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「いびき」を放置すると最悪の場合、死に至る…耳鼻科医が「今夜、確認して」と呼びかける"理想的な枕の高さ"

  • 2026.5.3

良質な睡眠をとるには、どうすればいいのか。耳鼻咽喉科医の木村至信さんは「慢性的ないびきを放置すると、命を落とすことが十分にあり得る。病院を受診して適切な治療を受けてほしいが、まずは今夜、5つの対策を試してみてほしい」という――。(第3回)

※本稿は、木村至信『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。

ベッドで仰向けに寝ている男性
※写真はイメージです
「いびき」は改善できる

私のクリニックでは、しばしば「いびき」について相談を受けます。いびきは自分ではコントロールできないことですが、家族から「うるさい」「別の部屋で寝て」などと言われて悩んでいる方が少なくありません。

いびきのせいで、朝起きたときに口の中が乾いていることもあります。そのせいで朝の口臭がきつくなったり、虫歯が増えたりすることもあります。

いびきは、眠っているときに鼻や喉が発する呼吸の雑音です。睡眠中は重力のせいで舌の根元が下方に落ちて、上気道(鼻腔から喉のあたりまでの、空気の通り道)が狭くなります。狭くなったところを空気が通るので、周囲の組織が振動していびきが起こるのです。トンネルの中でゴオッという音がするのと同じです。「寝息」がうるさくなったものともいえます。

【図表】気道
出典=『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)

それでも、たんなる「単純性いびき」であれば、あまり心配しなくてもいいでしょう。単純性いびきというのは、風邪、疲労、飲酒、鼻づまりなどが原因で、一時的に起こるいびきです。原因である鼻づまりや疲労、風邪などが緩和されたり、飲酒の量を控えたりすれば治まります。

それ以外の原因には、鼻中隔彎曲症(鼻の真ん中の仕切りが曲がっている)、肥厚性鼻炎(鼻の粘膜が慢性的な炎症で厚くなっていて、鼻腔が狭い)、鼻茸はなたけ(鼻の良性ポリープ)、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、習慣性扁桃炎、慢性咽頭炎、アデノイド肥大が多く、それぞれの病気を治療すればいびきは改善します。

軽視はNG、スマホアプリで測定できる

心配しすぎることはありませんが、いびきは軽視しないほうがいいでしょう。

いびきがひどくなると睡眠の質が落ちるからです。後述しますが、いびきは睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれず、生命に関わることがあります。本人に自覚がなくても、家族としていびきに気づいたら、耳鼻科に行って検査を受けてもらうようにすすめてほしいと思います。

私はパートナーがいびきをかくと、「こんなに疲れるほど頑張っているんだな」と思うのですが、大事な人が長生きして充実した人生を歩めるように、本人が傷つかない言葉とトーンで、「いびきかいてるよ、大丈夫?」と声をかけます。

自分がどれくらいいびきをかいているのか、身近な人に聞けなければ、スマートフォンのアプリを利用しましょう。いびきを記録・測定し、問題点や解決策を提示してくれます。無料のアプリは精度が落ちますが、とりあえず自分のいびきの状態は把握できます。

なお、中年の女性のいびきは閉経とも関係しています。

女性が更年期に差しかかると、急激に女性ホルモン量が減少します。すると、上気道の開きを維持しようとする筋肉の働きが悪くなります。上気道が狭くなれば、どうしてもいびきが出ます。更年期でいびきが出る方は、耳鼻科や婦人科に相談するといいでしょう。

今夜からできる5つの対策

いびきをかく方は、日常生活で次のことを心がけてください。

▼肥満の人は減量する

肥満を解消するだけでも、いびきは軽くなります。肥満でなくても首回りの太い方は、顎から首にかけてリンパを流すマッサージを毎日してみてください。

▼横向きに寝る

仰向けに寝ると重力のせいで舌が下がり、気道が塞がりやすくなります。横向きで寝れば気道は塞がりません。抱き枕を使うと、横向きに寝やすくなります。

▼寝酒はやめる

お酒は喉の筋肉をゆるめ、上気道を塞ぎやすくするので、寝る直前の飲酒はやめましょう。

▼寝室の湿度を保つ

いびきをかくと口呼吸になり、喉が乾燥し、埃が侵入すると炎症の原因になります。炎症で気道が狭くなり、さらにいびきをかくという悪循環が生じます。冬は加湿器を使うなど、寝室が乾燥しすぎないように気をつけてください。

▼枕を見直す

理想的な枕の高さは、視線が真上よりも少し斜め下(足側)を向く程度です。枕の高さが合わないと、喉の脂肪で上気道が圧迫されることがあります。首が浮かないように、枕の下の縁が肩に当たる位置で使いましょう。


・OK→視線は少し斜め下。首が浮かない、枕の下の縁が肩に当たる位置。

・NG→喉の部分にシワ。頭が下がり喉の部分が伸びている。

【図表】理想的な枕の高さ
出典=『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)
市販の対策グッズの効果は疑問

