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『歩くたびに臓器が飛び出す…』“謎の症状”に悩む60代女性→数年前から、身体に起きていた“違和感”に「早く相談すればよかった」

  • 2026.7.6
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさんこんにちは、日々様々な症状にお悩みの患者さまと向き合う麻酔科専門医の松岡です。

「入浴中に股の間にピンポン玉のようなものが触れる。恥ずかしくて誰にも相談できない」。そうやって一人で悩み、市販の尿漏れパッドでやり過ごしていたCさん(60代女性)。

しかし数年後、全く改善しない症状に悩む彼女を待っていたのは、歩くたびに飛び出した臓器が下着に擦れて出血し、大好きな旅行や孫との外出すら諦めざるを得ないというつらい現実でした。身近な友人が同じ症状で悩んでいたことを知り、婦人科を受診。手術をすることで症状は大きく改善し、「早く相談すればよかった」と安心した日々を送っています。

なぜ、「少しの違和感」がこれほどの代償につながったのでしょうか。何が起きていたのか解説しましょう。

出産と加齢が招く「骨盤のハンモック」へのダメージ

なぜ、自分の臓器が体外へ落ちてくるという恐ろしい事態が起きるのでしょうか。これは医学的には、「骨盤臓器脱」という病気で、以下のような物理的な構造のトラブルによって進行します。

  1. 支持の喪失:骨盤の底で子宮や膀胱、直腸はハンモックのように筋肉(骨盤底筋群)や靭帯、結合組織によって本来支えられています。しかし、出産時や加齢によってダメージを受けたり、弱く引き伸ばされたりしてしまいます。
  2. 臓器の下垂:ハンモックの支えを失った骨盤内の臓器は、ちょうどハンモックがたるんで沈み込むように、重力や腹圧に耐えきれず、膣に向かって下方に落ちてきます。
  3. 体外への脱出:進行すると、下垂した臓器が膣の壁を押し下げたり、最終的に膣の入り口を越えて体外へと完全に飛び出したりしてしまうのです。

「恥ずかしいから我慢しよう」という心理と、隠れた危険因子

「命に関わる病気ではないから、もう少し我慢しよう」「デリケートな部分の診察を受けるのはどうしても恥ずかしい」。デリケートな不調を一人で耐え忍んでしまうのは、人間としてごく自然な心理です。恥ずかしさから病院を敬遠し、つい自分を後回しにしてしまうご自身の遠慮や油断を、責める必要はありません。

しかし、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
骨盤臓器脱は、過去に経腟分娩(特に長時間の分娩や大きな赤ちゃんの出産)を経験した女性であれば、誰にでも起こり得る一般的な症状であるということです。

また、「治療可能な物理的構造の破綻」であることも知っておいてください。
慢性的な便秘でトイレのたびに強くいきむ習慣や、肥満、加齢などが重なると、骨盤底へのダメージは加速します。恐ろしいのは、羞恥心から長期間放置してしまうことで、臓器が擦れて出血や感染を起こしたり、尿が出なくなってしまったりするケースがあることです。重症化して制限だらけの生活になり、女性としてのQOL(生活の質)や尊厳を低下させてしまうことがないようにしましょう。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

骨盤臓器脱は、初期であれば骨盤底筋体操やペッサリーという専用のリングを用いた保存的治療で進行を防ぐことも可能です。症状が進行し、手術が必要になる前に、以下の3つのサインをご自身で確認してください。

1. 股の間に「ピンポン玉のようなものが触れる・挟まっている感覚」がある

臓器が膣の入り口まで下がってきている直接的なサインです。

2. 夕方や長く歩いた後に「下腹部が重く引っ張られるような痛みや圧迫感」がある

重力によって臓器が下垂している証拠です。横になると症状が消える・楽になるのが特徴です。

3. 「尿や便が出しきれない(残尿感・便秘)」

下がった臓器によって尿道や腸が圧迫され、排泄機能に物理的な障害が出始めている危険なサインです。

受診のタイミングを逃さず、快適な日々を送りましょう

「デリケートな部分の病気で病院に行くなんて、どうしても気が進まない」。そうやって一人で抱え込み、受診をためらってしまうお気持ちは痛いほどよくわかります。恥ずかしくて隠してしまうのは当たり前です。

まずは「入浴中に股の間に何か触れたら、泌尿器科や婦人科の受診を検討する」と覚えておいてください。医療はいつもあなたの味方です。ぜひお気軽に日々の健康上のトラブルについてご相談ください。


 

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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