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椅子のいい図書館。島根〈安来市立図書館〉

  • 2026.5.11

図書館は静かに本と向き合う場所。そこに、座り心地のいい椅子があったらどれほど幸せか。そんな願いを叶えてくれる図書館を、島根に訪ねて。本を愛する人を優しく迎える、いい椅子があった。

photo: Tomoyo Yamazaki / text: Yuka Uchida

島根〈安来市立図書館〉
BRUTUS

あえて名作とは伝えない、市民のための読書椅子

日本庭園を望む窓際に、一列に並ぶデザイナーズチェア。アアルトやイームズといった人気者から、松村勝男や川上元美など国内の堅実なプロダクトデザイナーまで、幅広い名作がセレクトされている。

ここは島根県の東部に位置する安来市の市立図書館。公共施設にこれだけの椅子が置かれているのにはユニークな経緯がある。

島根〈安来市立図書館〉内観
窓際の椅子に座ると目の前に日本庭園が広がる。植えられているのは落葉樹で季節ごとに風景が変わる。

きっかけは図書館移転の2015年に市の施設として〈和鋼博物館〉が完成したこと。たたら製鉄にまつわる博物館で、コンペティションで選ばれた設計者は宮脇檀(まゆみ)。

宮脇は椅子のコレクターとしても知られた建築家で、公共空間にもいい椅子が必要だと唱え、博物館のロビーの椅子にヤコブセンの《セブンチェア》を選んだ。そうした過程で宮脇から多くを学んだ市職員が後に図書館の移転計画を担当。宮脇の椅子選びの考えが図書館にも踏襲されたというわけだ。

宮脇檀の《セブンチェア》
宮脇檀が〈和鋼博物館〉のために選んだ《セブンチェア》は、図書館でもあちこちに置かれている。
柳宗理の《バタフライスツール》
書棚脇に置かれた柳宗理の《バタフライスツール》。広い座面は荷物置きとしても重宝されている。
相田貞夫の《アームチェア ヴォーグ》
無垢材を削り出した《アームチェア ヴォーグ》は、家具ブランド〈アイダ〉の創業者・相田貞夫の作。
川上元美の《ルカ アームチェア》
プロダクトデザイナー川上元美の《ルカ アームチェア》。帯状にした薄い木材を編んで背にしている。
ハリー・ベルトイアの《サイドチェア》
窓際のテーブルにはミッドセンチュリー期を代表する名作、ハリー・ベルトイアの《サイドチェア》が。
ウェグナーの《チャイナチェア》
ウェグナーが1944年に発表した《チャイナチェア》。肘掛けの位置が絶妙で、読書に疲れた手が休まる。

しかし、館内には椅子にまつわる特別な解説はない。聞けば、あえて名作とは伝えていないそう。

「いつか子供たちが県外に出た時に、ふるさとの図書館で見たことのある椅子だと気づいてくれたらそれで十分」だという。

使われ始めて20年以上。館内にしっくりと馴染んだ名作椅子に、今日もさまざまな来館者が腰を下ろす。なんの気なしに座り、庭の自然を眺めながら、思い思いに読書を楽しんでいる。

島根〈安来市立図書館〉内観
アルヴァ・アアルトの《アームチェア 406》やチャールズ&レイ・イームズの《LCW》などが窓際に一列に置かれている。来館者の中にはお気に入りの一脚がある人も。書棚の脇や休憩エリアにも名作椅子が点在している。

Information

安来市立図書館(島根・安来)

2004年に現在の場所に移転、開館。近くに日本海とつながる汽水湖・中海(なかうみ)が広がる。当時はまだ珍しかった滞在型図書館をコンセプトに掲げ、誰もがゆったりと読書を楽しめるように、館内に国内外のデザイナーズチェアを揃えている。

住所:島根県安来市安来町1062-1
TEL:0854-22-2574
営:9時~19時(土・日・祝~17時)
休:水曜・月末日。臨時休館あり

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