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青森でめぐる、有名建築家が手掛けたアートの名所4選

  • 2026.8.27
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近年、アートの新たな発信地として存在感を増している青森。その象徴ともいえる十和田市現代美術館の館長・四方幸子さんに、建築とアートが共鳴して生まれる表現の豊かさを伺うとともに、旅の目的にしたい青森の必訪アートスポットを厳選してお届けします。

四方幸子(しかた・ゆきこ) 撮影:小山田邦哉

<Profile>
四方幸子(しかたゆきこ)/キュレーター、批評家

多摩美術大学・東京造形大学客員教授。美術館での活動のほか、ビエンナーレや芸術祭でもキュレーターとして数多くの実績を重ねる。2025年4月に十和田市現代美術館館長に就任。初めて手がけた企画展「国松希根太 連鎖する息吹」も大きな注目を集めた。


【十和田市現代美術館】画期的な建築で街全体を美術館に見立てて(青森・十和田市)

白い箱が連なっているような外観の美術館の前には、チェ・ジョンファの作品《フラワー・ホース》が佇んでいます。 Hearst Owned

「以前からアドバイザーとして関わってきましたが、来館者の表情を見ていると皆さん本当に楽しそうで。気付けば私自身、この美術館のファンになっていました」。そう語るのは、十和田市現代美術館館長の四方幸子さん。この場所の魅力を語る上で欠かせないのが、建築家・西沢立衛による空間設計です。展示室をそれぞれ独立した「アートのための家」として敷地内に点在させ、ガラスの回廊でつなぐ構成になっています。「作品のために空間があるという、逆転の発想で作られています。展示室には街側にガラスの開口部が設けられ、作品が街に向かって展示されているかのような開放感もあります。十和田の街と美術館が自然につながっているんです」

ロン・ミュエクの《スタンディング・ウーマン》は、4mもの巨大な迫力ある立体造形作品。 ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》2007年 Courtesy Anthony d'Offay, London 撮影:太田拓実

現代美術作家ロン・ミュエクの巨大な《スタンディング・ウーマン》は、「アートのための家」という設計を象徴的に体現する存在です。作品の周囲に余白があることで、遠くから全体を眺め、近づいて細部を見つめるという贅沢な鑑賞が可能になるのです。「日本で唯一の常設作品です。森美術館でも9月23日(日)までミュエクの個展を開催しているので、併せて巡っていただきたいです」

建物の壁面に描かれ、街へと開かれた展示の象徴が、奈良美智の《夜露死苦(よろしく)ガール2012》。 奈良美智《夜露死苦ガール2012》2012年 (C)Yoshitomo Nara 撮影:小山田邦哉

青森県出身の現代美術家・奈良美智の《夜露死苦(よろしく)ガール2012》も注目作の一つ。「どこか拗(す)ねた表情の少女は、かわいらしさの中にわずかな違和感が漂う。その“ズレ”こそが奈良作品の魅力です」。さらに、弱い立場に寄り添うまなざし、社会の空気を敏感に受け止めながら世界への優しさをにじませているところも、多くの人を引きつける理由だといいます。

外庭にたたずむ深紅の巨⼤ロボットアリ《アッタ》は、⽇本で唯⼀の椿昇の恒久展⽰作品。 《アッタ》2008年 十和田市現代美術館 撮影:小山田邦哉

2028年、美術館は開館20周年を迎えます。「20年、30年先を見据え、この美術館から創造と文化の連鎖を発信していきたいです」と四方さん。街と共に文化を醸成し、人々が訪れる流れをつくることで、地域の活性化にもつなげたいと続けます。「ここに来ると驚いたり、楽しめたり、癒やされたりする。私は『アートのための家』から『みんなのためのアートの家』にしていきたいです」

部屋の中の巨大なゾウが“見て見ぬふり”を体現

《the Elephant in the Room XL》のドローイング。 《the Elephant in the Room XL》のドローイング 2025年(C)椿昇


