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【じゃがいもレジェンド・レシピ】食べ進めるほど夢中になるシンプルな完全体。「コム ア ラ メゾン」のじゃがいものグラタン

  • 2026.9.16

創刊36年の歴史の中で突出した、これぞ殿堂! と誰もが唸る極上の味。“じゃがいもレジェンド・レシピ”企画では、最高峰の技と愛がぎゅっと詰まった渾身の4皿をご紹介します。二皿目は、「コム ア ラ メゾン」のじゃがいものグラタン。濃厚なのにまるで飽きがこない逸品です。

【じゃがいもレジェンド・レシピ】食べ進めるほど夢中になるシンプルな完全体。「コム ア ラ メゾン」のじゃがいものグラタン

■果てしなき「完璧グラタン道」。

寒い日に熱々を頬張ればそれだけで幸せ。グラタンは“ムード”の食べ物だから正直味に大差なし! などと思っていた、愚か者の私は、「コム ア ラ メゾン」の“じゃがいものグラタン”に、見事に打ち砕かれた。「コム ア ラ メゾン」は、食を愛する紳士淑女に深く信頼される赤坂のフランス料理店。南西部の郷土料理に特化した珠玉のメニュー12皿の一つに、じゃがいものグラタンが輝いている。その黄金の一皿を初めて食べたとき、真っ先に“完璧”の2文字が浮かんだ。

ホクホクと存在感のあるじゃがいもに、うっとりなじんだクリーム。その表面を香ばしいチーズが歯ざわりよく包んだ一口は、今までボヤけていた「グラタンにおける美味」にカチッ……と焦点を合わせ、そのど真ん中を貫いた。しかもまるで飽きがこない。濃厚なのに食べ進めるほど夢中になるこの味、一体、涌井勇二シェフは何をしてくれたのか。何がどうしてこうも違うのか。

涌井勇二シェフ
涌井勇二シェフ

「特別なのはチーズくらい。オッソー・イラティという南西部でつくられる羊のチーズで、グッと土地の味になる。でもそれ以外はありふれた食材ですよ」
むしろ、バターも牛乳もスーパーで買えるスタンダードなものが良い。

「僕が求めるのは、素材ありきというよりも、シンプルな日常の料理なんです。色気づいた高級な味は、現地の家庭料理からかけ離れてしまう」。日常の味を愛し、素材に頼らない。涌井シェフのグラタンは、その分、きわめて丁寧な仕事に支えられている。

「たとえば塩はきっちり効かせること。そうでなければクリームが重たくなり、食べ進められません。とにかく全体のバランスが大切なんです」。だからこそ重要なのは調理の均一性。「じゃがいものスライスも、火入れも、とにかく均一を心がけます。不均一な要素があるとそこから美味しさのバランスが崩れてしまいますから」

完璧なバランスで“会心の出来だ!”と思えるのは、この味を20年以上つくり続けてきた涌井シェフですら年に一度くらい。日々変化する食材を前に安直な完成などない。だから飽きることもない。「コム ア ラ メゾン」のメニューリストが開店以来一度も変わらない理由に触れた気がした。シンプルな完全体を追求し続ける、涌井シェフの美味。私に再現できるだろうか……。

「1万回くらいつくったら美味しくできると思いますよ」と、真顔の涌井シェフ。
完璧グラタン道に近道はありません!

じゃがいものグラタン
じゃがいものグラタン

■じゃがいものグラタンのつくり方


◇材料 (15皿分)

じゃがいも:2.3kg(メークイン)
にんにく:30g(かなり細かいみじん切り)
バター:270g(食塩不使用)
生クリーム:800〜900ml(乳脂肪分38%)
牛乳:600〜700ml
チーズ:適量(オッソー・イラティを使用。薄く削る。*1)
塩:適量(サラサラしたタイプ)
ピマンデスペレット:適量(*2)


*1 グリュイエールチーズなどでも代用可能だが、現地の味にするならオッソー・イラティを! フランス南西部でつくられる羊のチーズで、クセがなく、ミルキーな旨味が特徴。グラタンの表面をチーズの皮一枚で覆うように並べると、絶妙なサクッと感になる。
*2 辛味が穏やかで、旨味と甘味を併せ持つバスク地方の唐辛子。胡椒の代わりとして、味つけの要所要所に使っていけば、より一層、フランス南西部の味に仕上がる。

(1)鍋に材料を入れる
バターは2cm角に切り、鍋に広げる。できれば鍋は蓋付きで、そのままオーブンに入れられるものがよい。じゃがいもは皮をむき、スライサーで厚さ4mmに切りながら鍋に加える。粘りを保つため水にはさらさない。

鍋に材料を入れる
鍋に材料を入れる

(2)生クリーム、牛乳を加える
じゃがいもを均等に広げて、生クリーム、牛乳を入れる。水分はギリギリひたるくらい。多すぎも少なすぎもダメ。

生クリーム、牛乳を加える
生クリーム、牛乳を加える

(3)調味料などを加える
にんにく、塩(しっかりふたつまみ、20g)、ピマンデスペレット(ふたふり)を加え中火にかける。火が入るとじゃがいもから水分が出るため、かなり強めに塩を効かせてよい。

調味料などを加える
調味料などを加える

(4)コンロで下処理
沸騰するまでできるだけかき混ぜずに様子を見る。オーブンに入れる前に、鍋の中の温度を上げておくことで、じゃがいもに均一に火が入り、調理時間も短縮できる。

コンロで下処理
コンロで下処理

(5)下処理終了
熱が入るとじゃがいもから水分が出てくる。鍋肌のクリームが、ふつ、ふつと沸いてきたら、準備完了。

下処理終了
下処理終了

(6)オーブンへ入れる
蓋をして、予熱をしておいた180℃のオーブンへ。オーブンがない場合、厚みのある鋳物の蓋付き鍋を使うなど工夫して全体に熱を回す。

オーブンへ入れる
オーブンへ入れる

(7)均一に火を入れる
時折、オーブンから取り出して(8〜10分に一度)、じゃがいもを崩さないように鍋の中央と周縁を入れ替える。

均一に火を入れる
均一に火を入れる

(8)ベースの完成
クリームにとろみがつき、じゃがいもがスッと割れたらベースの完成。味見をして、必要なら塩で味を調える。煮込みすぎに注意!

ベースの完成
ベースの完成

(9)一晩ねかせる
じゃがいもが崩れないように丁寧にバットへ移す。自然に流れ落ちたものだけをバットに集める。すべてのじゃがいもがクリームにつかるように均等になじませる。常温で完全に冷ましてから冷蔵庫で一晩ねかせる。

一晩ねかせる
一晩ねかせる

(10)仕上げる
直径15cmほどの小ぶりのグラタン皿を用意し、中心が少し高くなるように、放射状にじゃがいもを敷き詰める。理想は高さ3cm。ピマンデスペレット少々をふり、薄く削ったオッソー・イラティで表面を覆う。180℃のオーブンで10分ほど加熱し、焼き色をつける。

仕上げる
仕上げる

(11)完成
焼き色がついたらオーブンから取り出し、表面ににじみ出た余分な油を軽くきったら、完成!

完成
完成

◇店舗情報

「コム ア ラ メゾン」
【住所】東京都港区赤坂6‐4‐15
【電話番号】03‐3505‐3345
【営業時間】17:00~22:00(L.O.)
【定休日】日曜
【アクセス】東京メトロ「赤坂駅」6番出口より3分


文:平野紗季子 撮影:日置武晴

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