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俳優・アーティスト「のん」の半生を綴った一冊。『あまちゃん』ブレイク後に訪れた芸能活動の縮小。そこから広げていった新たな活躍の場とは?【書評】

  • 2026.9.17
のんフィクション ヒーロー誕生 小松成美/文藝春秋
のんフィクション ヒーロー誕生 小松成美/文藝春秋

『のんフィクション ヒーロー誕生』(小松成美/文藝春秋)は、俳優・アーティストとして広く活躍するのんの素顔に迫る一冊だ。一人の表現者の半生を追ったノンフィクションであり、デビュー20周年と、のんとしての活動10周年を記念したアニバーサリー・ブックでもある。

のんの人間性がうかがえるエピソードの数々

のんはNHKの朝ドラ『あまちゃん』の主役抜擢を機に、国民的ヒロインとして一躍時の人となった。それ以前から小中学生向けの雑誌『nicola(ニコラ)』のモデルとして人気を集めていた。しかし、所属事務所からの独立騒動後、本名で芸能活動ができなくなった彼女は、地上波を中心とした表舞台からは遠ざかった。

本書はのんの原点である故郷や家族・友人との関係、芸能活動の変遷を通じて、のんがどんな人間であるかを細やかに描いていく。華やかな舞台に躍り出た彼女しか知らない読者の多くは、本書で語られる意外な一面を読み進めるたび、のんの見え方が変わるだろう。

たとえば、小学校の担任がインタビューで振り返ったのは、小学4年生だったのんが書いた詩である。自身の指にできたカサブタから命に思いを馳せる短い詩には、みずみずしくユニークな感性が浮かび上がる。その後、小学6年生でギターを始めた彼女は、誰よりも練習し、音楽活動に没頭していた。そうした過去のエピソードには、多彩な表現に挑戦し続ける現在の姿が重なる。

また、のんの演技は「憑依型」と評されることが多いそうだが、本人は否定している。まるで素のままであるように見せるメソッドを活かし、自分の魅力を混ぜながら役作りをしていくという。あまりにも自然で天才のように見えてしまう演技の裏側には、たゆまぬ努力とストイックな姿勢がある。

自分らしく生きることを後押しする本

モデル時代にダイエットを強いられたストレス。そこからの解放のきっかけをくれた演技。『あまちゃん』ブレイクから一転して訪れた芸能活動の縮小。そして『この世界の片隅に』の声優に起用され、ひらかれた新たな道。彼女のキャリアは決して平坦なものではなかった。それでも一貫する表現に対する熱い想い、内面に同居する繊細さと大胆さ、そしてカリスマ性など、多面的な魅力を余すところなく本書は伝えている。

2026年現在、のんは俳優活動に加え、ミュージシャン、画家、映画監督など、活躍の場を広げている。2022年に公開された映画『さかなのこ』では、第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞に選ばれた。

本書は多くの読者に、「自分らしく生きる」とはどういうことかを考え直すきっかけをくれるだろう。何かしらの表現活動をしている人にとっては、特に勇気をもらえる内容が多いはずだ。のんのファンはもちろん、一筋縄ではいかない人生を歩むすべての人に読んでほしい一冊である。

文=宿木雪樹

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