いびきをかいているときは鼻の通りが悪く、口呼吸になっています。つまり、鼻づまりを解消することが、いびき治療の大前提です。

口を開かないようにする「口閉じテープ」や、鼻腔を拡げて鼻通りをスッキリさせる「鼻腔拡張テープ」などが市販されていますが、医学的な効果は疑問です。

いびきに効く点鼻薬も薬局で売られています。ですが、注意してください。「血管収縮剤」が入った点鼻薬は、長期間使っていると副作用で鼻の粘膜が腫れて、逆に鼻が詰まってしまう副作用があるので、医師は推奨していません。

いびきが気になる方は、ご自分の鼻の中がどうなっているのか、まずは耳鼻咽喉科で調べてもらいましょう。

クリニックでは、鼻づまりを取るアレルギー性鼻炎の内服薬が処方されます。それを寝る前に飲むのは効果的です。ジェネリック薬品にすれば、毎日100円前後ですみます。ただし、最大投与日数が決められているので、月に1回はクリニックに行く必要があります。

炭酸ガスレーザーで鼻の詰まりを取る日帰り手術もあります。保険が適用され、両鼻で1万5000円前後。3回ぐらいの通院で終了し、私のクリニックでは最低3年間は効果が持続します。

最悪の場合、命を落とす「睡眠時無呼吸症候群」

単純性いびきを放置していると、「睡眠時無呼吸症候群」の原因になることがあります。

睡眠時無呼吸症候群は、呼吸が停止したり(無呼吸)、止まりかけたり(低呼吸)することが、睡眠中に何度も繰り返される病気です。呼吸が止まるたびに脳が覚醒するので眠りが浅くなり、起床時の頭痛、日中の強い眠気や疲労感、集中力・記憶力の低下などが起こり、夜間頻尿も生じます。これは睡眠障害です。

原因は、単純性いびきを放置していたことのほかに、「肥満で、首回りの脂肪が多すぎて気道が狭いこと」「扁桃腺肥大があること」「アデノイドがあること」「舌が大きくて、気道へ舌が落ち込むこと」「鼻が曲がっていること」「顎が小さいこと」などがあります。

無呼吸を伴ういびきなら、毎晩かなりの騒音を発しているはずです。放置しておくとますます悪化し、日中の眠気が原因の居眠り運転や労働災害のリスクもあります。そこまでいかなくても、確実に仕事のパフォーマンスが落ちます。やがて高血圧などの生活習慣病になり、下手をすると命を落とすこともありえます。

逆に言えば、ちゃんと治療すれば、いびきがなくなるだけでなく、仕事での評価を上げ、自分の命を救うことになるかもしれません。

CPAPは有効だが、まずは病院へ

鼻づまりがないのにいびきが大きい場合や、鼻づまりを解消してもいびきがなくならない場合には、睡眠時無呼吸症候群の検査をしましょう。アプノモニターという機械を使えば自宅で簡易検査ができますが、重度だと判明すれば入院検査が必要になります。

中等度以上の睡眠時無呼吸症候群には、鼻に強制的に空気を送り込む「CPAP(持続陽圧呼吸療法)」が有効です。CPAPとは、寝るときに専用のマスクを着けて、軽い圧力をかけた空気をチューブを通して気道へ送る装置です。気道が開いた状態を維持できるので、無呼吸や低呼吸を防ぎます。

木村至信『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)
木村至信『1万人の鼻の悩みを解決した医師が教える 鼻炎のリセット法』(アスコム)

有効な治療法ですが、CPAPは万能ではありません。

まず、慣れるまでなかなか寝つけない方が多いのです。また、CPAPを使った方の多くが鼻づまりになります。CPAPは無呼吸を防ぎ、酸素が全身に届くという効果はあるのですが、普通に吸う10倍もの濃度の酸素が自動的に休みなく入ってくるので、口の中も、鼻の粘膜も乾きます。だから鼻が詰まり、おまけに痰も出てしまうのです。

CPAPを使うなら、加温加湿器を使って鼻粘膜の乾燥を防ぎましょう。CPAPを使っていて鼻づまりなどの症状が出た方には、私は痰を切り、鼻づまりを解消するために、ステロイド系点鼻薬を処方します。外科手術もありますが、効果はさまざまなので、あまりおすすめしません。

いびきに悩む方は、ぜひ一度耳鼻咽喉科を受診してみてください。適切な治療を受ければ、スッキリ目覚められるようになります。

(参考文献)
・『耳鼻咽喉科・頭頸部外科 76巻 5号』(2004年4月発行)「鼻アレルギーがいびき,睡眠時無呼吸の病態に及ぼす影響」(宮崎総一郎、内田亮)pp.119-122
・『看護管理 34巻 9号』(医学書院)岡靖哲「いびきと睡眠時無呼吸」pp.812-816

木村 至信(きむら・しのぶ)
耳鼻咽喉科医
医学博士、耳鼻咽喉科、頭頚部外科。専門は音声学・癌・難聴遺伝子。信州大学病院に勤務後、難聴遺伝子、遺伝子解析研究のスペシャリストとして厚生省で研究に携わり、米国ネブラスカ州国立リサーチ病院に留学、研究を続ける。大学病院での高度医療、癌センターでのオペ研修など医療のトップレベルで15年以上勤務。横浜市大医学部にて医学博士を取得。現在、横浜市内のクリニックで地域密着の診療に従事。著書に『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』(アスコム)がある。

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