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「電車の奥が空いてる、早く進んで」ホームでよろけた私。だが、振り返った時の光景に絶句

  • 2026.7.29
「電車の奥が空いてる、早く進んで」ホームでよろけた私。だが、振り返った時の光景に絶句

降りる人が、終わらない

その日は残業で、帰りが遅くなった。ホームは混んでいて、乗車口の列は十人以上が縦につながっている。私は真ん中あたりだった。

「まもなく電車がまいります。白線の内側までお下がりください」

放送が流れても、到着まではまだ十分ほどあった。列の後ろに人が足されていく気配が、背中越しに伝わる。

やがて滑り込んできた電車は、想像していたよりずっと混んでいた。ドアが開いても、すぐには誰も出てこない。

「すみません、降ります」

奥から声が上がって、人の塊がほどけていく。

一人目が降り、二人目が降り、それでもまだ続いた。

列は動かない。

そのとき、背後で声がした。

「電車の奥が空いてる、早く進んで」

怒鳴り声ではなかった。

低く、抑揚のない、独り言のような話し方だった。

誰に向けたのかも分からない。私は前を向いたまま体を縮めた。まだ降りている人がいる。進みたくても、進む場所がなかった。

振り返った先の横顔

最後の一人がホームに出て、列がようやく1歩だけ前に動いた。前の人に続いて、右足をドアの縁に踏み出した。

その瞬間、背中の真ん中に重い力が入った。押された、という柔らかい感覚ではない。

体重をまるごと預けて突き飛ばすような、ひと突きだった。上半身だけが先に倒れて、足がついてこない。

足元に、ホームと車体のあいだの黒い隙間が見えた。

「あっ」

とっさに伸ばした手が、ドア横の手すりに触れた。

指をかけて、体を車内へ引き込む。膝が笑っていた。

そこで、ようやく振り返った。後ろに立っていたのは、年配の女性だった。

目は合わなかった。私が振り返ったことに、気づいてもいないようだった。

眉ひとつ動かさず、私の横をすり抜けて車内の奥へ歩いていく。

空いた座席の前で足を止め、荷物を膝に置いて静かに腰を下ろした。それから一度も、こちらを見なかった。

怒っている顔でも、急いでいる顔でもない。窓の外を眺めているだけの、どこにでもいる乗客の横顔だった。

さっき私の背中を突いた手が、膝の上で静かに組まれている。声をかける気は起きなかった。何を言えば通じるのか、見当もつかなかった。

私は吊り革につかまったまま、遠くからその人を見ていた。何を考えていたのかは、最後まで分からないままだった。数駅先で、その人は静かに席を立って降りていった。

後日、友人に話した。

「それ、駅員さんに言えばよかったのに」

「急いでたし、言っても仕方ないと思ったから」

あの夜から、列での立ち方が変わった。

混んだ時間帯のホームで足を踏み出す前に、必ず一度、後ろを確かめる。

誰も、何もしていない。それでも、後ろが気になる。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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