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【発達障害とは何か?よくある誤解と正しい定義】米国小児科医・松浦有佑✕発達っ子ママ・りっきー対談

  • 2026.4.27

授業中に立ち歩いてしまう、忘れ物が多い、ほかの子とうまくコミュニケーションが取れない——。こういった子どもたちの行動が「躾の問題」や「努力不足」と言われていたのは昔のこと。近年、発達障害(神経発達症)※への認知は広がっていますが、一方でSNS上には「グルテンフリーでADHDが改善」「高血糖で症状悪化」など、医学的根拠の乏しい情報も溢れています。「正しい情報をどう見極めればいいのか」「診断を受けるべきか迷っている」「どう育てればいいのか」——そんな不安を抱える保護者の方は少なくありません。今回、with classで連載中のモンテッソーリ講師のりっきーさん(自身も発達特性があり、ASD・ADHDの診断のある知的境界域の13歳のお子さんを育児中)と、米国で発達行動小児科専門医として活躍する松浦有佑さんに対談していただきました。第一回は、知能検査よりも適応能力が重視される理由、正しい情報の見極め方などについて話していただきました。※現在の医学的な正式名称は「神経発達症」ですが、混乱を避け認知度が高い言葉で統一するため、本記事では「発達障害」という言葉を使用しています。

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診断までの道のり——「様子見」と言われ続けた3年間

松浦有佑(以下、松浦):りっきーさんは発達障害のあるお子さんを育てていらっしゃるということですが、診断がつき、支援につながるまで、多くのご苦労があったと伺いました。どのような経緯だったのでしょうか。りっきー:長男は今13歳なのですが、悩み始めたのは保育園に入った1歳の時です。同年齢のほかの子と同じような集団行動ができなくて、「あれ?」と思ったんです。でも当時はまだ発達障害に関しての情報が少なく、療育も簡単にはアクセスできる状態ではありませんでした。2歳半で市の区役所に相談したのですが、「言葉は出ているし、早生まれだから」という理由で「様子見」に。3ヶ月待ってようやく発達検査を受けられましたが、初めての場所だったので「もう帰りたい!」とパニックを起こしてしまい、測定不可能で終わってしまいました。結局、4歳2ヶ月でようやくASDと軽度知的障害(当時・現在は知的境界域)の診断がついて、ADHDの疑いがあると言われました。松浦: 診断までに約3年かかったんですね。その間、どんな気持ちでしたか?りっきー: 「様子見」と言われるたびに不安が募りました。でも、診断がついたときは、ショックというより安堵を感じました。ようやく名前がついて、これでサポートが受けられると。松浦:おっしゃる通り診断をつけることで支援につながるのですが、そのステップがスムーズに運ばない保護者の方もいらっしゃると聞きます。りっきー:長男のケースはおよそ10年前のことなので、今はもう少し支援につながりやすいステップが組まれていて、診断がつきやすくなっているのかなと思います。我が子の場合、診断がついたことにより通所受給者証と療育手帳がもらえて、支援が進んでいきました。松浦:日本でも療育に通う子どもが増え、保護者の方の心理的ハードルも低くなっていると感じますか?りっきー: 日本では、まだ「診断がつく=レッテルを貼られる」と恐れる保護者も多いと思います。知識がないゆえにデメリットがあると思ってしまうのは、発達っ子の子育て界隈ではあるあるです。松浦先生が米国で発達行動小児科専門医として働く中で、診断の捉え方について日米で差があると感じられますか?松浦:まず、診断は隠すべきものでも、恥ずべきものでもありません。その子自身は診断の前後で何も変わっていない。ただ、必要なサポートにアクセスしやすくなるだけです。実際、アメリカでは診断がついたお子さんに、医師も親も本人にも隠さず伝えます。「あなたにはADHDという特性があるけれど、それはあなたの一部であって、全てではないよ」と。

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「知能検査のスコアだけが全てではない」アメリカで適応能力を重視する理由

松浦: アメリカでは、診断は「支援につながるための切符」という考え方が主流です。診断そのものがゴールではなく、その子に合った環境やサポートを整えるスタート地点なんです。だから、診断基準として、その子が実生活でどれだけ自分のことができるか、適応能力はどうかを重視します。りっきー:松浦先生の著書『発達障害を正しく知る』(幻冬舎新書)でも、医学的なIQよりも「適応機能重視」ということが書かれていましたね。松浦:りっきーさんのお話を聞くかぎりだと、日本では知能検査を重視しがちな傾向があるようですが、スコアはその時の集中度や環境で大きく変わります。そもそも5歳以下の子の知能検査の結果は変動が非常に大きく、信頼性が低いため、「極めて」慎重な解釈が求められると考えられます。りっきー: 確かに診断当初、長男のDQ(発達指数)は64でしたが、視覚支援やモンテッソーリ教育を取り入れることで、生活スキルはどんどん身につきました。松浦:まさにそれが適応能力です。知能が高くても低くても、その子が自分らしく生きていける力を育てること、大人になったときに人の手や環境の助けを借りながらも社会の中で生きていけることが目指すべきゴールだと思います。

