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スパッと切って味噌汁に入れるだけ…「GW明けのメンタル不調」に効く玉ねぎでもキャベツでもない"丸い野菜"

  • 2026.5.11

心身のちょっとした不調を「五月病かな」と片付けていないだろうか。発酵食品のエキスパート、日本発酵文化協会上席講師の藤本倫子さんは「甘くみないほうがいい。その不調、腸から来ている可能性が高い」と警告する。では、どう対策をしたらいいのか。ライターの笹間聖子さんが聞いた――。

「脳より腸が先に生まれた」

なんとなくだるい、やる気が出ない、眠れない――五月病をはじめ、この時期のメンタル不調は、腸から来ている可能性が高いそうだ。

藤本先生は「そもそも生物には、脳より腸が大事なんです」と断言する。

「生物学的にいうと、脳は腸より後にできたんです。古い生物であるミミズを例に挙げると、彼らには脳みそがありません。でも腸はあるんです」

つまり、腸は脳より古い器官だ。脳ができるまでは腸の中の細胞が餌を「食べられる」と判断し、体を動かしてきたのだ。腸から脳に指令が行っているということだ。脳から腸への一方通行ではない。

「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さん
「日本発酵文化協会」上席講師の藤本倫子さん

「だから脳が死んでも身体は生きていられます。でも腸が死んだら終わりです。腸死って聞かないじゃないですか。それぐらい腸は大事なんですよ」

と藤本先生は畳み掛けた。まるで「あなたはまだ脳だと思っていたんですか」と言わんばかりだ。ちなみに、藤本先生はちょっと辛口で知られている。

「ウンチの色」は腸からのサイン

腸の重要性は分かった。では、腸の乱れがなぜメンタル不調につながるのか。

鍵は「酸」にある。腸の中には、乳酸・酪酸・酢酸といった酸性の物質が常時ある必要がある。これを作るのが、乳酸菌・酪酸菌・酢酸菌といった善玉菌たちだ。

「善玉菌がたくさんいると、腸が酸性に保たれるんですよ。酸性に保っておくと、さまざまな栄養成分の吸収がよくなる。特にミネラルの吸収がよくなります」

カルシウムの吸収もよくなるそうだ。だが、どれだけカルシウムを摂っても、腸がアルカリ性に傾いていると吸収されずに出ていってしまう。

つまり、腸が整っていなければ、どんなに栄養を食べても吸収できない。結果として身体が不安定になり、メンタルに影響が出るのだ。藤本先生によれば、アルツハイマーも、最近の研究で腸内細菌の乱れが関係しているという研究報告があるという。

でも、自分の腸が今アルカリ性なのか酸性なのか、どうやって判断すればいいのか。藤本先生は「うんちの色を見ればいいわよ」ときっぱり。

「黒いほどアルカリ性、明るい色ほど酸性です。リトマス紙と全く一緒の原理で、酸性だと赤くなる、アルカリ性だと黒くなります」

毎日の調味料を「置き換える」だけ

では、腸を酸性に保つために何をすればいいのか。

「難しく考えなくていいです。毎日使う調味料を発酵食品に置き換えるだけ」

なんと、拍子抜けするほどシンプルな答えだった。醤油を醤油麹に、塩を塩麹に、砂糖を甘酒に置き換える方法だ。

「塩麹、醤油麹は菌そのものが摂れるし、麹を使うことで風味がやわらかくなります。量の目安は、醤油麹も塩麹も、醤油・塩と同量でOK。甘酒だけは、砂糖の2倍の量を使ってください」

【調味料の置き換え術】
さ:砂糖→甘酒(2倍)
し:塩→塩麹
す:酢→そのまま(にごり酢があればベター)
せ:醤油→醤油麹
そ:味噌→そのまま

日本の基本調味料「さしすせそ(砂糖、塩、酢、醤油、味噌)」は、砂糖と塩以外、もともと発酵食品だ。砂糖を甘酒に、塩を塩麹に換えるだけで、毎日の食卓が自然と発酵食品ばかりになる。

だがここで一点、気になる疑問が浮かぶ。お酢も置き換えられないのか? たとえば「酢麹」のようなものは作れないのだろうか。

「酢麹はダメなんですよ。酢が麹の酵素を壊してしまうから」

酢麹という発想自体が成立しないのだという。酢は、酢酸菌の入っている「にごり酢」に置き換えるのがベストだそうだ。

コスパ最強の発酵食品とは

塩麹、醤油麹の入手方法にも触れておきたい。

塩麹はスーパーでよく見かけるようになったが、醤油麹は置いていないスーパーもある。その場合、自分で作ることもできる。

麹300gに醤油350ml程度を混ぜ、常温で2週間置くだけだ。塩麹はもっと手軽で、麹100gに対して塩12g、水100ml程度を混ぜ、常温で5日ほど置けば完成する。

