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「割り勘にするのは格好悪い」彼女とのデート代を払い続け…→3年半後、30代男性を待っていた“悲惨な結末”【元銀行員は見た】

  • 2026.5.6
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「最初は、夜中でも駅前のATMからパッとお金が出てくるのが、たまらなく便利に感じたんです。自分の銀行口座の残高が、知らない間にグンと増えたような……そんな根拠のない無敵感がありました」

そう力なく語るのは、都内の中堅商社に勤める32歳のAさん(仮名)です。彼の財布を預かってみると、そこには5枚のカードが重く収まっていました。内訳は、大手消費者金融のローンカードが3枚、そして普段の買い物でも使っているクレジットカードが2枚。恐ろしいのは、そのクレジットカードも本来のショッピング機能ではなく、金利の高い「キャッシング枠」が天井まで使い切られていたことです。

年収の15倍に膨らんだ「詰み」の現状

合計の借入残高は約320万円。

額面年収400万円の彼にとって、これは手取り月収の約15倍に相当します。金融の実務経験がある者から見れば、すでに自力更生が不可能な、明らかな「詰み」の状態でした。

彼がここまで追い詰められた最大の原因は、「カードの限度額」を「自分のお金」だと激しく誤認してしまったことにあります。

消費者金融やクレカのキャッシング金利は、概ね年率15.0%から18.0%。

仮に10万円を借りれば、1ヶ月の利息だけで約1,500円が元金とは別に発生します。これを320万円分、5社に分散して積み上げていくと、利息の支払いだけで毎月4万8,000円から5万円という大金が、文字通り「ドブに捨てる」ように消えていく計算です。

始まりは「男としての小さな見栄」から

借金の始まりは、驚くほど些細で、どこにでもあるような動機でした。当時、彼には遠距離恋愛中の彼女がおり、週末ごとに利用する新幹線代や、たまのデートで奮発するホテル代、少し背伸びをしたイタリアンのディナー代。

Aさんは「男として、割り勘にするのは格好悪いと思ってしまった」と振り返ります。そんな“若さゆえの小さな見栄”が、ATMで現金を引き出すことへの心理的ハードルを、音を立てずに下げていきました。

やがて、自分の給料だけでは返済が追いつかなくなると、彼は「返済日を乗り切るために、別の場所から借りる」という禁断のフェーズへと移行します。

「返済日の朝、A社のクレカで3万円を下ろし、その足で隣にあるB社のATMへ向かって返済に充てる。その帰りに、手元に残った数千円で牛丼を食べたり、ビールを買ったりするんです。その瞬間の解放感といったら……」

1,000円単位の利息や、数百円のATM利用手数料が、麻痺した彼の感覚の中では「誤差」のようにしか感じられなくなっていました。自転車を漕ぐスピードを上げなければ転んでしまうように、借金で借金を返す行為は、止まった瞬間にすべてが崩壊することを意味します。

崩壊した生活と「自己破産」という結末

相談に訪れた時点で、利息の支払いだけで月収の半分近くが消え、家賃や光熱費の支払いも3ヶ月以上滞っていました。

「もう、何のために毎日満員電車に乗って働いているのか、全く分からなくなった」。

そう呟いた彼の目には、生気が全く宿っていませんでした。結局、彼は弁護士を通じた自己破産という、最も重い法的整理を選択することになりました。

ATMの「利用可能額」は人生の危険信号

振り返れば、3年半という長い月日をかけて彼が必死に漕ぎ続けた自転車操業は、生活を立て直すための時間ではなく、ただただ「借金を雪だるま式に膨らませるためだけ」の無益な時間でした。

金融の現場で私たちが繰り返し目にするのは、「少額だから」「今月だけだから」という小さな妥協の積み重ねが、やがてその人の貴重な若い時間と、何より大切な自尊心を根こそぎ奪い去っていく残酷な現実です。

ATMの画面に表示される「利用可能額」が、自分の財布の残高に見え始めたとき。それは、人生における最大級の危険信号が点灯している瞬間に他ならないのです。


ライター:CF_SOU

元メガバンク勤務。30年以上の金融業界経験を持ち、現在は証券アナリスト、簿記2級の知識を活かして、現場視点での金融コラムを執筆中。融資審査や債権回収の現場で培った「お金の裏側」を伝えます。