「グレーゾーン」は日本にしかない俗語!?——誰も幸せにしないカテゴリー

松浦:最近よく聞く「グレーゾーン」という言葉、実は医学的には存在しない、日本にしか存在しない概念なんですよ。りっきー:そうなんですか?松浦:はい。アメリカでは使われません。「診断基準を満たさないけれど特性はある」場合、診断名をつけずに必要な支援を提案します。わざわざ「グレーゾーン」というカテゴリーを作らない。なぜなら、このカテゴリーは誰も幸せにしないから。診断がつかないから手帳ももらえない、学校も「発達障害ではないんですよね」と支援に消極的になる。親も子も宙ぶらりんになってしまうと思いませんか?りっきー:確かに……。「グレー」と言われると、かえって不安になりますよね。松浦:そうなんです。だから、特性があるなら、診断の有無に関わらず必要な支援を届ける——それがあるべき姿だと思います。

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りっきー:グレーゾーンという言葉がよく聞かれるようになった理由は何でしょうか?松浦: 特にグレーゾーンと呼ばれる大人が社会の中で注目されている理由としては、子どもの頃はある程度勉強ができ、環境に適応しているように見えていた人でも、大人になるにつれて仕事内容が複雑化して対応しきれなくなり、隠れていた特性が目立ち始めることにあると思います。その結果、大人になってから「生きづらさ」として自覚されるようになってきている。僕個人の意見なのですが、やはりパソコンが登場して、いろんなタスクが可能になり、臨機応変な対応力が強く重視されるようになったことが関連していると思います。最近だとAIにより単純作業ができるので、複雑な作業が仕事として人に与えられがちですよね。発達障害の人すべてがマルチタスクが苦手というわけではありませんが、ワーキングメモリが低い方は指示されたタスクが頭から抜け落ちやすく、マルチタスクとの相性が悪いのです。

信憑性の薄いSNSの情報よりも公的機関に相談しに行こう

りっきー:パソコンやネットの普及に関して言うと、最近はSNSで発達障害に関して医学的根拠のない情報も流れてきます。なかには、「●●を食べなければ発達障害が治る」といったエビデンスのない投稿もありますよね。松浦:近年の遺伝子研究で、発達障害の50%以上は遺伝的要因だとわかっています。残りの環境要因も、妊娠中や出産時の医学的な要因であって、食事や育児、ワクチンなどは関係ありません。TikTokでADHDに関して発信している情報の半数が正しくなかったというデータもあります(※)。もし、発達について困っていたり不安に思っていたりするなら、自分でネットの情報をあさるより、小児科や精神科の先生や発達支援センターに直接相談しに行くほうが、正確な情報が得られる可能性がずっと高いです。りっきー:私は、大学が主催している保護者も参加できるセミナーなどにも足を運ぶようにしています。信憑性の高い情報を得ることができますから。違和感のある情報については、鵜呑みにしない判断力が今の時代求められているのかなと思いますね。※ TikTok and ADHD - PMC / NIH (Yeung et al., 2022)次回は、学校生活での具体的な困りごと(授業中座っていられない、忘れ物が多い)と、その背景にある脳の特性や家庭でできる具体的なサポートについて深掘りします。取材・文/姫野桂 イラスト/おかやまたかとし

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松浦有佑 PROFILEアメリカ小児科専門医。岐阜県生まれ。岐阜大学医学部卒業後に初期研修を修了し、横須賀米海軍病院に勤務。その後渡米し、ニューヨークのマウントサイナイ大学病院で小児科レジデントを修了。あわせて、ジョンズ・ホプキンス大学大学院にて公衆衛生学修士課程を修了した。現在は、ワシントン大学およびシアトル小児病院にて、小児発達行動医学を専門とするフェローとして、診療および研究に従事している。著書に『発達障害を正しく知る』(幻冬舎)。

発達障害と診断される人は、日本だけでなく世界中で増えて...
発達障害を正しく知る

発達障害と診断される人は、日本だけでなく世界中で増えている。アメリカでは子どもの6人に1人に発達障害があるという調査もある。一方で、「親の育て方のせい」「食事で治る」といった偏見・誤解はいまだ根強い。同じ障害なのに診断名が変わったり、新しい呼び名が次々に生まれたりすることも、当事者の不安を大きくしてきた。発達障害とは何なのか。この分野の先進国であるアメリカで診断・研究に携わる小児科医が、最新の知見にもとづき、発達障害の正しい理解と向き合い方をわかりやすく解説する。

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りっきー PROFILE自閉症スペクトラムとADHDの診断のある13歳長男と、9歳の次男の子育て中。日本モンテッソーリ教育綜合研究所2歳半-6歳コース教師、保育士。プラスモンテ(R)主宰。会社員を12年経験後、長男の発達に悩んだ経験から、子ども・保護者・支援者の3者をつなぐ役割をしたいと考え、教育業界へ転職。その後独立し、モンテッソーリ教室での講師をはじめ、全国各地の講演、保育園・療育施設などで出張研修・オンライン研修等を行っている。現役ママが“編集部の中の人”として情報発信する講談社のメディア「 with class mama」にて、連載「りっきーの凸凹(でこぼこ)道を行こう!」を執筆。著書に『感覚統合×モンテッソーリの視点で伸びる!発達が気になる小学生の学校生活&おうち学習ガイド』(講談社)。

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