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「相手のサーブは、ほとんど6番に集まっています」バレー部マネージャーが顧問に見せたノートの内容は

  • 2026.9.2

これは、妻の友人であるAさんから聞いた、高校時代に女子バレーボール部のマネージャーをしていた頃の話です。

コートに立てなくても、試合の流れは見えていた

高校2年の夏、わたし(Aさん)は女子バレーボール部のマネージャーをしていました。中学時代は選手でしたが、けがをしてからコートでプレーすることはありませんでした。

それでも、練習試合の得点や相手の攻撃の傾向をノートに書く時間が好きでした。線を引き、サーブが落ちた場所や失点の理由を記すと、ばらばらだったプレーが一本の流れに見えてきます。

誰かに提出するよう言われた記録ではありません。選手の輪から少し離れた私にとって、そのノートはチームに残るための居場所でもありました。

県大会の準々決勝で、私たちは第1セットを大差で落とします。相手の鋭いサーブにレシーブを崩され、攻撃の形を作れません。ベンチへ戻った選手たちは「次は絶対に返す」と声を掛け合っていましたが、表情は硬いままでした。

「6番に集まっています」と伝えた

私はノートを開き、サーブの印を目で追いました。そこで、相手の主将がこちらの6番を繰り返し狙っていることに気づきます。偶然ではなく、同じ選手へ意図的にサーブを集めていたのです。

伝えるべきか迷いました。私は選手でも監督でもありません。緊張している6番を、余計に怖がらせる恐れもあります。それでもノートを持って顧問のそばへ行きました。

「相手のサーブは、ほとんど6番に集まっています」

顧問はノートに一度だけ目を落とし、第2セットからレシーブの立ち位置を変えました。6番の周りをほかの選手が補う形になると、サーブを拾える本数が増えていきます。こちらのエースにもボールがつながり、速い攻撃を決められるようになりました。

第2セットを取り返した直後、6番がベンチへ戻ってきました。彼女は私のノートを指さし、少し笑って言ったのです。

「狙われているって分かったら逆に怖くなくなった」

最終セットは最後まで競り合い、私たちは辛うじて勝ちました。決勝点が入った瞬間、選手たちはコートの中央で抱き合います。私はノートを胸に抱えたまま、動けずにいました。

コートに立てなくても、見ているからこそできる仕事があります。あの日のノートは今も引き出しの中です。ページを開くたび、仲間の声と体育館の床を打つボールの音がよみがえります。

【体験者:30代・女性、回答時期:2026年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:タニグチ

小学1年から水泳、小学4年からは野球に打ち込み、大学卒業までの実に十数年をグラウンドで過ごしてきた30代。高校では主将としてチームをまとめ、大学では神宮の舞台にも立った。引退後は中学硬式(シニア)で指導者としてもキャリアを重ね、「する側」「観る側」「教える側」のすべての視点からスポーツと向き合ってきた。

プレイヤー・キャプテン・指導者という異なる立場を経験する中で、勝ち負けの記録には残らない人間関係や、試合の裏側で起こる思わぬドラマに強く惹かれるように。チームメイトや教え子、友人・知人から聞いたスポーツにまつわるリアルなエピソードを中心に取材し、感動や驚き、時にはちょっとした仕返し劇まで、スポーツの現場で生まれる人間ドラマをコラムとして執筆している。

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