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【残間里江子さん・76歳】ひとり黙々と一万歩歩くより 「人とわいわい」がフレイルを遠ざけます

  • 2026.4.12

【残間里江子さん・76歳】ひとり黙々と一万歩歩くより 「人とわいわい」がフレイルを遠ざけます

フレイル予防で重要な要素のひとつといわれる「人とのつながり」。栄養や運動以外になぜ「社会性」がフレイルと関係するのか? 大人のネットワークづくりを16年前から積極的に進めてきた残間里江子さんに社会との関わりの大切さを聞きました。

Profile
残間里江子さん プロデューサー、クラブ・ウィルビー代表

ざんま・りえこ●1950年生まれ。
アナウンサー、編集者などを経て80年に企画制作会社を設立。
雑誌『Free』編集長、出版、映像、文化イベントなどを多数企画・開催。
2009年に「新しい日本の大人文化」の創造を目指し、会員制ネットワーク「クラブ・ウィルビー」を設立。
www.club-willbe.jp ☎03-3400-2233 ※入会金、年会費なし

新しい大人世代のつながりを求めて

2025年12月、東京・赤坂のサントリーホール(小ホール)で、あるコンサートが開催された。「ウィルビー混声合唱団」の定期公演だ。

「6回目の定期公演で、おかげさまで満員御礼でした」と話すのは、クラブ・ウィルビー代表の残間里江子さん。クラブ・ウィルビーは09年、残間さんが58歳のときに設立した大人世代向けの会員制ネットワーク。混声合唱団の他、実践健康セミナー、オンラインカフェなどの活動を行う。

当時、まだ珍しかった大人向けのコミュニティを立ち上げたきっかけは何だったのだろう。

「還暦を目前にして、自分が社会から『終わった』という目で見られていると感じたんです。当時は特に女性に対して、ある種の年齢的偏見がありました。『その年齢ならこれはもう無理ですね』という無言の空気が」

残間さんは1950年生まれ。

「団塊世代のしっぽのほうです。年間約270万人が生まれていました。その人たちが60を過ぎると『ハイ終わり』と言われてしまう。まだ元気なのに。私はそんなのいやだけどみんなはいやじゃないの?と思ったんです」

人口の多い団塊世代は、消費行動でも重要な位置を占め、世の中への影響力が大きかった。

「私たちの世代が変われば世の中も変わって、次に続く世代がもっと生きやすくなるんじゃないかと思いました。特に家庭に縛られざるを得なかった女性が、誰々の妻、母という役割から解放されて、ひとりの人間としての自分を取り戻すチャンスになるのでは、と」

クラブ・ウィルビーは、いつまでも社会とつながりをもち続ける生き方を、というスローガンを掲げてスタートした。

「好奇心を刺激するものをつくりますのでご一緒に、と。でも、みんなが一緒に踏み出してくれるか、おそるおそるでした」

合唱団の定期公演

昨年12月、サントリーホールのブルーローズ(小ホール)で行われた「ウィルビー混声合唱団」の定期公演。

60歳過ぎからの新しい仲間づくりの場

それから、あっという間の16年だった。

「こんなに長く続けるつもりはなかったんです。でも、会員が増え続けているので、やめるにやめられない(笑)」

現在、全国に1万5000人以上の会員がいる。

「集うことで皆、すごく元気になっています。私も仲間たちに日々励まされています」

混声合唱団には40代から80代まで約70人が所属している。

「声を出していることもあって、みんな元気。レッスンのあとに居酒屋で一杯やるのも大事なひとときになっているようです」

月に2回ずつ、3カ月が1コースで、入るのも出るのも自由。

「互いにいい距離感で新しい友情を育んでいます。血縁や地縁のない人と人生の途中から友達になるというのもいいものです。自分のことを知りすぎている昔からの友達や、わずらわしい近所づき合いとは違う新しい人間関係を築けます」

配偶者を亡くしたある男性は、「子どもたちに、自分が家に引き込もることを恐れられている」と感じ、偶然知ったクラブ・ウィルビーに参加した。

「なかなか外に出にくい女性や、仕事を退職した男性たちが参加できる、それまで所属していた場所とは違うコミュニティをつくれたらと思ったんです」

人と関わるほどに棺桶が遠ざかる

定期的に開催している実践健康セミナーで昨年、東京大学高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センター教授の飯島勝矢さんが「フレイル」についての講演をした。

「そのとき、飯島さんは『社会とのつながりを失うことがフレイルの入り口になる』と話されました」

フレイルとは健康と要介護の間の状態。早めに対策をすれば健康に戻れる段階だ。社会性(人とのつながり)の低下が引き金となって心身の衰えが加速する、といわれる。

「飯島さんによると、運動や栄養も大事。だけどひとりで黙々とたんぱく質をとって、修行僧のように苦虫をかみつぶした顔でウォーキングしてもダメですよ、と。もちろん、体には悪くないけど、フレイルにはプラスになっていないそうです。みんなとわいわいコミュニケーションを取る、社会とのつながりのほうが何倍も大事なんだとか」

