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『前橋国際芸術祭2026』を知ろう!楽しもう!~アーティスト・作品編~

  • 2026.9.11

群馬県前橋市の中心市街地で9月19日から始まる『前橋国際芸術祭2026』。現代アート、建築、音楽、映像、詩、インスタレーション、食など、さまざまな表現と出会えるのが特徴だ。ここでしか出会えない数々のプロジェクトの中から、BRUTUS読者に向けて10の作品を紹介。

text: Masae Wako

〈前橋国際芸術祭2026〉を楽しもう!アーティスト・作品編
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前橋の街ごと楽しむアートプロジェクト10選

2年に1度、ビエンナーレ形式の芸術祭として始まる『前橋国際芸術祭2026』。世界各国から約70組のアーティストを招聘して行われることもあり、展開される作品はジャンルもスタイルもさまざまだ。特徴のひとつは、アートを通じて前橋の土地の現在と歴史に触れられること。前橋は、〈白井屋ホテル〉〈まえばしガレリア〉など世界的な建築家による作品が点在するモダン建築の街であり、詩人・萩原朔太郎の故郷として知られる“水と緑と詩のまち”でもある。そういった前橋ならではのプロジェクトのほか、赤城山の伝説や前橋空襲にまつわる物語を掘り起こし、グローバルなアートの文脈で翻訳・発信するリサーチ型プロジェクトも。さらに本芸術祭では「食は現代美術の領域に入り得るか?」というコンセプトのもと、食にまつわる画期的なアートプロジェクトも発信する。

1、川俣正《Tree Hut》

無加工の木材や建築廃材を使って、既存の都市空間や自然環境にアクセスする。そんなサイトスペシフィックなインスタレーションで知られるアーティスト、川俣正。今回展開する《Tree Hut》は、川俣が2007年にノルウェーで初めて制作し、その後も世界各都市の街路樹などに展開している野外プロジェクトだ。本芸術祭では、〈アーツ前橋〉正面のケヤキの大木に現地制作するほか、市⺠参加型で構想した《Tree Hut》を周辺の公開空き地に設置。芸術祭のはじまりを記念するシンボルであり、これから続く街の再開発とともに新陳代謝を繰り返すパブリックアート・プロジェクトとしても計画されている。

川俣正の作品
《Tree Hut》

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川俣正
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川俣 正

かわまた・ただし/1953 年北海道三笠市生まれ、フランス在住。第40回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1982年)、ドクメンタ8(1987年)など大規模な国際現代美術展への出品で知られる。建築や都市計画、地域コミュニティといった異なる分野と関わり、⻑期的かつ大胆なプロジェクトを展開するスタイルはアートシーンに大きな影響を与え続けてきた。

2、蜷川実花 with EiM

2023年には、前橋市内の廃業したキャバレーと〈白井屋ホテル〉の吹き抜けに、草花・蝶・魚など生命のサイクルを光彩色の作品で表し、前橋の衰退と再生を物語った写真家の蜷川実花。今回は科学者・アーティスティックディレクターの宮田裕章、プロダクションデザイナーのEnzoらと結成したクリエイティブチーム〈EiM〉と共に、再開発エリアで新作を発表する。

蜷川実花の作品
蜷川実花 with EiM,Breathing of Lives,2023©︎mika ninagawa,Courtesy of Tomio Koyama Gallery(参考作品)

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蜷川実花
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蜷川実花

にながわ・みか/写真家、映画監督、現代美術家。2001年、木村伊兵衛写真賞を受賞。これまでに写真集120冊以上を刊行、個展150回以上、グループ展130回以上と国内外で精力的に作品発表を続ける。『ヘルタースケルター』(2012年/沢尻エリカ主演)ほか⻑編映画を5作、Netflix『FOLLOWERS』(2020年)など、映画監督としても活躍。

3、渋谷慶一郎《Abstract Music》

かつてはシャッター通りだった商店街「オリオン通り」。その120mもある長いアーケード全域を使って、複数のスピーカーから音が動きめぐる空間を創出する。音楽家・渋谷慶一郎自身の膨大なサウンドデータやAIによるリーディングを、オリジナルプログラムがリアルタイムに組み合わせ、ストリートに社会実装。まるで風や囁き声のようなサウンドとして、路地を漂い駆け抜ける。都市空間に投げ込まれたサウンドが、無限に変化・拡張することで、目に見える風景や体感も変わっていく。そんな未知の音響空間を味わえるはず。

渋谷慶一郎の作品
サウンドインスタレーション《Abstract Music》/グラフィックデザイン:八木幣二郎

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渋谷慶一郎
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渋谷慶一郎

