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頭金1,000万円を投入した30代夫婦→3年後、年収600万夫が突然亡くなり、手元に残ったのは月2万円

  • 2026.4.20
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅購入を検討されている方の多くが、一度はこう考えるのではないでしょうか。

「頭金をしっかり入れて、無理のない返済額にしておけば安心」

たしかに、その考え方は堅実で、間違いではありません。ただしその安心は、一家の収入を支えていた人がいなくなった瞬間に一気に意味を失うことがあります。

収入が途絶えたらどうなるのか。家族の状況が変わったとき、今の家計は維持できるのか。そこまで想定したうえで住宅購入を判断できているケースは、決して多くありません。

今日ご紹介するのは、「団体信用生命保険(契約者が死亡・高度障害状態になった時にローンが完済される仕組み)があるから大丈夫」と信じていたご家庭が、ローン完済後にもかかわらず生活に追い込まれていった実例です。

「これなら安全」と思っていた。堅実な住宅購入

5年ほど前、私が担当した30代のご夫婦、Aさんご家族の話です。夫は会社員で年収600万円、妻はパートで年収120万円。お子様が1人いる、どこにでもあるご家庭でした。

初めてお会いしたとき、Aさんは少し慎重な表情でこうおっしゃっていました。

「無理なローンだけは絶対に避けたいんです。将来が不安なので…」

購入したのは4,000万円の戸建て住宅。そして、貯蓄の中から1,000万円を頭金として投入し、借入額は3,000万円に抑える計画でした。

団体信用生命保険にももちろん加入。返済額は家賃並みで、無理のない水準。万が一の備えも整っている。

ここだけを見ると、まさに理想的な買い方です。実際、当時の私は「非常に堅実でバランスの良い計画です」とお伝えしていました。

「団信があるから安心」その言葉が現実になった日

購入から3年後。状況は一変します。ご主人が、突然の病気で亡くなられました。

結果として、住宅ローンは団体信用生命保険により完済。借金のない持ち家が、そのまま残る形となりました。一般的には、「最悪の事態でも家は守られた」と受け取られがちなケースです。

しかし、奥様の表情からは「これからどう生活していけばいいのか分からない」という不安が、一気に押し寄せていることがうかがえました。

本当の問題は、ここから始まります。

ローンゼロでも生活は守られなかった現実

ご主人の収入がなくなったことで、世帯収入は一気に減少しました。

【収入の変化】

  • 夫:600万円→0円
  • 妻:120万円→150万円(パート増)
  • 遺族年金:約120万円/年(※目安。条件により異なります)
  • 世帯年収:約270万円(月約22.5万円)

一方で、支出は以下のとおりです。

【主な支出】

  • 食費:月6万円
  • 光熱費:月2万円
  • 通信費:月1.5万円
  • 教育費:月3万円
  • 固定資産税:年12万円(=月1万円換算)
  • 保険・雑費など:月3万円
  • 合計:約16.5万円/月(年間約200万円)

ここまでを見ると、「なんとか生活は回る」と感じるかもしれません。

しかし実際には、この数字だけでは生活の実態は見えてきません。見落とされがちなのが、定期的に発生するまとまった支出です。

  • 住宅の修繕費(年間10万〜30万円)
  • 家電の買い替えや医療費などの突発支出
  • 子どもの進学に伴う教育費の増加

これらを平均すると、実質的な支出は月18〜20万円程度まで膨らみます。つまり手元に残る余裕は、月2〜4万円程度。

この水準では、将来に備えた貯蓄を積み上げることはほぼ不可能です。一度大きな出費が発生すれば、家計は簡単に崩れてしまいます。

さらにAさんの場合、頭金として1,000万円を投入していたため、手元に残る資金はほとんどありませんでした。いざというときに頼れる“余力”がない状態です。

奥様は、こう話されていました。

「ローンがなくなれば安心だと思っていました。でも、生活は全然楽になっていません…」

家は残った。それでも、暮らしには余裕がなかった。それが現実でした。

住宅購入で本当に考えるべきポイントとは

住宅購入で本当に考えるべきなのは、何が起きても暮らしが続けられるかという視点です。

  • 収入が減ったとき
  • 家族の状況が変わったとき
  • 想定外の出費が重なったとき

そのときでも生活が崩れない設計になっているかどうかが、何より重要になります。

具体的には、次のような備えが欠かせません。

  • 頭金を入れすぎず、生活防衛資金(半年〜1年分)を手元に残す
  • 遺族年金などを踏まえ「収入が半減した前提」で家計を試算する
  • 夫婦どちらかの収入だけでも生活が成り立つか確認する
  • 住宅費以外の固定費(教育費・保険・維持費)まで含めて考える

不動産は、購入したら終わりではありません。その後、何十年も続く生活の土台になります。家は残っても、暮らしが維持できなければ意味がありません。

安心そうに見える選択が、本当に安心なのか。その裏側まで、一度立ち止まって考えてみてください。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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