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手彫りのカヤックから生まれた、亀のような一脚。アーティスト・浜名一憲と椅子

  • 2026.8.10

インスピレーションの源となったり、長時間の作業を支えたり。豊かな表現が生まれる現場には、必ずクリエイターが信頼を寄せる椅子がある。アーティスト・浜名一憲さんの自宅を訪ね、日々腰をかける一脚について話を聞いた。

photo: Satoko Imazu / text & edi: Emi Fukushima

アーティスト・浜名一憲
BRUTUS

手彫りのカヤックから生まれた、亀のような一脚

しんと静まり返った空間で、粘土を手で練りながら、大きな壺を形作っていく。浜名一憲さんが日々作陶に向き合うのは、田んぼや畑を見下ろす古い日本家屋だ。

「ここにあるのは、友人が作ったものか、どこかで拾ってきた古いもの。家具にしろ暖房器具にしろ、新品で買ったものは一つもないんです。物の物語が共鳴して育まれる独特な空気感が、制作にいい作用をもたらしてくれています」

中でもひときわ存在感を放つのが、作業中に腰をかける小さな椅子。いつ、どこから流れ着いたのかはわからないという手彫りの木製カヤックの一部を座面に用いて、アーティストで友人のこばやしゆふさんが制作したものだという。

「最初に手にしたのは2016年頃。当時は白いペンキが塗ってあり、丸模様が描かれていました。7年ほど使っていたんですが、脚が折れてしまったんです。ゆふさんに伝えたら“直すので預かります”と。2年ほど経って、忘れていた頃に今の状態で戻ってきました」

脚部は頑丈で丸みのある流木に替わり、全体は柿渋がたっぷり塗られ、亀のような味わい深い姿に。

「“直す”と言われたら元の状態で帰ってくると思いますよね。それが、色も形もまるっきり変わっていた(笑)。でも、ルーツの不明さと自由な変遷がこの椅子の面白さ。座り心地のよさと作業に適した低さも気に入っています」

アーティスト・浜名一憲
国や時代も不明の木製カヤックの先端部分を使って作られた一脚。泥がはねた跡が、持ち主である浜名さんの痕跡を刻んでいる。

profile

浜名一憲(アーティスト)

はまな・かずのり/1969年大阪府生まれ。千葉県を拠点に作陶を続ける。自身の表現活動のほかに、空き家や土地を再生し、国内外のアーティストに制作の場を提供する活動も。

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