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「韓国文化通信」Vol.37 写真家・Pyo Kisik

  • 2026.5.22

今、最も“要注意”すべき韓国カルチャーを牽引するキーパーソンにインタビューし、その変化を定点観測していく本連載。第37回は、漢江(ハンガン)を日々観察し、その肌理(きめ)の美しい一瞬を閉じ込めた写真集『SURFACE OF 漢江』を出版したピョ・キシクさん。

text & edit: Keiko Kamijo / translation & coordination: Hyojeong Choi(KACHI MEDIA) / coordination: Jina Lee (CALLING BOOKS)

「韓国文化通信」Vol.37 写真家・Pyo Kisik
BRUTUS

ユンスルの美しさを写真で追求する

──この写真集は12年撮りためた写真から80点を選び掲載したと書かれていますが、まずはどのようなきっかけで漢江を撮り始めたのでしょうか。

出身地である大邱(テグ)という町からソウルに上京して、映像関係の仕事をしていました。仕事をしつつも写真家として長い時間をかけて撮影する対象を探していたんです。自転車で漢江に行き、人が少ない場所に行ってなにげなくベンチで休憩をしていました。

その時、この一本の木を撮り続けてみようと思いました。そして一冊の写真集を作ったときに、漢江に通い始めました。ソウルってすごく混んでいて、人がいない場所がない。僕はよく自然を被写体にしていますが、それは人混みが苦手という自分の性格にも関わっていると思います。

水面の写真
BRUTUS

──写真を始められたきっかけについてお聞かせください。

写真家を意識したのは、ソウルで映像の仕事をしていた2013年頃です。映像の仕事をしながらも、個人的に撮った写真を雑誌に掲載してもらったりしていました。カルチャー誌『OhBoy! Magazine』という雑誌があって、そこに僕の作品が掲載されたのを見た。

その当時SMエンターテインメントにいたミン・ヒジンさんから、アイドルグループSHINeeのアルバムの写真を撮ってほしいという連絡があったんです。それが『Dream Girl』というアルバムです。その撮影がきっかけで、当時30代半ばくらいだったのですが、商業写真家としてやってみようと決意しました。

──なるほど。ミン・ヒジンさんとの協業によって写真家としての才能が開花したんですね。

そうだったらいいのですが。実は最初は仕事がなかったんです(笑)。当時事務所が
漢南洞(ハンナムドン)にあって、自宅から車で通っていました。朝はラッシュアワーなので、通勤路の江辺北路(カンビョンプクロ)の道路はいつも渋滞がひどくて。動かない車の中で窓の外をボーッと眺めていたら、麻浦大橋の向こうに、漢江の表面が光に照らされてキラキラとした「ユンスル(윤슬)」が見えたんです。

それがすごく印象に残っていて、毎日それを見ているうちに、そのユンスルを自分のものにしたいと思いました。仕事が多くなかったので、ちょっと悲しい気持ちを抱きつつ、漢江に行って撮影をし始めました。

『SURFACE OF 漢江』(LASTzCOPY)
2025年11月に出版された写真集『SURFACE OF 漢江』(LASTzCOPY)。多様な漢江の表情を撮影した。

──写真集を拝見すると、本当に多様な漢江の姿が写し出されています。計画は立てていたのですか?

最初の2年くらいは、時間を決めたりせずにとにかく仕事以外の時間はすべて漢江に行って、撮っていました。通ううちにだんだんと光がきらめく時間がわかってきたので、その後は、一番美しい時間帯を選んで撮影しました。

──写真集を作っていくまでの経緯を教えてください。

この写真集はstudio gominというグラフィックデザイン会社が運営する出版レーベルLASTzCOPYから出版しています。

彼らとは、SMのアーティストのポスター撮影をしたときに出会いました。彼らのスタイルとしては、studio gominで商業的な仕事をし、LASTzCOPYでは売り上げに関係なく、自分たちのクリエイティビティを追求したアートブックを作っています。

彼らの哲学を信頼していたので、制作はすべて任せました。10年以上撮り続けてきた写真だし、思い入れも強かったのですが、やはり他者の視点が必要。当初、僕は大ボリュームで語り尽くす本にしたかったのですが、LASTzCOPYの方は写真の数を大胆に絞り、一枚を大きく見せる構成を提案しました。

惜しい写真は山ほどありましたが、最終的には彼らの審美眼を信じて任せました。セレクトもページ順も。唯一リクエストしたのは、「漢江らしさ」を出すことでした。

──創作のインスピレーションは何からやってくるのでしょうか?

計画をして撮るタイプではなく、様々なところを撮影し、風景から新たな発見をして撮り続けることが多い。中でも花や木、森などの自然と向き合います。最近は春川(チュンジョン)や楊平(ヤンピョン)、忠州(チュンジュ)など、地方に行って撮影しながら次のテーマを探っています。

Pyo Kisikが選ぶ、今の韓国を知る場所

水面の写真
ノウル公園から見る漢江  「漢江が一番魅力的。ソウルから行ける身近な自然としていいと思います。時間帯によって僕の写真集のように美しいユンスルが見える瞬間があります。夕焼け(ノウル=노을)という名の通りとても夕焼けがきれいで、漢江のきらめきも長い時間見えます。一日の終わりにぜひ」

profile

ピョ・キシク(写真家)

商業写真家として広告やファッション、アーティストのポートレート等幅広く活躍。ライフワークとして個人的に漢江の写真を12年撮りため、そこから80点を抜粋した『SURFACE OF 漢江』がある。

Instagram:@pyokisik

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