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【長くいられないほど怖い場所】バブル期に建てられた“廃墟の式場”に忍び込んだ大学生たち…白く広い披露宴会場で聞こえた“誰かの声”

  • 2026.8.11
写真はイメージです。提供:アフロ

2016年の配信開始から10年以上もの間、目と耳の肥えたホラーファンを魅了し続けてきた、生配信サービス「TwitCasting」の怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」。

書籍化やドラマ化に加えて、近年は有名ホラー作家たちとコラボしたトークライブも開催されるなど、その勢いはますます加速中です。

今回はそんな禍話から、バブル期に建てられたとある“廃墟の結婚式場”にまつわる不気味なお話をご紹介します――。


建設当時から醸し出されていた“異様”

写真はイメージです。写真:masato_flaw/イメージマート

人々が往来する地方都市の中心街。そこから少し離れた十字路に佇むその式場は、年々周囲の建物に比べて古く黒ずんでいっており、まるで白い歯の間で腐っていく虫歯のようでした。

バブル景気全盛期の最中に生み出されたというその建物は、売りでもあった“えせルネサンス風”の3階建てのA館と、背後に増設されたホテルや大広間などが入った10階建てのB館がセットになっており、当時から“異様な建物”として認識されていたそうです。

建設を主導したのは他県から来た新興不動産開発会社のオーナー。彼は周りの反対も聞かずに建設に大量の資金を投入したものの、例のごとくバブルは崩壊。気がつけば彼の行方はわからなくなり、建物は有害物質を含んだ建材が多く使われていたこともあって解体費用が高くつき、街の中で腐り続けていました。

「先輩から聞いたんだけどさ……」

まるで薄汚れたラブホテルにも見えるその廃墟には、いつしか噂が付いて回るようになっていました。

そこでは“なにが起こるかわからない”

「何が起こるのかはわからないんだけど、とにかく長い間はいられないくらい怖いらしい」

殺人事件が起きたのでも自殺者が出たのでもない。具体的なエピソードがまるでついてこないその曖昧さが、逆に地元の若者たちの好奇心を定期的に刺激し続けていたそうです。

2000年代初頭のあるお盆休みの夜。当時大学1年生だったIさんたち5人組も、この廃墟に惹きつけられて肝試しに訪れていました。

1カ所だけ開いていた1階の窓から一行が忍び込んだのは、式場のそばにある控え室のような部屋で、中には古びた雑誌やビールの空き缶が床に散らばっていました。

“〇〇愛してる ずっと一緒”
“〇〇死ね”
“卍”

写真はイメージです。提供:アフロ

懐中電灯で照らし出した壁には、赤や黒のスプレーで以前忍び込んだ者たちが残したと思われる落書きが、そこかしこに描かれていました。

「ねぇ……不良っぽい人と鉢合わせたりしないよね……今お盆休みだし」

「まあ、大丈夫だろ」

カチャリ……。

そっと控え室の扉を開けたIさんたちは、式場の奥深くへ足を踏み入れました。

不気味な静寂が辺りを包む

写真はイメージです。提供:アフロ

視界に現れたのは、敷き詰められたボロボロのカーペット地と、充満したカビの臭い。

「なんか臭い……」

「雰囲気出てきたじゃん」

「ここ、披露宴会場に続く関係者用の廊下って感じかね」

控え室の窓から差し込む光が遮られると、辺りは懐中電灯の明かりだけが頼りの真っ暗な空間で、なおかつカーペットが足音を吸い込むことで異様な静けさに満ちていました。

「ねぇ、怖くなってきたんだけど……」

Iさんら3人の男性陣にくっつく女性陣。一行は肩を寄せ合いながら、時たま描かれている壁の落書きなどに目を向けつつ、長い廊下を歩いていきました。

しばらくして廊下の先から差し込んできたのは、白い街灯と宵闇が入り混じった青白い外の明かり。

「あ、ここに出るんだ……」

静寂の違和感と曖昧な噂

写真はイメージです。提供:アフロ

足を踏み入れたのはガラス張りの式場ロビー。

そこは、中央にある大きなシャンデリアが印象的な広々とした吹き抜け構造で、外から入ろうとしたときに鍵が閉まっていた場所でした。

その中央には金色の刺繍が施された赤いビロード地の大階段と、そこから続くU字型の上階がありました。

写真はイメージです。提供:アフロ

「あの上が大広間とかメインの式場かな……」

カシャン!

背後で響いた金属音。驚いたIさんが振り向くと、友人の女の子が金属製のラックに足をぶつけたところでした。

「ご、ごめん!」

「気をつけてね。というか……静かすぎるな、ここは」

「言葉にはできないんだけど、普通の廃墟と違う気持ち悪さがあるよな」

「……あ、わかった。落書きがないんだ、ここ」

言われてみると、こんなに広くて荒らし甲斐があるにも関わらず、ロビーには落書きやゴミがひとつもありませんでした。

「俺たちが入ってきた控え室が一番荒らされてないか? 普通はひらけたところが一番荒らされそうなもんだけど……」

何が起こるのかはわからないが、とにかく長い間はいられないくらい怖い――そんな曖昧すぎる噂の正体と荒らされた形跡のない理由は一体なんなのだろう……。

答えの出ない疑問が心の中に波紋のように広がっていくうちに、誰が言い始めるでもなく散り散りに周囲を探索し始めたのだそうです。

「昔は人でいっぱいだったんだろうなぁ……」

覗き込んだロビーカウンターの裏。

扉を開けた先のスタッフルーム。

5人全員が個別に黙ったまま進めている探索の最中、Iさんは得体の知れない好奇心に突き動かされるように大階段を登っていました。

目の前に見えてきたのは観音開きの重そうな扉。脇には『披露宴会場 サン・ミッシェル』の文字。

写真はイメージです。提供:アフロ

Iさんは金色の取っ手をつかむと、グッと体重をかけて大きな扉の片方を、グボッと音を鳴らして開けました。

天窓から外の明かりがかすかに入り込んでいたその披露宴会場は、西洋風のどこか軽薄にも感じられるデザインでした。

俯いて点在する電気の通っていないスポットライトや、テーブルクロスすら取り払われた無機質な円形のテーブル群。それらが醸し出す空虚さは、Iさんの心をじわじわと不安にさせていったそうです。

「昔は人でいっぱいだったんだろうなぁ……」

人の気配、もっと言うと“魂”が抜けたようにも感じられるこの建物は、外から見た以上の抜け殻で、空間全体が“死んでいるような感覚”さえ覚えました。

そんな死の空間を1人で探索している自分。

そういえば、なんで自分たちはこんな風にバラバラと何も言わずに探索してしまっているのだろう。皆で恐怖を共有するために来たはずなのに……――そこで初めて自分たちの行動の不可解さに気がつきました。

そして次の瞬間、遠くで誰かの声が響いたのです。

文=むくろ幽介

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