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「園のママたちの本名が、1冊ずつノートになっていた」ママ友の家で見つけた、自分について書かれた一冊。思わず距離を置いた理由

  • 2026.9.18

回覧板を返しに来た隣人が、玄関先で切り出した話

休日の昼、回覧板を返しに来た隣人の女性が、玄関先でなかなか帰ろうとしなかった。

いつも穏やかで、廊下ですれ違えば必ず会釈をしてくれる人だ。

少し迷うように視線を落としてから、彼女が口を開いた。

「急にこんな話したら、変に思いますよね。でも、ずっと誰にも言えなくて…少しだけ聞いてもらえますか」

私が「もちろん。よかったら上がりますか」と言うと、彼女は「いえ、ここで大丈夫です」と首を振り、靴を脱がないまま框へ浅く腰かけた。

子どもがまだ園に通っていて、以前、別の県に住んでいたころの話だという。

「そのころ、よく話すママ友がいたんです。すごく感じのいい人で」

その人は言葉づかいが丁寧で、誰にでも自然に気を配る人だった。

行事の受付でも、顔を見るだけで相手の名前が出てきたという。

「私なんて、何度会っても名前が出てこないことがあるのに、その人はちゃんと覚えてて。私のことも、いつも下の名前で呼んでくれたんです」

「それは、よく覚えてる人だなって思いますね」

「でしょう?私も、ちゃんと人のことを見てる人なんだなって思ってました」

そこまで話すと、彼女は一度言葉を切った。

「でも…覚えてたんじゃなかったんです」

棚の箱を開けてしまった午後

ある日、彼女はそのママ友の家へ招かれた。

お茶を飲んでいる途中、相手が台所から「棚に予備のティッシュがあるから、取ってもらってもいい?」と声をかけてきた。

言われた棚を開けると、ティッシュの横に蓋つきの箱が置かれていた。取り出そうとしたとき、箱の蓋がずれ、その隙間から見覚えのある名前が見えたという。

「一瞬、何だろうって思って。よく見たら、園で知ってる人の名前だったんです」

「名前?」

「そうなんです。それで…だめだと思ったんですけど、蓋を開けてしまって」

箱の中には、手のひらほどのノートが何冊も並んでいた。

一冊ずつ表紙に名前が書かれている。どれも園で見かける母親たちの名前だった。

「園のママたちの本名が、1冊ずつノートになっていたんです」

そして、その中には彼女自身の名前が書かれたノートもあった。

「もう、その時点で閉めればよかったんです。でも自分の名前を見つけたら、怖いのに気になってしまって」

恐る恐るページを開くと、彼女についての細かなメモが並んでいた。

園へ来ることが多い曜日、よく着ている服、以前の会話で話した夫の仕事のこと、子どもの習い事。

本人が何気なく口にしたことまで、日付と一緒に書かれていた。

「読んでるうちに、これも話した、あれも話したって思い出してきて。なんで全部残してるんだろうって…急に怖くなったんです」

そのとき、すぐ後ろから声がした。

「…それ、見たの?」

振り返ると、相手が立っていた。

彼女は慌ててノートを閉じた。

「ごめんなさい。名前が見えて、気になって…本当にごめん」

相手は彼女の手元を見たあと、箱の蓋を閉めた。

「勝手に見ないでほしかった」

怒鳴られたわけではない。それでも、いつもの柔らかい声とは違って聞こえたという。

「うん。本当にごめん。でも…なんで私たちのこと、こんなに書いてるの?」

相手は少し黙ってから答えた。

「私、名前とか、前に何を話したかとか忘れちゃうから。あとで失礼がないように、メモしてただけ」

「でも、こんなに?」

「そんなに変かな」

責めるような言い方ではなかった。そのことが、かえって彼女には怖かったという。

「たぶん、あの人にとっては本当にただのメモだったのかもしれません」

彼女はそう言って、膝の上で手を組み直した。

「でも私は、一度見ちゃったら、もう前みたいには話せなくなって」

それからは園で会えば挨拶をする程度にして、二人きりで会うことはやめた。

やがて彼女はその土地を離れ、それきり相手とは会っていないという。

「箱を開けた私も悪いんです。だから、誰にも言えなくて」

「でも、自分の名前のノートが出てきたら…私でも戸惑うと思います」

そう答えると、彼女は少しだけ肩の力を抜いた。

「よかった。ずっと、私が気にしすぎなのかなって思ってたから」

しばらくして彼女は立ち上がり、「変な話してすみません」と小さく頭を下げた。

私は「いえ」と返し、彼女が隣の住戸の玄関を開けるまで、その場で見送った。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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