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ガラス作品で世界を魅了する、ソフィー・ルー・ジェイコブセン。光とカラーに満ちた特別な住空間

  • 2026.8.1
OMI TANAKA

ファッションや文化の発信源であるニューヨークで活躍する、自立した女性たちのファッションやライフスタイルを紹介する連載。Vol.11は、ライフスタイルブランドを手掛けるソフィー・ルー・ジェイコブセンをフィーチャーする。

<a href="https://www.instagram.com/sophieloujacobsen/" target="_blank">ソフィー・ルー・ジェイコブセン(Sophie Lou Jacobsen)</a>/フランス人の両親のもとアメリカ・シアトルで育ち、後にパリへ移住。その後、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズでデザインを学び、2015年にニューヨークへ。2018年に自身のスタジオを設立し、ガラスウェアや照明、家具などのデザインを手がける。現在はニューヨークを拠点に活動。 OMI TANAKA

シアトルとパリで育ち、ロンドンでデザインを学び、現在はニューヨークを拠点に活動するデザイナー、ソフィー・ルー・ジェイコブセン。鮮やかな色彩と遊び心あふれるフォルムで生み出されるガラスウェアやオブジェは、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとするミュージアムショップやセレクトショップで取り扱われている。日常のささやかな所作を特別な体験へと変える彼女のクリエイションは、世界中のファンを魅了している。今回はマンハッタンのアパートメントを訪ね、そのクリエイションの原点と美意識をひもといた。

 

自分らしい表現を見つけるまで

読書やリサーチ、スケッチなど、クリエイションの創作を支えるワークスペース。ルネ・エルブストの70年代の「サンドウズチェア」を愛用している。 OMI TANAKA

── シアトル、パリ、ロンドン、ニューヨークと異なる都市で暮らしてきたそうですね。
フランス人の父の仕事の関係で、シアトルで生まれ育ちました。16歳のときに家族とともにフランスに渡り、数年過ごした後、ロンドンへ。セントラル・セント・マーチンズでプロダクトデザインを学び、その後ニューヨークに移りました。今も家族はパリに暮らしていて、仕事でもよく訪れるので、2カ月に一度ほどのペースで帰っています。

── デザインに興味を持ったきっかけを教えてください。

子どもの頃からものづくりが好きでした。服やバッグを作ったり、絵を描いたり。両親も家具や空間への感覚に優れていて、自然とそうしたものに囲まれて育ちました。パリで大学進学前のアート・ファウンデーションコース(大学進学準備プログラム)に通っていたとき、初めてプロダクトデザインという分野に出合い、自分の進むべき道が見えた気がしました。

お気に入りのソファコーナー。白いシャツはシャルべ(CHARVET)で、ワードローブに欠かせない定番の一枚だそう。 OMI TANAKA

── 卒業後はどのようなお仕事に?
雑誌で執筆をしたり、ブランドコンサルティングに携わったり、友人とデザインストアを立ち上げたり、さまざまな仕事を経験しながら、自分が本当にやりたいことを模索していました。ニューヨークへ来たのは、尊敬していたデザインスタジオ「Ladies & Gentlemen Studio」がシアトルからニューヨークに拠点を移したことがきっかけです。思い切って連絡を取り、アシスタントとして働き始めました。小さなスタジオだったので、デザインだけでなく展示会や発送まで幅広く経験することができました。独立は最初からの目標ではなかったのですが、次第にそれがもっとも自然な流れに思えるようになり、自分にとって次のステップだと感じるようになったんです。

── ご自身のブランドを立ち上げたきっかけは?

スタジオで働きながら、個人的にガラス作品の制作を続けていました。それらを商品化するために試作品を携えて卸向けの展示会に出展したところ、予想以上の反響をいただいたんです。「十分なオーダーが集まったら生産しよう」と決めていましたが、それがブランドをスタートするきっかけとなりました。2018年でしたね。その直後にパンデミックが起きましたが、結果的にブランドに集中できる環境が生まれ、ちょうどホームウェアへの関心が高まっていた時期とも重なり、自然な流れでブランドが成長しました。

日常を少しだけ美しくするために

しおれゆく花びらから着想を得た、ソフィーの代表作「Flora」シャンデリア。 OMI TANAKA

── デザインをする上で大切にしていることは?
オブジェと人との関係性です。それを使う人がどんなふうに触れ、どんな気持ちになるのか。オブジェがもたらす感情や空気感まで含めて考えながらデザインしています。コーヒーを淹れること、花を飾ること、キャンドルの火を灯すこと。そうした日常の小さな所作に喜びや心地よさを添えたいといつも考えています。

── 色彩はソフィーさんの作品を象徴する要素ですが、どのように選ばれているのでしょうか?

まず、そのオブジェがどんなムードを生み出したいのかを考え、ムードが決まると不思議なくらい自然に色も決まります。色は感情や記憶に直接働きかけるもので、その力を信じています。ときには素材やフォルムそのものを生かすために、あえて色を加えず透明なガラスだけで表現することもあります。

── ご自身の感性にインスピレーションを与えているものは何ですか?

