1. トップ
  2. 「バーバリー」創業170周年を祝して。ロンドンの街と呼応する伝統の大胆な刷新

「バーバリー」創業170周年を祝して。ロンドンの街と呼応する伝統の大胆な刷新

  • 2026.3.2
Umberto Fratini / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

小雨が舞い鉛色の雲が垂れ込める、いかにもイギリスの冬らしい空模様に包まれた「バーバリー」のショー当日。今季の会場となったのは、テムズ川沿いにたたずむ歴史的建築オールド・ビリングスゲート。かつて魚市場として栄えたこの空間に、雨上がりのロンドンの情景が再現された。

Umberto Fratini / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

ロンドンブリッジがインスタレーションとしてそびえ立ち、ランウェイには水たまりを模した反射面が広がる。「イギリスの冬の暮らしをたたえたかった。ほとんど暗闇と悪天候の中で過ごすようなものですから」と冗談めかして語ったのはクリエイティブ ディレクターのダニエル・リー。

アウトドアやカントリーサイドの生活をテーマに掲げた過去数シーズンから、今季はより都会的でグラマラスなロンドンの夜へとかじを切った。「出発点は、今年で創業170周年を迎えるアニバサリーイヤーを祝うために、原点へと立ち返ること。トレンチコートとチェック柄、そしてブランドにとっての精神的な故郷であるロンドンの街へと戻ってきたのです」とリーは続けた。

launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

その言葉通り、コレクションの中核を担ったのはトレンチコート。まるでクチュールドレスと融合したかのように、ネックラインに大胆なフリルをあしらった一着は、定番であるはっ水コットンギャバジンにつややかなニュアンスを与えドレッシーな表情へと昇華させる。透け感のあるストッキングにヒールを合わせることで、メンズの軍用アウターとして生まれたトレンチコートが、まるでイヴニングドレスのようなセンシュアルな一着へと変貌を遂げた。

launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

トレンチコートはさらに、プリーツ加工を施した軽やかなバリエーションや、しなやかなレザーで再構築されたモデル、クロップド丈に切り詰めたジャケットタイプまで登場。メゾンのDNAであるアイコンは、プロポーションや素材の変奏によって変幻自在に姿を変え、実用性と装飾性のあいだを自在に行き来する。

launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

もう一つのキーワードであるチェック柄は、「これまで見たことのない質感を探求した」とリーは語り、プリントとしてではなく“テクスチャー”として再解釈された。織りによって立体化されたり、レザーやファブリックと交差しながら奥行きを生み、時にフリンジやフォーファーによって揺らぎを帯びる。伝統的なハウスコードでありながら、その表情は驚くほど新しい。

平面的なモチーフだったはずのチェックは、光を受けて陰影を描き、身体の動きとともに変化する動的なパターンへと進化。ネイビーやボルドーといった深みのあるカラーパレットが重なり合うことで、そのテクスチャーは一層つややかさを増し官能性をまとっていく。

launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
Alessandro Viero / Launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

それらに合わせたのは、タイドアップのオフィスウェアや、メンズライクなレザーパンツ、さらにはナイトアウト向きのカクテルドレス。昼から夜へとシームレスに移行するワードローブとして提示されたスタイリングには、装う人物それぞれが夜の街へと繰り出す物語を想像させる。

リーは実際に、オフィスの窓から見下ろすロンドンの街並み、そこを行き交う人々の装いから着想を得たという。「彼らが向かうのは、映画のプレミアかチャリティーガラか、あるいはナイトトークのイベントかもしれない。ロンドンが持つ夜の多層的な顔を祝福したかったのです」

launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT
launchmetrics.com/spotlight / LAUNCHMETRICS SPOTLIGHT

シューズは、ドレスアップにも映えるスティレットヒールのレザーブーツやメリージェーンが中心。足元にシャープな緊張感を添えながら、ルック全体を引き締める役割を果たした。さらに、ジュエリーのように小ぶりなバッグがアクセントとして添えられ、装いの完成度を高める存在として夜のムードをさりげなく強調していた。

ランウェイには、ロージー・ハンティントン=ホワイトリーやロメオ・ベッカムらも登場。 Stuart C. Wilson / Getty Images

創業170周年という節目にあたり、リーが示したのは過去への回帰でありながら、決してノスタルジーにとどまらない現在進行形の「バーバリー」だった。実用と装飾、メンズとウィメンズ、昼と夜。その境界を軽やかに越境しながら、ブランドのアイコンは都市生活にふさわしい一着へと再定義され、伝統は新たな光を放つ。

ショーを終えて会場を出ると、降り続いていた雨はやんでいた。テムズ川に架かるロンドンブリッジが、雲間からこぼれる淡い光を受けて、いつもよりも誇らしげに輝いて見えた。まるでロンドンという街が、この新たな「バーバリー」の門出を祝福しているかのように。

Hearst Owned
Hearst Owned
元記事で読む
の記事をもっとみる