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「この列、もう少し早く進みませんか」耐える日々だった私。だが、帰り際の客がくれた一声に救われた瞬間

  • 2026.8.29

あこがれていた美術館でのアルバイト

学生のころ、私は美術館でアルバイトをしていました。何度も足を運んだことのある場所だったので、あの静かな空間で働けることを楽しみにしていました。

ちょうど人気の展示が始まった時期で、入館は予約制。

それでも有名な作品の前には自然と人が集まり、長い列ができることがありました。

私の担当は、その近くに立って列の流れを整えることでした。

「この列、もう少し早く進みませんか」

そう聞かれれば、「順番にご案内しております」と答えます。少し離れたところから、「話し声が大きい人がいるので注意してほしい」と呼び止められることもありました。

もちろん、来館した方が困っているなら対応するのも仕事です。

ただ、自分ではどうにもできない混雑まで、その場にいる私へ向けられる日が続くと、少しずつ気持ちが疲れていきました。

声をかけに行って、列へ戻って、また別の人に呼び止められる。

閉館時間が近づくころには、早く一日が終わってほしいと思うことも増えていました。

好きだったはずの美術館なのに、休憩室で時計を見る時間ばかり長くなっていました。

帰り際、ひとりの女性が足を止めた

そんなある日の閉館前です。

出口へ向かう人の流れを見送っていると、ひとりの年配の女性が私の前で足を止めました。

また何か尋ねられるのだろうと思い、私は女性のほうを向きました。

すると、その人は穏やかな声で言いました。

「どうもありがとう、この行列であなたも大変ね」

一瞬、返事が出ませんでした。

その日も何度も列について聞かれ、注意を頼まれ、頭を下げていました。

だから最初は、自分に「ありがとう」と言われたことがうまく飲み込めなかったのです。

ようやく「ありがとうございます」と返すと、女性は軽く会釈をして、そのまま出口へ歩いていきました。

ほんの数秒の出来事でした。

それでも、自分の仕事を見てくれていた人がいたのだと思うと、それまで張っていた気持ちが少しだけほどけました。

それ以来、私も客として店や施設を利用するときは、できるだけ「ありがとうございます」と声に出すようになりました。混雑している場所で忙しそうなスタッフを見かけると、あの日の女性を思い出します。

たった一言でも、受け取る側にとっては、その日の気持ちを変えるほど大きなものになることがあるのだと知った出来事です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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