現代美術家・椿昇の個展「フリーダム—像(ぞう)と生きる」が、11月8日(日)まで開催中。巨⼤⽣命体の造形を通して、現代の資本主義社会に問いを投げ掛けてきた椿。会場で強い存在感を放つのは、ゾウをモチーフにしたバルーンの新作《the Elephant in the Room》。タイトルは、英語の慣用句で「誰もが気付いていながら、あえて話題にすることを避けてしまう状況」を意味します。実態を⾒て⾒ぬふりをしがちな私たちの⽇常の⾏為や思考の在り⽅を問い直し、そのなかで「⾃由であること(フリーダム)」について探究します。

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「十和田市現代美術館」
所在地/青森県十和田市西二番町10-9
開館時間/9:00~17:00(最終入館は16:30)
休館日/月曜日
TEL/0176-20-1127
URL/towadaartcenter.com

【青森県立美術館】縄文遺跡に着想を得た独創的な空間(青森・青森市)

ホワイトキューブが印象的な外観。 Hearst Owned

青森県立美術館の最大の特徴は、隣接する三内丸山縄文遺跡と呼応するように設計された、建築家・青木淳による独創的な構造にあります。建築の着想源となったのは、遺跡の発掘現場に刻まれた「トレンチ(壕[ごう])」。地面を幾何学的に切り込み、その上から白く塗装された煉瓦(れんが)の構造体を蓋(ふた)をするようにかぶせる。地面側の凹凸と建物側の底面の凹凸が、あえて隙間を持ちながら不規則にかみ合うことで、この美術館の基本構成が形作られました。

この設計によって生まれたのが、対極な二つの空間。一つは、真っ白な煉瓦に覆われた「ホワイトキューブ」の展示室。そしてもう一つは、土の床や壁が露出する隙間を生かした「土」の展示室です。

奈良美智のデザインをもとに建てられた「八角堂」に鎮座する、ブロンズ像《Miss Forest / 森の子》。屋外には立体作品《あおもり犬》もあり、積雪時を除いて間近で鑑賞できます。 奈良美智《Miss Forest / 森の子》2016年 (C)Yoshitomo Nara

館内にはあえて決められた順路はなく、初めて訪れた街を散策するかのように自由に歩くことが可能。その先々で、板画家・棟方志功や現代美術家・奈良美智、彫刻家で特撮美術監督の成田 亨といった郷土作家のコレクションに出合えます。

また、四方を画家のマルク・シャガールによる《バレエ『アレコ』》の背景画に囲まれた「アレコホール」も圧巻。この圧倒的なスケールの空間を活かし、音楽や舞踊などの舞台芸術も展開されています。

開館20周年の記念イヤーを彩る注目展

自らも被災し、東北における「復興の内実」を考察してきた写真家・志賀理江子。彼女の鮮烈な輝きと物語性を湛えた写真・映像作品を美術館の特徴的な建築空間を活かして紹介。 (C)Lieko Shiga. Courtesy of the artist

6月27日(土)〜9月27日(日)には「コレクション展2026-2」、7月11日(土)〜9月27日(日)には「装飾する魂 ユーロ=アジア世界をつなぐ文様の宇宙—縄文、ケルトから、ねぶたまで」が開幕。さらに、10月31日(土)から2027年3月14日(日)まで、「東日本大震災15年 志賀理江子 なぬもかぬも」を予定。開館20周年の節目を彩る意欲的な展覧会が、次々と開催される予定です。

「青森県立美術館」
所在地/青森県青森市安田近野185
開館時間/9:30~17:00
※最終入館は16:30
休館日/毎月第2・第4月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
TEL/017-783-3000
URL/aomori-museum.jp

【弘前れんが倉庫美術館】歴史ある煉瓦造りの建築に現代アートが呼応(青森・弘前市)