そうは言っても、大人になってからの新しい人間関係の構築は意外と難しい。

「元気で長生きしたかったら、人と関わるのがわずらわしいなどと言っていてはダメ。それは棺桶へ一歩近づくことです」

手厳しいひと言が飛んできた。

「私の見る限り、会社で偉くなった人ほど、新しい人間関係をつくるのが苦手です」

残間さんのまわりに多い退職男性の一例を挙げると……。

「出版社で編集長をしていたある男性は、60代の頃、趣味で楽器の演奏を始め、小さなホールで演奏会を開いたりしていました。最初は家族や友達も観に来たけど、その後、レパートリーも増えず、3年目くらいになると周りも期待しなくなって、70歳頃にはやめてしまった。その後は家に引き込もって保護猫を抱っこしながら本を読む生活に。誰に本の感想を言うでもなく、『なるほど、これはこうだな』と勝手に分析するだけ。『読書会に行けば』とすすめても、『本をつくっていた人間がそんなところには行けない』と拒否。しかも好きなジャンルの本しか読まない。こういう人はフレイルになりやすいと思います」

プライドがじゃまをして、友達をつくれないのだ。

「男性には部長とか取締役といった職位に退職後も呪縛される人が多い。でも、俺はすごいんだと思っていた人が、クラブ・ウィルビーに入ったら、もっとすごい人がいて、本当に能ある鷹は爪を隠すものだと知り、はっとわれに返ったという例もあります。それも人と交わればこそ。誰とも会わなければ何にも気づかないわけです」

実践健康セミナー

2025年、実践健康セミナーで行われた、フレイル研究の第一人者、東京大学教授の飯島勝矢さんの講演。そこでは「社会とのつながり」の重要性が語られた。

話が面白い人は仲間をつくりやすい

それに比べて、女性はもっと柔軟だという。

「結婚した人もしていない人も、子どもがいる人もいない人も、介護している人もしていない人も、病気がある人もない人も、感覚的にかぎ分けて共通項を結びつけ、自分と異なる領域には立ち入らないようにする。クラブ・ウィルビーに入ってくる人は、それができる人が多いです。それぞれがいろいろ抱えているけど、それはそれとして、元気でいられる間は少しでもいい形で豊かに過ごしたい、と」

そんな中でも、上手に新しい人間関係をつくれる人にはある特徴がある。
「コミュニケーションが豊かな人です」と残間さん。それはずばり、話が面白い人だ。

「友人たちには、できるだけ初対面の人と話すことをすすめています。近所の人との『今日は暖かいですね』といった日常的な会話もいいけど、それだけじゃなくて、異なる分野や年齢の人と一つの会話が完結する場をつくることは大事です」

いつも同じ人と同じような話ばかりしていると、話はどんどん陳腐になっていく。

コロナ禍に外出の機会が減り、その後も体調や年齢を理由に、外出を面倒がる高齢者が増えた。

「先日、何十年もつき合いのある女友達に久しぶりに会ったら、話がつまらなくてびっくり。昔は面白い話をする人だったのに。エピソードがないんです。聞きかじった話でも、自分の体験や意見が重なればひとつのエピソードになるけど、何とかって何とからしいね、というところで話が終わってしまう」

会話の速度が落ち、だらだらしゃべるようになるのも要注意、と残間さんは指摘する。

「情報量が減り、語彙も乏しくなって常套句のような決まり文句が出てくるようになるんです。話の帰着点がいつも『本当に頭に来ちゃう』か『仕方ないよね』という怒りかあきらめのどちらか。怒るのはいいけれど、まわりとも『本当にそうだよね』と共有できて、『もう少しこうしないとね』というところまでいかないと話は面白くない」

限りある時間だから、会うなら楽しくて自分を豊かにしてくれる人がいい。電話やメールがだらだらと要領を得ないと、だんだんと人が離れていく。

「仲がよかった人とは、これからもつき合っていきたいから、話が面白くないと感じたら、最近は本人に言うようにしています。言い方は難しいけど、内容についてより、まず『話のスピードがすごく落ちているよ。もう少し早く話したほうがいいんじゃない?』とか『同じ単語ばかり使わないほうがいいよ』と」

残間さんは昨年11月に「トークサロン」と題したイベントを行った。隈研吾さんや栗原はるみさんらの有識者10人余りが3日間にわたってセッション形式で登壇。あえて80人の小さなサロンで開催したその会には遠方からも会員が集まった。

「私自身も同じような人と同じような話ばかりしているんじゃないか?と自戒を込め、もう一度、原点に立ち返っていろんな人の話をちゃんと聞いてみようと思ったんです」

フレイル予防には「心が動くこと」が大事、と残間さん。

「心も体も動くことが生きている証しだと思うんです。元気なうちは多くの人と交わって、楽しいだけじゃなく腹が立ったり憤ったり、いろんな感情が生まれたほうがいい。人の心は人と関わることで最も動きます。フレイルを遠ざけるには、人とのつながりこそが大事なんです」

クラブ・ウィルビーのオンラインカフェには、全国から多くの人が参加する。外出が困難になっても、文明の利器を活用してフレイルを予防しない手はない。

トークサロン

2025年11月に東京・広尾で開催されたトークサロンのひとコマ。建築家の隈研吾さんと社会学者の古市憲寿さんのセッションなど6セッションを少人数で聴く贅沢な会。

撮影/佐山裕子(主婦の友社)
取材・文/依田邦代

※この記事は「ゆうゆう」2026年5月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

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