どちらも完成の目安は麹が柔らかくなったとき。季節による大きな差はない。

「醤油麹を使うと醤油より味がまろやかになります。パンチが欲しければ普通の醤油を使えばいいし、全体的に優しい味にしたければ醤油麹で」

なお、調味料置き換えのコスパが気になる人には、味噌がいいそうだ。

「一番安く発酵食品を摂れるのは断然味噌。醤油は一日に使う量が少ないし、甘酒は値段が高め。毎日の味噌汁が、実は最強のコスパです」

お椀に入った味噌汁を持つ手
※写真はイメージです
「幸福感」「意欲」を高める

味噌をはじめとする発酵食品を日常的に摂るべき理由は、腸内環境を酸性に保つためだけではない。

「やる気が出ない」「気持ちが落ち込む」

こうした症状に関係するのがセロトニンとドーパミンだ。幸福感や意欲に直結するこれらの神経伝達物質は、実は発酵食品に豊富に含まれている。

「セロトニンはアミノ酸の一種なんですよ。発酵食品にはアミノ酸が豊富に入っているから、基本的には発酵食品を食べていれば摂れます」

ドーパミンの材料となるチロシンも同様だ。「入ってない日本の発酵食品はほぼない」と藤本先生は言い切る。腸内環境を整えるとミネラルの吸収力が上がり、神経の働きが安定する。

腸を整えることは、そのままメンタルを整えることにつながっているのだ。

「メンタルに効く」味噌汁の具材とは

その味噌汁だが、具材と出汁を工夫することで、五月病やメンタル不調への効果を高められるという。

「リラックスしたい、眠りをよくしたいなら、グルタミン酸系の食材を入れてください」

グルタミン酸は神経細胞に伝達する成分で、リラックス効果につながる。グルタミン酸が豊富な食材の代表がトマトと昆布だ。どちらもグルタミン酸を多く含むため、組み合わせると相乗効果が生まれる。

「だから栄養士の間では、トマト味噌汁がかなり人気なんですよ。理にかなっているんです。出汁も昆布系にすると、さらにリラックス効果が高まります」

収穫したてのトマト
※写真はイメージです

一方、鰹節系の出汁はイノシン酸が豊富で、傷の回復や細胞の生まれ変わりを助ける。

「手術後や体にダメージがあるときは鰹節系がいい。同じように傷の回復効果につながる赤味噌や八丁味噌と鰹節の組み合わせが最強です」と藤本先生は力を込めた。なるほど、徳川家康が八丁味噌を陣中食にしていたのは、理にかなっていたわけだ。(【記事を見る】だから徳川家康は「平均寿命の2倍」も長生きした…陣中で「インスタント食品」にしていたスーパーフードの名前)

徳川家康肖像画
徳川家康肖像画〈伝 狩野探幽筆〉(画像=大阪城天守閣蔵/PD-Japan/Wikimedia Commons)

目的に合わせた味噌汁の組み合わせをまとめると、こうなる。

「リラックス・睡眠の質を上げたい」なら、昆布出汁×白味噌×トマト。昆布とトマトのグルタミン酸が神経をなだめ、白味噌のGABAが安心感やリラックス・睡眠の質向上をもたらしてくれる。

「体のダメージを回復したい」なら、鰹節出汁×赤味噌(八丁味噌)。イノシン酸が細胞の生まれ変わりを助け、赤味噌のアミノ酸が傷ついた組織の修復をサポートする。

毎朝の味噌汁を、その日の体調で選ぶ。それだけで、食卓が「薬」になる。

【味噌汁の選び方】
「リラックス・睡眠の質を上げたい」→昆布出汁×白味噌×トマト
「体のダメージを回復したい」→鰹節出汁×赤味噌(八丁味噌)

4週間で効果がなければ一旦やめていい

「調味料を置き換える生活」を続けると、どのような変化が起こるのか。

藤本先生が始めたのは30代、今から15年ほど前のことだったという。20代は発酵食品など気にしない生活をしていたが、体に不調が出始めたことがきっかけだった。

「ニキビがひどくて、1年間皮膚科に通っても全然治らなかったんですよ。それが今は全然出ない。それと、二週間便秘とか当たり前だったんですけど、完全になくなりました」

メンタルへの変化はどうか。「もともとメンタルが強いので」と笑いながら、こう続けた。

「発酵食品の効果は、やめた時に気づくものだと思います。1カ月続けてあまり変わらないと思ってやめた時に、『あ、眠れない』『なんか寝起きが悪い』『なんとなく体が重い』と気づく。そういうものです」

続けても大きな変化を感じなかった場合は、体に合わないと判断してやめていい、とのこと。「どんな発酵食品も、大体4週間で変化が出るかどうかは分かります。何も感じなかったら自分には合わないんだな、と思って」

おなかを押さえている女性
※写真はイメージです
置き換えは、今日からできる

新年度からムチを打ってきた身体も心も疲れが出やすいこの時期。難しいことはひとつもない。砂糖を甘酒に、塩を塩麹に、醤油を醤油麹に。いつもの料理の調味料を変えるだけだ。

ちなみに発酵食品業界は今、米価高騰と大豆の不作が重なり、麹も味噌も原材料が厳しい状況にある。「高くなりすぎちゃってて、業界は今そっちで頭がいっぱい」と藤本先生は苦笑いした。

近所のスーパーで、もし塩麹や醤油麹、甘酒が高いと感じたら、まずは白味噌とトマトの味噌汁から始めてみてはいかがだろうか。

「腸が整うと、まず便の色が変わります。明るくなってきたら、ちゃんと腸が酸性に保たれているサイン。そこから少しずつ、体が変わっていきますよ」

笹間 聖子(ささま・せいこ)
フリーライター、編集者
おもなジャンルは「ホテル」「ビジネス」「発酵」「幼児教育」。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で17年執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。編集者としては、発酵食品メーカーの会員誌を10年以上担当し、多彩な発酵食品を取材した経験を持つ。「東洋経済オンライン」「月刊ホテレス」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆中。大阪在住。

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