日本酒の工場として建てられたれんが造りの建物は、その後、日本初のシードル工場になり、倉庫として使われた時代を経て美術館へ。 Hearst Owned

明治・大正期に建てられた煉瓦造の建物を改修し、2020年に開館。「記憶の継承」と「風景の創生」をコンセプトに、現代アートの展示空間へと再生しました。設計を手掛けたのは、建築家・田根 剛。建物本来の姿をできる限り残しつつ、煉瓦を互い違いに積み上げ、上部をアーチ状に仕上げたエントランスの「弘前積みレンガ工法」や、シードルの淡い金色に着想を得たチタン製の屋根「シードル・ゴールド」など、新たな意匠も見どころです。

エントランスにある奈良美智の《A to Z Memorial Dog》。かつて奈良美智展を支えた多くの市民ボランティアへの感謝の気持ちを込めて制作され、弘前市に寄贈されました。 奈良美智《A to Z Memorial Dog》2007年 弘前れんが倉庫美術館蔵 (C)Yoshitomo Nara Photo:Naoya Hatakeyama

コレクションの柱となるのは、アーティストたちがこの土地を取材し、滞在制作によって生み出した作品群。開館から5年間で収蔵作品は200点以上に上り、弘前市出身の現代美術家・奈良美智の作品をはじめ、津軽地方にゆかりのある作家や、世界各地から訪れたアーティストの作品を幅広く収蔵しています。

弘前で生まれた新作「白鳥」シリーズに注目

《ありがとう、我が愛する白鳥よ!》など、文学や音楽に登場するさまざまな白鳥をモチーフにした作品を発表。 (C)Sachiko Kazama Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production Photo by Kei Miyajima

11月15日(日)まで、美術家・風間サチコの東北初となる個展「方丈ルームの1000里眼」を開催中。風間は東日本大震災における原発事故などの時事的なトピックから学校などの身近な場所まで、近現代の社会的事象を題材に、文学、神話、個人的記憶を大胆に交差させた作品で知られています。今回の展示では、1990年代の初期作から近年の代表的な木版画、そして弘前での展示に合わせた最新作の絵画まで、約60点を紹介。新作の油彩画では、弘前で出会った一冊の本をきっかけに「白鳥」を描いたシリーズを展示します。

「弘前れんが倉庫美術館」
所在地/青森県弘前市吉野町2-1
開館時間/9:00~17:00
※最終入館は16:30、12月~2月は9:30開館
休館日/火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
TEL/0172-32-8950
URL/hirosaki-moca.jp

【青森公立大学 国際芸術センター青森】自然と共鳴しながら新しい芸術体験を(青森・青森市)

施設は、谷をまたぐ橋のように伸びる直線形の創作棟・宿泊棟と、馬蹄形の展示棟の3棟で構成されています。 画像提供:国際芸術センター青森(ACAC) / Photo Courtesy of Aomori Contemporary Art Center (ACAC)

建築家・安藤忠雄が設計を手掛けたアートセンター。現代芸術の多様なプログラムを発信する場として、展覧会はもちろん、アーティストの滞在制作なども行われています。建築のテーマは、森に建物を埋没させる「見えない建築」。周囲の自然環境や起伏に富んだ地形を壊さないよう配慮し、風景の一部として溶け込ませる設計が特徴です。敷地内には彫刻家・村岡三郎や河口龍夫の野外彫刻も点在し、自然と調和しながら表情を変えていく作品に出合えるのも魅力。木々のざわめきや鳥の声に耳を澄ませながら作品と向き合う時間は、いつもとは異なる深い鑑賞体験をもたらしてくれるでしょう。予約制で制作施設を利用できるプログラムもあり、自ら手を動かしてアートの世界に入り込むことも可能。

「青森公立大学 国際芸術センター青森」
所在地/青森県青森市合子山崎152-6
開館時間/9:00~19:00(展覧会は10:00~18:00)
休館日/無休
※年末年始、保守点検日を除く
TEL/017-764-5200
URL/acac-aomori.jp

初出:リシェスNo.56 2026年6月26日発売

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