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「平屋なら安心」大手で購入も…10年後、40代夫妻4人暮らしを襲った“思わぬ盲点”【一級建築士が解説】

  • 2026.4.20
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「平屋なら、家族の気配が感じられて安心ですよね」

そう語るのは大手ハウスメーカーで平屋を建てたSさん(40代女性・夫婦+子ども2人の4人暮らし)。

ワンフロアで暮らせる平屋は、移動がラクで、家族の様子も分かりやすく、子育てしやすそうに見える住まいです。実際、小さい子どもがいる時期には、目が届きやすく、声も届きやすいという安心感があります。

ただ、この“距離の近さ”は、子どもが成長するにつれて別の意味を持ち始めることがあります。Sさん一家も、お子さんが10歳を迎えた現在、頭を悩ませているそうです。

幼いうちはメリットだったはずの間取りが、思春期以降には「気配が近すぎる」「落ち着ける場所がない」と感じる原因になることがあるのです。

家族の気配が良くも悪くも伝わりやすい

平屋は上下階で生活を分けられません。2階建てなら、子ども部屋を2階、LDKを1階にして、ある程度距離をつくることができますが、平屋では家族全員が同じ階で過ごします。

そのため、次のような特徴が出やすくなります。

  • 話し声が聞こえやすい
  • テレビや生活音が伝わりやすい
  • 誰がどこにいるか分かりやすい
  • 部屋の出入りや生活リズムが見えやすい

小さいうちはこれが安心につながりますが、成長して一人の時間を大切にしたくなると、近さそのものが負担になることがあります。

10歳に成長すると、“見守りやすさ”が“干渉のしやすさ”に変わる

子どもが小さいうちは、親の目が届くことは大きなメリットです。ただ、年齢が上がるにつれて、子どもには子どもの生活リズムや気持ちの整理の仕方が出てきます。

たとえば、10歳くらいになると、

  • 部屋で静かに過ごしたい
  • 友人との通話やオンライン時間を持ちたい
  • 家族に聞かれずに勉強や趣味に集中したい
  • 一人になれる場所がほしい

と感じることがあります。

このとき、平屋で個室とLDKの距離が近すぎると、「なんとなく落ち着かない」「常に気配がある」と感じやすくなります。親としては見守っているつもりでも、子どもにとっては干渉に近く感じられることもあるのです。

問題は部屋数ではなく“距離のつくり方”にある

ここで誤解しやすいのが、「子ども部屋が2つあれば大丈夫」と考えてしまうことです。実際には、部屋があるだけでは足りないことがあります。

大切なのは、家の中でどれだけ心理的な距離をつくれるかです。

たとえば、子ども部屋がLDKのすぐ横にある、ドアを開けるとすぐ家族の視線が入る、トイレや洗面に行くたびに必ずLDKを通る、といった間取りでは、個室があっても“一人になれる感じ”が弱くなります。

限られた面積での平屋はコンパクトにまとまりやすい反面、こうした距離の取り方が難しい住まいでもあります。だからこそ、ただ面積を確保するだけでなく、音や視線、動線の重なり方まで考えておくことが大切です。

後悔を減らすカギは、“今”ではなく“10年後”を想像すること

平屋には、子育て期にも老後にも暮らしやすい魅力があります。ただ、その良さを長く活かすには、「子どもの今の年齢」だけで間取りを決めないことが大切です。

特に意識したいのは、次のような視点です。

  • 子ども部屋とLDKを近づけすぎない
  • 音が抜けやすい配置にしない
  • 通路や視線の抜け方を確認する
  • 将来、個室の使い方を変えられる余地を持つ

平屋は家族のつながりを感じやすい住まいです。だからこそ、その近さが将来も心地よいかどうかを考えておきたいところです。

「家族の気配が感じられる家にしたい」という思いは自然なものです。ただ、近さはいつも正解とは限りません。子どもが成長しても無理なく暮らせるようにするには、つながりだけでなく、きちんと離れられる距離もつくっておくことが大切です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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