しぶや・けいいちろう/音楽家。東京・パリを拠点に活動。先鋭的な電子音楽作品からピアノソロ、オペラ、映画音楽、サウンドインスタレーションまで多岐にわたる作品を手がけている。2012 年にボーカロイド・オペラ『THE END』を発表、パリを皮切りに世界を巡回。2018 年以降はアンドロイド・オペラの制作を本格化し、パリ・オペラ座、シャトレ座、ドバイ万博、新国立劇場、サントリーホールなど国内外の劇場を中心に発表。人間とテクノロジー、生と死の境界を問い続けている。

photo:Grégoire Alexandre

4、アレクサ・クミコ・ハタナカ

日本、ベトナム、韓国など世界各地の紙づくりをリサーチ。手漉き和紙を素材にして、テキスタイル・衣服・彫刻などを制作するアーティスト。第61回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に選出されるなど世界的に注目される新鋭が、前橋に滞在して制作を行い、その成果を〈アーツ前橋〉で発表する。風土が生み出した伝統の技を読み解き、環境危機の時代に必要な智慧として提起する新作に、期待が高まる。

photo:Marco Pavan(参考作品)

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アレクサ・クミコ・ハタナカ
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アレクサ・クミコ・ハタナカ

Alexa Kumiko Hatanaka/1988 年カナダ・トロント生まれ。日系カナダ人かつクィア・アーティストであり、双極性障害とともに生きる経験を作品の基盤とする。主に紙を用い、版画、インクドローイング、草木染めを縫製と組み合わせ、伝統的な紙の技法や素材を再解釈することで、彫刻や大規模版画インスタレーション、着用可能な立体作品に昇華させる。その作品はこれまでに、アーモリー・ショー、オンタリオ美術館、大英博物館、トロント・ビエンナーレなどで展示された。

photo:Roya Delsol

5、尾花賢一+石倉敏明《赤城山リミナリティⅢ》

前橋の街を見守る赤城山は、数多くの伝説を残す山岳信仰の聖地でもある。その赤城山に関する半年間の取材を経て制作されたのが、芸術人類学者の石倉敏明とアーティストの尾花賢一が発表した《赤城山リミナリティ》(2019年/アーツ前橋)。今回はその続編として、赤城山とその周辺の民俗をリサーチ。赤城山から吹き下ろす猛烈な「からっ風」と、山々から流れる川の水を主題として、気流と風土を再考する。アーケードや街中に配置したドローイング群を通して、鑑賞者は自らの身体で、赤城山から吹き抜ける多様な風の気配を捉え、感じるのだ。

尾花賢一 + 石倉敏明の作品
《赤城山リミナリティ Part 3》2026/イメージ

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尾花賢一 + 石倉敏明
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尾花賢一+石倉敏明

おばな・けんいち(右)、いしくら・としあき(左)/自然、地理、歴史、民俗を横断しながら対象地域を捉え直し、その場所に暮らす人々や、歴史に残らない小さな集団の記憶をすくい取った物語をドローイングや彫刻を交えながら再構築する。主な展示に「ゴースト 見えないものが見えるとき」(2025, アーツ前橋)、「多摩川ジオントグラフィー」(2024, 調布市文化会館たづくり)、「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」(2024, 青森県立美術館)など。

photo:Yu Kusanagi

6、最果タヒ+佐々木 俊

2024年、詩人の最果タヒが『恋と誤解された夕焼け』で受賞した萩原朔太郎賞。その年の優れた現代詩の詩集から選ばれるこの文学賞は、1992年に前橋で創設されたものだ。本芸術祭では前橋と最果のコラボレーションを発展させ、グラフィックデザイナーの佐々木俊とともに、オリオン通りに“水と緑と詩のまち”を象徴する言葉のパブリックアートを制作・設置する。

最果タヒ + 佐々木俊の作品
さいたま国際芸術祭2020 最果タヒ《詩の加速》2020/グラフィックデザイン:佐々木俊 作品撮影:丸尾隆一(参考作品)

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最果タヒ

さいはて・たひ/2004年よりインターネット上で詩作を始め、2006年に第44回現代詩手帖賞受賞。2008年、第1詩集『グッドモーニング』で第13回中原中也賞受賞。第4詩集『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は石井裕也監督により映画化された。エッセイ集『きみの言い訳は最高の芸術』、小説『十代に共感する奴はみんな嘘つき』など著書も多数。ホテルとのコラボ企画「詩のホテル」や、詩とプラネタリウムを融合した作品など幅広く活動する。

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佐々木俊
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佐々木 俊

ささき・しゅん/グラフィックデザイナー。2016年〈AYOND〉設立。2020年JAGDA新人賞受賞。最果の著書や詩の展示構成のほか、2019年展覧会「デザインの(居)場所」(東京国立近代美術館)、2021年「NHK紅白歌合戦」番組ロゴなどのデザイン・アートディレクション、2023年「ハヤカワ新書」装丁などを手がける。

7.吉開菜央《風呼び》

映像作家・ダンサーの吉開菜央が、前橋を拠点にリサーチを重ね、「⾚城おろし」とも呼ばれる上州の季節風「からっ⾵」をテーマにした映像作品《⾵呼び》を発表。⾵や声を媒介に、⾵景に⽴ち現れる物語を描き出した。⾚城⼭の⼭頂のひとつである地蔵岳には、死者の魂が還るとされる場所があり、⼭上で死者の名を呼ぶとその⾯影が現れるという〈魂呼び〉の⺠間信仰が伝わっている。吉開はこの⾵が⼈々の記憶や⽣活にどう関わってきたのかに着⽬し、此岸と彼岸のあわいにある世界を浮かび上がらせたのだ。

