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「無料だからいいわよね」ビニール袋などを大量に持って帰ろうとした客。帰り際の視線に恐怖した瞬間

  • 2026.7.23

隣の台に置かれたかご

週末の夕方、近所のスーパーの袋詰め台で荷物をまとめていました。私の隣に、女性がかごを置きます。

レジでのやり取りが、まだ耳に残っていました。お箸は何膳か聞かれて、5膳と答えていた人です。かごの中は弁当がひとつと日用品だけ。多いなとは思いましたが、それだけのことでした。

台の端には、ご自由にお使いくださいと書かれた袋立てがあります。薄いビニール袋が、束になって差してありました。

女性はそこへ両手を伸ばし、束のままグルグルと巻き取るように引き抜きました。数えて取る手つきではありません。そのままエコバッグの奥へ押し込みます。

ちょうど、かごを片付けていた店員さんが通りかかりました。目線が、その手元で一瞬止まったのが分かります。

「無料だからいいわよね」

女性が、顔も上げずにそう言いました。声は明るくて、少しも慌てていません。

店員さんは、あいまいに会釈をして通り過ぎていきました。

それきり、誰も何も言いませんでした。私も何も言いません。台の上では、女性の手がまだ動いていました。

誰にも止められないまま

詰め終えた女性が、エコバッグを肩にかけて歩き出します。ところが、隣の台の前でぴたりと足を止めたのです。

そこにも同じ袋立てがありました。同じように両手を伸ばし、同じようにグルグルと巻き取って、たっぷりおかわりをしてエコバッグへ。

周りには買い物客も店員さんもいます。それでも、隠すそぶりは一切ありませんでした。

私も荷物を持って出口へ向かうと、自動ドアの前で並ぶ形になりました。

ドアの横には、フリーペーパーのラックがあります。求人や住宅の冊子が、何種類か重ねてありました。

女性はそこで三度目に足を止め、片っ端から手に取りました。一種類ずつではありません。上から順に、残っていた分をそのままです。

ラックが空になっても、後ろで見ている私に振り向きもしません。冊子を胸で押さえたまま、女性は駐車場を歩いていきます。私も少し離れて、同じ方向へ進みました。

車のドアに手をかけたところで、女性がこちらを向いたのです。

目が合いました。

その一瞬で分かりました。この人は、私が最初から見ていたことを知っていた。台でも、袋立てでも、ラックでも。

女性は、にっこりと笑って会釈をしました。とがめられるとも、隠さなければとも思っていない顔です。

悪い感じのする人には見えませんでした。だからこそ、背中が冷たくなったのです。

静かに走り出した車を見送りながら、私はしばらくその場に立っていました。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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