特に昔のフランス映画やイタリア映画ですね。映画の素晴らしいところは、登場人物の服装、ヘアメイク、建築、家具、光の入り方まで、すべてが意図を持って存在しています。私にとってデザインも同じで、そのオブジェが存在する空間や、その先に広がる世界観まで含めて考えるようにしています。

住まいと作業場、境界線のない暮らし

お気に入りのソファの後ろには、自身が制作した一点ものに近い花器を飾ったシェルフが。手仕事のぬくもりと造形の美しさが際立つ作品が空間を彩る。 OMI TANAKA

── 家の中で最も気に入っているスペースは?
ソファがあるスペースですね。朝はコーヒーを飲みながら本を読み、雑誌やアートブックを眺めながらリサーチをします。お昼寝をすることもあれば、映画を観ることもあります。気づけば、日常のほとんどがこのソファを中心に回っています。

── この部屋の中で、ご自身を最もよく表していると思う家具を教えてください。

やっぱりこのソファです。私が木のフレームをデザインし、友人に制作してもらいました。脚は別の友人が手がけ、クッションカバーも友人から贈られたものです。いろいろな人とのつながりや思い出が重なって生まれた家具で、最初から計画していたわけではなく、自然な流れのなかで形になっていきました。

貝殻のインレイ(象嵌)が施された、19世紀のアンティークの木製折りたたみチェアは、アンティークディーラーの友人から譲り受けたもの。 OMI TANAKA

── 家はクリエイティビティにどんな影響を与えますか?
ここは自宅であると同時に作業場でもあります。自分でデザインしたものに囲まれながら、日々配置を変えたり、組み合わせを試したりしています。実際に暮らしながら物と向き合うことで、人々がそれらとどのような関係を築くのかが見えてくるんです。新しいアイデアもたいていこの部屋の中から生まれます。

ファッションのマイルールと心の支え

メタルプレートを連ねた、パコ ラバンヌ(PACO RABANNE)を象徴するチェーンメイルバッグは、タイムレスな装いにモダンなアクセントを加える。 OMI TANAKA

── ファッションにおけるルールがあれば教えてください。
エレガンスと快適さのバランスを大切にしています。昼も夜も基本的なスタイルはあまり変わりません。ジュエリーやバッグで少し遊び心を加えることはありますが、上質でシンプルな服を選ぶことが多いですね。どんなシーンにも自然になじむタイムレスなスタイルに惹かれます。

ドレスアップのときに履く、ハートシェイプのつま先が愛らしいアライア(ALAÏA)のミュール。 OMI TANAKA

── スタイルアイコンはいますか?
エルサ・ペレッティとシャーデーです。二人ともシンプルでタイムレスなエレガンスを体現している存在です。自然な気品があり、凛とした強さのなかに繊細さも感じられるところに惹かれます。

── この街で自分らしくいるために欠かせないものは?
友人たちとの時間。さまざまな場所から集まってきた人たちが暮らす街だからこそ、みんなは「Chosen Family(自らが選んだ家族)」のような存在なんです。ここでは自分で築いたコミュニティが心の支えになります。そうした関係を育んでいくことが、この街で自分らしく生きるためには欠かせないと思います。

ニューヨークから始まる次の物語

愛用するスキンケアはモナステリー(MONASTERY)とタイポロジー(TYPOLOGY)。メイクはエルメス(HERMÈS)のアイシャドウでさりげなく彩りを添えることも。 OMI TANAKA

── 理想のニューヨークでの1日を教えてください。
土曜日にゆっくり起きてコーヒーを飲み、ソファで本を読むところから一日が始まります。その後は友人とユニオンスクエアのファーマーズマーケットへ。買ってきた食材でランチを作り、午後はギャラリーやショップを巡ります。夜は友人たちとお気に入りのレストランで食事をして、そのあと映画館へ。映画を観終わったら、日付が変わる前に家へ帰る。それが私にとって完璧な一日ですね。

── ニューヨークで何度も通ってしまうお気に入りの場所は?

メトロポリタン美術館は、訪れるたびに新しい発見がありますし、ノグチミュージアムは静かで穏やかな時間が流れる特別な場所です。レストランならジ・オデオン(The Odeon)ですね。しばらく街を離れていると、ふと恋しくなる場所でもあります。ニューヨークらしさが詰まっているんです。

ポットやカップ、トーストラックなど、日常に寄り添うテーブルウェアも手がけている。 OMI TANAKA

── 長くこの街で暮らすなかで見えてきた、ニューヨークの美しさとは?
この街でいちばん惹かれるのは、人々の多様性と積み重ねられてきた歴史です。私自身、新しい場所より、長く愛されてきたレストランやダイナー、昔ながらのバーにより惹かれます。そんな場所で人々を眺めたり、会話に耳を傾けたりしていると、この街を形づくってきた無数の物語に触れられる気がするんです。

── これから挑戦したいことや夢はありますか?

いつかブランドの世界観を体験できる場所をつくりたいと思っています。最初はポップアップのような期間限定の空間かもしれませんし、将来的には店舗になるかもしれません。商品を並べるだけではなく、私が思い描く美意識や空気感に触れてもらえるような場所です。ニューヨークやパリはもちろんですが、いつか日本でも実現できたらうれしいですね。

Text & Coordination: Maki Saijo

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