文面が届きました。

「今度の連休、そっちに帰るね。駅まで迎えに来てほしいな。あと、おでんが食べたい」

返せない代わりに、私は届いた言葉を冷蔵庫の紙に書き写すようになりました。

「おでん、駅まで、のどの調子」

字にしておけば、忘れずに済みます。何度も読み返しました。それでも返した文字は、やはり「わかった」でした。

駅のロータリーで

当日、私は約束より早めに着いて、ロータリーの一番手前に車を停めました。改札から出てきた娘に掛けた言葉は「おかえり」だけ。本当は、よく帰ったな、と続けたかったのですが、口が動きませんでした。家の鍋では、前の日から仕込んだおでんが煮えていました。娘が冷蔵庫の紙の前に立ったとき、私は風呂を見てくるふりをして台所を離れました。何と言われても、うまく答えられる気がしなかったからです。

そして...

帰り際、娘に言われました。

「メッセージ、わかっただけだと、ちょっと寂しいよ」

返した言葉は「そうか。わかった」だけ。我ながら情けない返事でした。数日後、家に着いたという知らせに、私は打ちかけの長文をまた消して、代わりに短く一言を足しました。

「わかった。気をつけて」

今も長い返事は書けません。ただ、冷蔵庫の紙の言葉は、これからも増やしていくつもりです。

(50代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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