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【BTS連載vol.7 JUNG KOOK】ソロの頂を経て再び一つの船へ。“黄金マンネ”の才能と素顔

  • 2026.3.20
JUNG KOOK<strong>(ジョングク)/1997年9月1日生まれ、韓国・釜山出身</strong> The Chosunilbo JNS / Getty Images

2022年6月に活動休止を発表してから約4年、2026年3月20日リリースの5thアルバム『ARIRANG』でBTSがついに再始動を果たす。4月からはソウルを皮切りに世界23ヶ国・地域を巡る大規模ワールドツアーを控え、7人揃った“完全体”の復活を世界が心待ちにしている。

これに合わせ、オフィシャルブックの翻訳も手掛けた“BTSのプロ”桑畑優香さんが、全7回の特別連載でメンバーの魅力を紐解いていく。連載最終回を飾るのは、ソロ活動を経てポップスターの頂点を極めた“黄金マンネ”、JUNG KOOK。デビュー前の単身LA武者修行から、彼にとっての“BTS”という唯一無二の居場所まで。2013年のデビューから現在に至るまでの成長の軌跡と、比類なき才能の開花をたどる。

K-POPの枠を超えたポップスターに。全編英語で挑んだソロアルバム

JUNG KOOKという存在は、もはやK-POPという枠組みでは語りきれない。ソロ活動期に発表された楽曲の爆発的ヒットで見せたのは、世界のメインストリームを正面から突破する「純然たるポップスター」としての姿だ。

UKガラージ風のサウンドで軽やかに愛を歌った「Seven (feat. Latto)」(2023)は米ビルボードHot 100で1位を記録。続く「3D (feat. Jack Harlow)」(2023)もトップ5入りを果たす快挙を成し遂げた。

JUNG KOOKのボーカルを形容するなら「ドライ」「流麗」「モダン」という言葉が相応しい。現代のポップスに求められる高度なスキルをすべて備えながら、決して技巧をひけらかさない。感情を激しくぶつけるのではなく、本能的なセンスで「音楽に求められる最小限の感情」を抽出。この絶妙なコントロールが、聴き手に心地よい余白と洗練を感じさせる。

変幻自在な歌声は、まるでカメレオンのよう。「Danger」(2014)のラップでは、官能的な重みを漂わせ、「Euphoria」(2018)では一転して、恋の始まりの胸の高鳴りを過剰な装飾なしに瑞々しく描き出す。楽曲によって質感を変えながらも、一本筋の通った個性が宿る。

そして、ひとつの到達点と言えるアルバム『GOLDEN』(2023)の収録曲「Standing Next to You」。レトロなダンスポップの中で、強烈なリズム変化やレイドバックしたグルーヴを自在に操る、比類なきスターの風格。

全編英語で挑んだアルバムにおいて、JUNGKOOKのボーカルは驚くほど自然に、かつモダンに響く。英語特有の発音やリズムを咀嚼し、違和感なくメロディに溶け込ませるその適応力。エド・シーランやショーン・メンデス、アンドリュー・ワットといった世界最高峰のクリエイター陣がこぞって彼との作業を望んだのは、JUNG KOOKという楽器が持つ無限の可能性を確信したからだろう。どんなジャンルであっても、彼が歌えば瞬時に「JUNG KOOKの曲」に。これこそが、メインボーカリストとしてBTSの屋台骨を支え続けてきた彼が到達した境地だ。

Jamie McCarthy / Getty Images

デビュー前にはLAに単身武者修行。スターの原点はRMへの憧れ

完成されたパフォーマンスは、どのようにして生まれたのか。今でこそ圧倒的なカリスマ性でシーンを牽引するJUNG KOOKだが、始まりは決して完成されたものではなかった。

最初にその才能を見出されたのは、中学生のとき。2011年、オーディション番組「SUPER STAR K3」の会場で、7つの芸能事務所から同時に名刺をもらう。しかし選んだのは、当時まだ無名に近かったBig Hitエンターテインメントだった。決め手となったのは、YouTubeで見たRMの姿だ。「ラップと英語が上手でかっこいい」。その憧れが、すべての原点だった。

左からRM、JUNG KOOK JTBC PLUS / Getty Images

しかし、才能はすぐに完成へと結びついたわけではない。デビュー前、事務所から「センスはあるが、魅力を出しきれていない」と指摘されたJUNG KOOKは、アメリカ・ロサンゼルスに渡る。技術はあっても、何かが足りない。感情を表に出すことが得意ではなかった彼にとって、それは自分の本質に向き合う問いでもあった。当時について、「BEYOND THE STORY ビヨンド・ザ・ストーリー:10-YEAR RECORD OF BTS」でこう語ってる。

「不思議ですね。そこで何か特別なことをしたわけではなかったんです。一般的なレッスンではなく、ワークショップ形式でダンスを習ったのですが、そのような経験がなかったのでとまどいました。休みのときは海に行って遊んだり、チャンポンを食べたり、宿に帰ったらひとりでシリアルにミルクをかけて食べたり……だから体重が増えました(笑)。それなのに、韓国に帰国してダンスをしたら、事務所も年上のメンバーたちも、すごく変わったって言うのです。本当に、何もしていないのに、性格やダンスのスタイルがすごく違うと。研修で実力がぐんと伸びたようです」