吉開菜央
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吉開菜央

よしがい・なお/世界を五感で理解しようとするときに心と身体に起こる変化を「踊り」と捉え、その感覚を軸に映画を制作。主な監督作品に『Shari』(ロッテルダム国際映画祭2022公式選出)、『Grand Bouquet』(カンヌ監督週間2019正式招待)、『ほったまるびより』(第19回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門新人賞)。演者として映画出演、舞台作品の演出・美術も手掛ける。

photo:Atsuko Chiba

8、山田紗子《outline bar》

2025年の〈大阪関西万博休憩施設〉など独創的なプロジェクトを次々と手がけている山田紗子。今もっとも注目される建築家の一人が、前橋のアーケード商店街の一角に、再開発の起点となる建築を設計中だという(芸術祭の期間は工事を進行し、その建物内部は第2回の芸術祭 2028に公開する)。今回はそんな山田の思想と空間へのアプローチを紹介すべく、2023年に制作されたスチールバーによるインスタレーション《outline bar》を〈アーツ前橋〉で再制作。会場では、日本のコンテンポラリーダンスシーンを牽引する若手ダンサー・小暮香帆とのコラボレーションも予定。

《outline bar(ART WEEK TOKYO 2023 初出)》MEET YOUR ART FESTIVAL2024「New Era」ART EXHIBITION 展示風景

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山田紗子
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山田紗子

やまだ・すずこ/1984年東京都生まれ。大学在学時にランドスケープデザインを学び、藤本壮介建築設計事務所勤務を経て、東京藝術大学大学院に進学。後に独立。屋内外を横断する無数の構造材によって一体の住環境とした住宅作品「daita2019」で、第3回日本建築設計学会賞大賞、第36回吉岡賞などを受賞。住う人・集う人の能動性を引き出す建築で注目を集めている。

9、ヘラルボニー

「異彩を、放て。」をミッションに掲げるアートライフスタイルブランド〈ヘラルボニー〉が、「障害者週間」(12月3日〜9日)の週末に、体験型ワークショップ・ガーデンを行う。コンセプトは、「FUN(楽しさ)」と「Inclusion(包摂)」を融合させた「FUNclusion(ファンクルージョン)」。多彩なクリエイターによる、五感を使う体験を通して、一人ひとりのなかにある当たり前の感覚を柔らかくほぐしていく。会場はアーツ前橋に隣接する〈ミヤケン元気21にぎわいホール〉。

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ヘラルボニーのロゴ
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ヘラルボニー

福祉施設に所属するなど障害のある国内外の作家たちとともに、新たな文化の創造を目指す岩手県発のアートライフスタイルブランド。作家が描くアートと多様なものや場所とのコラボレーションや、障害との接点を広げる研修やイベント、アートワークショップなどを展開する。その創造性が評価され、世界最大規模の広告・コミュニケーションの国際フェスティバル「カンヌライオンズ 2025」の「Glass: The Lion for Change」部門で金賞を受賞。

10、浜田岳文《Food as Art?》

128カ国以上を食べ歩く「世界No.1フーディー」であり、食を文化や芸術の領域で捉えるガストロノミーを提唱する美食家の浜田岳文が、前橋国際芸術祭で「Food as Art」を提起するプロジェクトを始動。藤本壮介や永山祐子らスターアーキテクトが手がけた建築を拠点に、「食は現代美術の領域に入り得るか?」という自らの問いを検証する多彩な食体験を提供する。画期的なこのプロジェクトを共同で行うのは、ミシュラン二つ星レストラン〈Alchemist〉のラスムス・ムンクや、日本のガストロノミーに新たな潮流をもたらしている高田裕介ら、世界的なシェフたちだ。

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浜田岳文
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浜田岳文

はまだ・たけふみ/1974年兵庫県宝塚市生まれ。米国イェール大学政治学部卒業。世界128カ国・地域を訪問。国内外のメディアで食と旅に関する情報を発信する。2025年11月より「世界のベストレストラン50」および「アジアのベストレストラン50」日本評議委員長に就任。海外レストランサイトのレビュアーランキングでは8年連続1位を獲得し、世界的美食家として知られる。


『前橋国際芸術祭2026』には約70組のアーティストが国内外から招聘され、思い思いの表現を行う。アーティストやプロジェクトについて詳しく知るのに便利なのが公式ホームページだ。会場を訪れる前にチェックし、鑑賞の参考にしてほしい。

Information

第一回 前橋国際芸術祭2026

開催テーマ:「めぶく。 Where good things grow.」
会期:2026年9月19日(土)〜12月20日(日)
主な会場:アーツ前橋、 まえばしガレリア、白井屋ホテル、前橋市中心市街地エリア
Instagram:maebashi__biennale
主催:前橋国際芸術祭2026実行委員会
特別共催:株式会社メルコグループ
共催:前橋市
公式HP:https://maebashi-biennale.com

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