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倒れた父の意思が聞けないまま「生きる」と「生かす」の間で揺れる選択…「延命措置」に向き合った娘の本音【作者に聞く】

  • 2026.4.28
延命措置をすれば助かる可能性も
延命措置をすれば助かる可能性も"植物状態になる可能性もある"…。そんな決断を私がしていいの…? 作=キクチ

右耳難聴や子宮内膜症など、自身の体験をもとにした漫画を発信しているキクチ(@kkc_ayn)さん。母の在宅介護と看取りを描いた「20代、親を看取る。」で注目を集め、2023年に書籍化された。本作「父が全裸で倒れてた。」は、母を見送ってから約2年後、今度は父が倒れたことをきっかけに始まる物語である。介護経験があるとはいえ、一人っ子として頼れる家族がいない中、数々の決断を迫られる日々が描かれている。今回は、その中でも「延命措置」という重い選択に向き合ったエピソードを紹介する。

延命措置をめぐる突然の意思確認

「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
「父が全裸で倒れてた。」カバー 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-1 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ
第1話1-2 作=キクチ

病院からの電話で「延命措置をどうするか」と問われたキクチさんは、父本人の意思を確認できないまま判断を迫られる状況に直面する。過去に父と交わした会話は思い出せるものの、それを根拠に決断することの重さは計り知れない。

「まず、延命措置が何なのか全くわからないですよね。延命=生きるってことだから、そりゃ生きてほしい。でも医師と電話で話していくうちに、延命措置というのは『生きる』というよりは『生かす』に近いのかもと感じ始めました」と語るように、“生きる”と“生かす”の違いに戸惑いながらも考え続けることになった。

センシティブな言葉と現場の温度差

「植物状態」や「医療殺人」といった言葉が並ぶ中での意思確認は、受け手にとって非常に重いものである。一方で医療現場では日常的な確認事項でもあり、その温度差に複雑な思いを抱いたという。

「そもそも、『延命についての意思』を電話や書面でサラッと確認されることが驚きでした」「『とりあえずで良いんで』みたいな軽いテンションで答えを催促されてしまって…そんな簡単なことなのかと病院側との温度差を感じました」と振り返る。

ただし、急変の可能性がある以上、即答を求められる事情も理解しており、「『返事は1週間にします』が通らない世界なんですよね」と、その現実も受け止めていた。

母の看取りで得た価値観が導いた答え

一度は「助かる見込みがあれば助けてほしい」と伝えたものの、その後も複数回にわたり意思確認が続いたという。最終的な判断に影響を与えたのは、母を在宅介護していたときの医師の言葉だった。

「『身体が何も食べたくないって言ってるってことは、それが自然な状態なんです。そんな状態の患者さんに、胃ろうや点滴をすることは、苦痛になることもあるんですよ』」。この言葉に「苦しまないで亡くなることが一番だなと、すとんとハマった」と語り、最終的には「延命措置はしない」という選択に至った。

一人で決断する重さと後悔

最終的な合意に至ったものの、「それでも、一人で決めるのは責任が重いです」と振り返るキクチさん。事前に家族で話し合っておくべきだったという思いも残ったという。誰もが直面しうる「延命措置」というテーマに対し、正解のない中で向き合い続けた経験が描かれている。

重いテーマを扱いながらも、淡々とした語り口の中に時折ユーモアを織り交ぜるキクチさんの作品は、多くの読者に考えるきっかけを与えている。今後の展開にも注目したい。

取材協力:キクチ(@kkc_ayn)

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