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「誰か注意したんですか?」電車で大声で電話する乗客。だが、突然乗客が気まずくなったワケ

  • 2026.9.14
「誰か注意したんですか?」電車で大声で電話する乗客。だが、突然乗客が気まずくなったワケ

同じ話が、はじめに戻るたび大きくなった

平日の朝、いつもより一本早い電車に乗った。

座席はほとんど埋まっていて、私はドアの横に立っていた。降りる駅まではおよそ10分。ふだんなら、その間に一日の段取りを頭の中で考えている。

声に気づいたのは、発車してすぐだった。

車両の中ほどの席に、五十代くらいの男性が座っている。耳に携帯を当て、かなり大きな声で話していた。

「もしもし?聞こえてる?こっちは聞こえてるよ」

どうやら電話の向こうとうまく話が通じていないらしい。

少し間があいたあと、また男性の声が響いた。

「いや、だから、聞こえてるって」

何人かがちらりと顔を上げた。

それでも男性は電話を続けている。

「聞こえてるんだよ。何回も言ってるだろ」

今度は、さっきよりもさらに大きな声だった。

電話の内容までは覚えていない。ただ、同じようなやり取りが繰り返されるたびに声が大きくなっていくことだけは、はっきり覚えている。

文庫本を読んでいた女性は一度ページから顔を上げ、少し離れた席の学生はイヤホンを耳に押し込んだ。

けれど、男性に直接声をかける人はいなかった。

両隣の2人が、静かに席を立った

大きな声が響いたあとだった。

男性の隣に座っていた女性が、膝の上の鞄を抱えて立ち上がった。

そのまま少し離れた場所まで歩いていく。

数秒ほどして、反対側に座っていた女性も周囲を見回し、荷物を持って立った。

二人が何か話したわけではない。

けれど結果として、男性の両隣の席だけが空いた。

男性はまだ電話を続けていたが、ふと顔を上げた。

左右の空いた席を見て、それから車内をちらりと見回す。

「…ああ、うん。ちょっと待って」

次に聞こえてきた声は、さっきまでとは明らかに小さかった。

男性は窓のほうへ少し体を向け、口元を手で覆うようにしながら話している。

「分かった。じゃあ、あとでかけ直すよ」

そう言うと、ほどなく携帯を耳から離した。

急に静かになったせいか、それまで気にならなかった車輪の音がやけに大きく聞こえた。

私が降りる駅は次だった。

ドアの近くへ移動しながら振り返ると、男性は携帯を手に持ったまま、窓の外を見ていた。

そのまま電車を降り、会社へ向かった。

会社に着いてから、同じ課の後輩に朝の出来事を話した。

「今朝の電車、ちょっとすごい人がいてさ」

「何があったんですか?」

「電話してた人が、『聞こえてるんだよ』って。同じようなことを、どんどん大きい声で言ってて」

後輩は驚いたように眉を上げた。

「朝からそれはきついですね。誰か注意したんですか?」

「いや、誰も何も言わなかったよ。でも両隣の人が席を立ったら、その人、急に声を小さくしてさ」

直接注意する人はいなかった。

それでも、周囲のちょっとした動きで、自分の声の大きさに気づくこともあるのかもしれない。

朝の10分ほどの出来事だったが、あのとき両隣の席が静かに空いていった光景は、今でも妙に覚えている。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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