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「写真撮ってもいいですかぁ~」廃式場に響いた“声”とシャッター音…携帯に残された“異様な待ち受け画面”とは

  • 2026.8.11
写真はイメージです。提供:アフロ

放送後にファンが小説形式でリライト記事を投稿してその人気を拡散していくことでも知られる、生配信サービス「TwitCasting」の怪談番組「禍話(まがばなし)」。10周年という節目の今年は、ベストセラー怪談作家たちをゲストに呼んだトークライブを開催するなど、これまで以上に精力的に活動しています。

今回はそんな禍話から、バブル期に建てられたとある式場の廃墟に足を運んだ大学生たちに忍び寄る、おぞましい出来事をご紹介します――。


静寂に響く“シャッター音”

「写真撮ってもいいですかぁ~」

ガランとした式場にいたIさんの背後から響いてきた誰かの声。

ビクッと肩をすくめながら振り返って懐中電灯で扉を照らしたIさん。

錆びつき、少し開いたままになっていた重い扉の向こうから聞こえたその声は、妙に間延びしているような響きでした。

次の声が聞こえてこないかと身を固めていましたが、代わりに聞こえてきたのは携帯電話のカメラ機能のシャッター音でした。

カシャッ! カシャッ! カシャッ!

一体、何が起きているんだ……――答えの出ない静寂と恐怖に耐えられなくなったIさんが、ギギギッ……と錆びついた式場の扉を開けると、方々から懐中電灯の明かりが近づいてきているのがわかりました。皆、Iさんと同じようにあの声とシャッター音を聞きつけて戻ってきたようでした。

大階段を駆け下りながら、階下に集合した友人たちに今しがた耳にした奇妙な音のことを話すと、皆の表情が一様に青ざめていきました。

写真はイメージです。提供:アフロ

「お前らも、あの声聞こえたの?」

「うん」

「聞こえた……」

「携帯のシャッター音もしたよね……」

皆がこの不可解な現象に戸惑っていると、それまで口を閉ざしていた男性メンバーのTさんが、懐中電灯の明かりをとある方向に向けながらこう言いました――。

「向こうから聞こえた」

彼が照らしたのは、1階ロビーの大階段の脇にある、別館B館へ続く大きな通路でした。

「ここもだ、落書きが一切ない」

写真はイメージです。提供:アフロ

豪華絢爛を通り越して軽薄さすら漂っていたA館とは異なり、外から見ると地味な外観だったB館はその内部も同じようにシンプルでした。

「こっちはそこまでお金がない人でも利用できる価格帯だったのかもね」

場を和ませようとしたIさんの言葉に相槌を返してくれる者はおらず、無言のまま暗い通路を進んでいくと、道の先に別の式場の入り口が見えてきました。

“披露宴会場グレイス・ローズ”

入り口看板に書かれたその式場は、先ほどIさんが訪れた場所より一回り小さく、装飾もシンプルなホテル風で、茶色地に薄ベージュの幾何学模様が描かれたカーペットが敷き詰められていました。

中に入ってみると、ガランとした会場には無機質な白テーブルと布地の背に穴が開いたボロボロの椅子がズラリと並び、奥に新郎新婦が座っていたであろう壇上席がありました。

「……なんか息苦しいね、ここ。誰もいないのに会場いっぱいに人が詰まっている感じというか」

「嫌なこと言うなよ……」

「……落書き」

「え?」

「ここもだ、落書きが一切ない」

白壁に明かりを当てながら呟くTさん。

確かにこの廃式場はロビーに入った辺りから、不良たちが描いたと思われるスプレーの落書きはその姿を消していました。

思わず言葉を詰まらせた“壁の文字”

写真はイメージです。提供:アフロ

「これさ、もしかして、落書きするほど長くここにいられないから――」

Tさんが急に言葉を詰まらせて足を止めました。

「なに?」

「あれ……」

Tさんが照らしたのは、新郎新婦が座る壇上席の上。

普段なら家族との思い出動画などが映し出されるスクリーンがある場所。

そこに刃物で切りつけたように、大きな文字が彫られていたのです。


かわいそうな

かわいそうな

なかむら あけみ


見てはいけないものを見た気がしたそうです。

悲鳴をあげようにも喉が詰まって声が出ません。かろうじて横を振り向くと、女性陣も青ざめた表情で固まっていました。

唾を飲み込んで無理やり喉をこじ開けたIさんは、掠れた声で目の前に佇むTさんの肩をつかんで言いました。

「も、もう帰るぞ!」

「……あ、ああ、そうだな」

固まっていたTさんは我に返ったようにジーンズのポケットに手を入れると、折りたたみ式の携帯電話を開いて時間を確認しようとしたそうです。

ゴトン。

落ちた携帯電話を拾ったTさんは…

写真はイメージです。提供:アフロ

突然、携帯を床に落としたTさん。

足元に落ちた携帯の明かりに照らされた彼は、そのまま動かなくなっていました。

「何、してんの?」

Tさんの肩に手を置いて、顔を覗き込んだIさん。

「ふう……ふう……ふう……」

Tさんの呼吸が嫌に乱れているのがわかりました。

彼の顔は恐怖で引きつり、脂汗をにじませていたのが今でも忘れられないそうです。

「……もうそういうの、いいから早くしろよ! 帰ろうぜ!」

たまらず叫んだIさんは床に落ちた彼の携帯を拾うと、懐中電灯を持った手で女性陣の肩を押し、入り口に向けて強引に進もうとしました。

「ちょ、ちょっと待ってそれ……」

「あ?」

「写真撮ってもいいですかぁ~」という声の主

写真はイメージです。提供:アフロ

女性陣が指摘したのは、Iさんが手早く拾い上げたTさんの携帯の画面。何事かと自分でも画面を見てみると、目を疑うものがそこには写っていました。


かわいそうな

かわいそうな

なかむら あけみ


白い壁に彫られていたあの文字が待ち受け画面に設定されていたのです。

「うわぁ!」

思わず手を離して床に落ちた携帯。Iさんは棒立ちで背を向けるTさんから一歩距離をとりました。

震える3本の懐中電灯で照らされたTさんは、おもむろにこちらに振り返り言いました。

「俺だ……。あのとき、『写真撮ってもいいですかぁ~』って聞いて、携帯で写真撮ったの」

そっとしゃがんで携帯を拾い上げた彼の声は絶望で震えているようでした。

「自分の口から他人の声がしたんだ。誰だって気がつけるはずがねぇ……」

ブツブツと震える声。

「俺、もうダメな気がする……それがすげぇ怖い……」

Iさんは涙がこみ上げるのをなんとか堪えると、恐怖を怒りで誤魔化すように「ああ!!」と叫ぶや、Tさんの肩をつかんで無理やり走り出しました。

「置いていかないでよ!!」「ねぇ!!」と続いて叫びながら走り出す女性陣。

一同は来た道を全力で駆け戻り、ボロボロの控え室の窓をよじ登って外に出ました。

◆◆◆

あの夜以降、Iさんのみならずあの式場に足を運んだ全員が、怖くて自分の携帯の待ち受け画面を見ることができず、すぐに機種変更をしました。

その式場は2010年頃に取り壊され、今はもう跡形もないそうです。

文=むくろ幽介

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