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孫に絵文字を送るため、私が書き溜めたノート

  • 2026.8.1
ハウコレ

老眼鏡ごしに、先生の見本を1つずつ書き写しました。

あの子には見せていない、練習の跡だらけのノートが、台所に置いてあります。教室で若い先生に教わったばかりの絵文字を、私は孫にだけは見せずにおきました。

送ってみたかった、たった1つの絵文字

孫が1人暮らしを始めたと聞いてから、私はどうしても、あの子とやり取りをする方法が欲しくなりました。近所の公民館で見かけたスマホ教室の張り紙を、数日眺めてから申し込みました。教室の先生は、絵文字の使い方を丁寧に教えてくれます。私は最初の日に、桜の絵文字1つを孫に送りました。返ってきた「おはよう」が、その日の始まりになったのを覚えています。

覚えても覚えても、間違えてしまう絵文字たち

教室で先生から教わっても、家に帰るとどれがどれだか、わからなくなってしまうのです。ハートの色の違い、笑っている顔の種類、花の名前。私は大学ノートに1つずつ書き写し、隣に意味を鉛筆で書き添えました。それでも間違えて、孫に「怒っている顔」を送ってしまったこともあります。孫からの返信はいつも短く、それでも既読はついていました。届いていると思うだけで、私は次の絵文字を選ぶ気になれるのでした。

台所のノートを、孫に見られた日

休みの日に、孫が家に立ち寄ってくれました。台所のテーブルには、書き途中のノートが、老眼鏡と一緒に置いたままでした。私が気づいて手を伸ばすより先に、孫はノートを見つけて指を置きました。恥ずかしさと、伝わってしまった安心が、同時に来ました。

「あなたが返してくれるのが楽しみで、毎日頑張ってるの」

私はそれだけを言い、あとは何も付け足さないでおきました。

そして...

帰り際、孫は「また来るね」とだけ言って玄関を出ていきました。しばらくして、スマホの画面に、おにぎりと湯気の絵文字が並んでいるのを見つけました。私は台所のノートを開き、「おにぎり」の欄に、あの子の名前を鉛筆で書き加えました。

(70代女性・無職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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