そして迎えた2013年6月13日、デビューの日。「We Are Bulletproof Pt.2」(2013)のダンスブレイクで見せた帽子パフォーマンスは、すでに彼のスター性を鮮やかに示していた。J-HOPEのダンスから始まり、JIMINのアクロバティックな動きを経て、空中に投げられた帽子をJUNG KOOKがキャッチ。一連の流れの中で、彼はグループの中心として観客の視線を一手に引き受ける存在に。筆者は、日本の芸能雑誌編集者から、「このパフォーマンスを見て衝撃を受け、すぐにBig Hitエンターテインメントに取材を申し込んだ」という証言を聞いたこともある。

努力で自らの「未完成」を埋め続け、圧倒的に安定したボーカルとパフォーマンス力を武器に、BTSの顔として世界へと羽ばたいたJUNG KOOK。その果てにつかみ取ったのが、2022年FIFAワールドカップ・カタール大会の開会式という、大舞台だった。全身黒の衣装をまとい、公式ソング「Dreamers」を熱唱。多数のダンサーを従え、巨大なスタジアムを掌握する姿は、BTSのメインボーカルという肩書きを超え、グローバルなアイコンとしての認知を決定づけた。

Michael Regan - FIFA / Getty Images

BTSは“自分を自分たらしめた場所”。飾らない姿とメンバーへの愛

「もともとはLIVEをするとき、事務所に連絡して少し準備してから配信していたんですが、ふと携帯電話を立ち上げて配信してしまったことがあります。それからはいつでもするようになりました」というJUNG KOOK。ファンとの距離感は、驚くほど近い。深夜、突然始まるWeverseライブ。時には数時間にわたってカラオケを熱唱し、時には洗濯物を畳む。1,500万人以上が見守る中で、そのまま眠りに落ちてしまうことさえも。

世界的なスーパースターでありながら、まるで隣の部屋に住む友人のような、計算のない奔放な姿。そこには「飾る必要のない自分」を愛してくれる人々への、信頼が透けて見える。

Michael Loccisano / Getty Images

そんなJUNG KOOKは、デビューの4か月前、初めての配信で戸惑いながらこんなふうに語っている。

「なにをしゃべったらいいのかよくわかりません。今日ついに高校を卒業しました。うれしいかなと思ったけど、それほどうれしくありません。いま11時49分。ダンスのレッスンが終わったところです。もうすぐお正月(旧正月)なので、早く家に帰りたいです。お母さんとお父さんに会いたいです(笑)。みんな僕を待っていると思います。うん、帰りたいですね」

「BEYOND THE STORY」でJUNG KOOKは、かつては人見知りでシャイだったと振り返りつつ、自分が変わることができたのは、年上のメンバーたちの存在があったからこそだと明かす。

「僕の話し方や普段の行動に、みんなが垣間見えることがあるんです。みんなが音楽をする姿、ステージでのささいなジェスチャーや、インタビューを受けるときの姿を見ながら、僕も何かを得て学んだのです。SUGAさんの考え方、RMさんの言葉、JIMINさんの行動、Vさんの個性的な姿、JINさんの明るさ、J-HOPEさんの前向きな心……」

その感情の結晶が、ソロ曲「Begin」(2016)だ。JUNG KOOKはこの曲で、年上のメンバーを「兄」として慕う自身の想いを歌に託した。

今ではもう想像すらできない
香りのしない 空っぽだった僕 僕
I pray

Love you my brother みんながいる
感情が生まれて 僕は僕になった

「Begin」作詞:David Quiñones、Rap Monster、tony esterly

歌詞に刻まれているのは、少年だった彼が、仲間と出会い、感情を知り、自分自身を形作っていく過程そのものだろう。JUNG KOOKにとってBTSとは、単なるグループではなく、自分を自分たらしめた場所なのだ。

Tommaso Boddi / Getty Images

挫折と覚醒の原点であるLAから再び。JUNG KOOKがBTSで描く、新章の幕開け

ソロ活動を経て、ポップスターとしての頂点を極めたJUNG KOOK。再始動を目前にした彼は、以前にも増して軽やかで、かつ力強いオーラを放っている。

3月15日、久々に更新されたTikTokで披露したダンスチャレンジは、わずか14秒でありながら、瞬く間に世界中でバイラル化。カナダ人アーティスト、ベイビーノーマネーの「two」に乗せたステップは、力を抜いた余裕の中に、リズムと角度をミリ単位で制御する精巧さが宿る。翌日に公開された「SSAK(Prod. By GRAY)[feat. Loco]」でのパフォーマンスでも、テンポの速いラップに完璧にシンクロし、最後には茶目っ気たっぷりに舌をチラッと見せながらターンを決めた。そこにあるのは、過酷なカムバック準備の真っ只中にあっても、表現することを心から楽しんでいるプロフェッショナルの姿だ。

BTSの新たな門出となるアルバム『ARIRANG』(2026)の制作地として選ばれたのは、ロサンゼルス。かつて少年だったJUNG KOOKが「自分には魅力が足りない」と悩み、一人で武者修行に励んだ挫折と覚醒の原点でもある。

ティーザー映像には、アルバムと同名の船に乗り込み、未知なる航路を見据える7人の姿が映し出されている。軍白期というソロとしての旅路を終えた7人が、一つの船に集う。そして、ついに迎える3月21日のカムバックライブ。アミボムが波のようにうねる光の海で、完全体としてのBTSは再び世界へと漕ぎ出していく。

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