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生涯“野良”でありたい。30年ぶりに雑誌を作った写真家・伊島薫と、作品を寄稿した五木田智央が対談

  • 2026.7.31

真っ白な表紙に「野良」の2文字。写真家・伊島薫が雑誌『野良』を創刊した。かって自身が編集長を務めた伝説のファッション誌『ジャップ』から約30年ぶりの雑誌編集だという。創刊号の題字を書き、さらに描き下ろしの作品を寄稿したアーティストの五木田智央との編集後記的対談。

photo: Kazuharu Igarashi / text: SIDE B

写真家・伊島薫と五木田智央
BRUTUS

群れずに我が道をゆく、“野良”でありたい

伊島薫

はじめは僕主体の雑誌じゃなかったんです。2024年に『ジャップ』のアーカイブ展をやったら、90年代のカルチャーに興味を持っている20代の子たちがたくさん来てくれて、話していると「最近の雑誌ってなんかつまんないよね」と。

「じゃあ、俺たちで作る?」みたいな流れになって。若い子たちが「今」を面白がれる雑誌を作ってくれればいいな、僕はちょっと横からお手伝いする的な感じだったんだけど、気がつけば自分と19歳の男の子の2人になってて、そして最終的には俺が一番手を動かしてた(笑)。

編集作業はもちろん、本屋さんに置いてもらう営業の電話まで。五木田さんへの依頼も対面でしたね。

五木田智央

伊島さん含め、4人で飲んでいるときに依頼されたんです。僕は個展の準備の真っ最中で、ほかのことはできないな、というタイミングだったんだけど、この話を聞いた瞬間に「あ、これはできるな」と。なんかすごい呼ばれてる気がして(笑)。

伊島

飲んでる時から、五木田さんが「これ、いけるか?楽勝か?」って。

五木田

そう、イメージが降りてきたんです。翌日の午前中にすぐできた、5枚全部。前日の酒が残る中でね(笑)。

──創刊号のテーマは「顔」。小泉今日子書き下ろしの連載小説「ニャーとファー」、ミハラヤスヒロといった旧知のアーティストから、最近出会った若き表現者まで総勢45人が作品を寄せています。みなが著名な方ではないですが、こうした未知なるものとの出会いこそが雑誌の力とも言えますよね。

小泉今日子の小説は彼女の生への諦観、自分を遊ぶ大胆さに思わず唸る作品だ。

伊島

全員に共通しているものがあって、生き方や存在が「野良」だと思う人。僕にとっての「野良」は「周囲に迎合することなく群れずに我が道をゆく」。世間ではなく、自分の尺度で生きている人。そんな人たちを集めた。

五木田

今の時代、何かの賞や評価にこだわる表現者も多いけれど、僕は「野良なんだから、賞とか上下関係とかどうでもいいじゃん」って思う。そう、「野良は上下を作らない」。誰かの眼鏡にかなうような、審査員がいいと思うようなものを作ったって面白くない。それよりも彼らが「見たこともないようなやつ」を作りたいじゃない。

伊島

僕の「連続女優殺人事件」シリーズは「ファッション写真で女優が死んでたら面白いじゃん」という思いつきから始まったもので、それを載せてくれるファッション誌がないから、「じゃあ自分で雑誌を作るか」と思って作ったのが『ジャップ』だった。

ただ、評価されたのはいいけど、僕の写真に対するイメージが固定されちゃった時期もあった。同じことをやり続けるのは嫌だから、次は違うことをやる。そうすると今度は見向きもされなくなったり(笑)。

五木田

僕の昔のモノクロの顔の作品シリーズもそうでしたね。「お前はあの前のシリーズがいいよ」なんて言われても、こっちはもう飽きちゃってるんだから(笑)。

創刊号の特集は「顔」。五木田智央の作品。一気に描き上げたという5つの連作をめくっては戻る、まさに紙ならではの体験

伊島

「面白いと思えるかどうか」、自分の中での初期衝動や新鮮さを大切にしたいね。

五木田

自分の絵を見て「あ、なんか俺、かっこつけてんな」と思ったら、全部やり直して消して、一から出直す。孤独だし、紆余曲折の連続だけど、そうやって自分で頭をぶつけながら作っていくしかない。

伊島

そうやって試行錯誤していくしかないんだよね。この雑誌の2号目がどうなるかも、俺にも全然わからない(笑)。でも、「どうなるかわからない」からこそ、雑誌も、生きることも面白いんだと思う。

Information

雑誌「野良」の表紙
BRUTUS

雑誌『野良』

写真家・伊島薫の30年ぶりの雑誌は「閉塞感漂うこの時代にあって、我が道をゆく野良たちが集う場所」。五木田智央の手書きの「野良」(写真)と、ファッションデザイナー飛田正浩による刺繍の「野良」のダブル表紙。176ページ。雑誌野良の公式ウェブにて購入可。4,950円。

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profile

伊島 薫(右)

いじま・かおる/1954年京都府生まれ。写真家、編集者。80年代より広告やCDジャケット、ファッション誌の第一線で活躍し、海外での個展も開催。2026年、雑誌『野良』を創刊。

profile

五木田智央(左)

ごきた・ともお/1969年東京都生まれ。アーティスト。国内外で多数の個展を開催。7月25日まで個展『Lush Life』が〈タカ・イシイギャラリー〉六本木・京橋にて開催中。

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