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「握り寿司を5人前、並でお願いします」20年続いた義父の注文が、私のいない年だけ豪華になった理由

  • 2026.7.28

毎年同じ、義父の電話

妻の実家に帰省すると、初日の夕飯は決まって寿司の出前でした。

もう20年、変わらない我が家の恒例です。

注文するのは、いつも義父の役目でした。

義父は居間の電話を取り、こちらにも聞こえる声で、はっきりと告げます。

「握り寿司を5人前、並でお願いします」

毎年、一言一句、同じでした。

5人前の中には、婿である私も、ちゃんと数えられています。

それは嬉しいのですが、正直に言えば、少し不思議でもありました。

わざわざ毎回、私に聞こえるように「並で」と言わなくてもいいのにな。

そう思いながら、20年、聞き流してきたのです。

私のいない年の食卓

ある夏、仕事の都合で、私だけ帰省できない年がありました。妻と子どもたちが先に、義父母のもとへ向かいます。

その晩、妻から一枚の写真が届きました。

食卓に並んでいたのは、いつもの握りではありません。

つやつやのウニ、こぼれそうなイクラ、頭つきの立派なエビ。

どう見ても「並」ではない、豪華な寿司ばかりでした。

私がいない年だけ、ごちそうになっている。

一瞬、ほんの少しだけ、胸の隅がちくりとしました。

「なんで今年だけ、こんなに豪華なの」

電話でそう尋ねると、妻は受話器の向こうで笑い出しました。

20年ぶんの種明かし

「お父さんね、あなたが来る年はいつも、並で十分だって張り切ってたのよ」

妻の話は、こうでした。

義父は、婿である私に気を遣わせたくなかったのだそうです。

豪華な寿司を出せば、私が恐縮してしまう。

だから毎年わざと、私に聞こえるように「並で」と注文していた。

うちは気取らない家だから、あなたも構えなくていい。

そういう意味の「並」だったのです。

私のいない年は、その気遣いがいりません。

だから義父は、遠慮なく自分の好きなウニやイクラを頼んだ。ただ、それだけの話でした。

不器用な人だな、と思いました。

20年ものあいだ、あの「並で」は、ずっと私に向けられた優しさだったのです。

次に帰省したとき、私は義父に言いました。

今年は僕も、ウニが食べたいです、と。

義父はぽかんとして、それから、少し照れたように笑いました。

その年の注文だけ、ほんの少しだけ豪華だったことは、言うまでもありません。

その日の食卓はいつもより賑やかで、義父もまんざらでもなさそうでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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