1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. 草間彌生の新たな“宇宙”も。国際美術展「TOKYO ATLAS」が東京・臨海部を舞台に10月開幕

草間彌生の新たな“宇宙”も。国際美術展「TOKYO ATLAS」が東京・臨海部を舞台に10月開幕

  • 2026.9.20
© YAYOI KUSAMA, Courtesy of Ota Fine Arts

美術館を飛び出し、東京の街そのものを展示空間に

「TOKYO ATLAS」が目指すのは、美術作品を専用の展示施設の中だけに収めるのではなく、日常の都市空間へと展開すること。舞台となるのは、台場、青海、天王洲を中心とする東京の臨海部だ。

タイトルの「ATLAS」は、ギリシャ神話に登場する世界を支える存在であると同時に「地図帳」を意味する。作品を求めて街を歩く体験そのものを、未知の地図をたどるような旅として捉え、アートを通して東京という都市をあらためて発見することを試みる。

会場のひとつ、台場公園。 Hearst Owned

会場のひとつとなる台場公園は、幕末に黒船への防衛拠点として築かれた砲台跡。隣接するお台場海浜公園とともに、自然、歴史、海、高層ビルが重なる独特の都市景観のなかに作品が展開される。

アーティスティック・ディレクターを務めるのは、美術評論家で草間彌生美術館長などを務める建畠晢と、国際的な展覧会のキュレーションを数多く手がけてきた三木あき子だ。

左から/アーティスティック・ディレクターの建畠晢、三木あき子。 Photo: KITAJIMA Akira

海の上にイケムラレイコの巨大彫刻。草間彌生の作品は世界初の組み合わせで

台場エリアでは、草間彌生の代表作《ナルシスの庭》(1966/2026)をはじめ、趙要(ジャオ・ヤオ)の《Something in the Air》、石毛健太による音響インスタレーションなどが登場する。

石毛健太《ただの水ではない》(2019)「生きられた庭」(京都府立植物園、京都、2019)展示風景。 Hearst Owned

さらに、お台場海浜公園の沖合には、イケムラレイコによる高さ6メートルの巨大彫刻を設置予定。美術館のホワイトキューブではなく、水面や空、東京湾の景観を背景に作品を見る体験が生まれる。

イケムラレイコによる《「TOKYO ATLAS」プランスケッチ》(2026)。 Hearst Owned

青海のテレコムセンタービルでは、先日この世を去った草間彌生による巨大なバルーン作品2点を展示。《ヤヨイちゃん》(2012/2023)と、日本初公開となる《宇宙へ行って見た愛の花束》(2021)が同じ空間に登場する。この2作品を組み合わせて展示するのは世界初となる。

高さ37メートル、5層吹き抜けのアトリウムという巨大な建築空間に、柔らかなバルーン作品が浮かぶことで、建築と作品のスケールが呼応する空間が生まれる予定だ。

地下駐車場から港まで。場所の記憶をアートで読み替える

「TOKYO ATLAS」の面白さは、有名作家が参加することだけではない。それぞれの作品が、展示される場所の歴史や機能と結びついている点にある。

青海南ふ頭公園では、フランスのアーティスト、アブラハム・ポワンシュヴァルが、自ら巨大なボトルの中で生活するパフォーマンス《La Bouteille》を展開予定。また、東京藝術大学の小沢剛研究室を中心に活動する「ヤギの目」は、実際にヤギを飼育しながら、持続可能な創作やコミュニティのあり方を探る。

アブラハム・ポワンシュヴァル《La Bouteille》(2024)パリでの展示風景 Photo by Hafid Lhachmi / ADAGP Paris 2024. Courtesy Semiose

さらに、現在利用が休止されている青海南ふ頭公園内の全長197.5メートルの地下駐車場も、今回特別に展示会場として開放される。通常は足を踏み入れることのできない地下空間そのものを生かした展示が計画されている。

同会場では潘逸舟、ケイティ・パターソン、イペェ・ヌルらに加え、タイ出身のカウィター・ワッタナチャヤンクーンが、実際にこの地下駐車場で制作した新作映像を発表する予定だという。

作品を見るために街を移動することが、そのまま東京の歴史やインフラ、海との関係を読み直す行為になる。従来型の「展覧会を見る」という経験とは少し異なる、都市そのものを歩いて体験する国際美術展になりそうだ。

ムハンナド・ショノ《The Teaching Tree》(2022)。第59回ヴェネチア・ビエンナーレ、サウジアラビア館での展示風景。 Artur Weber

「ATLAS」をデザインするのは田中義久+centre Inc.

展覧会のヴィジュアル・アイデンティティを担当するのは、田中義久+centre Inc.。東京都写真美術館や国際芸術祭「あいち2022」、TOKYO ART BOOK FAIRなどのVIを手がけてきた田中が、臨海部の土地の歴史をリサーチし、その変化を視覚化する。

今回のVIは、ひとつの固定されたロゴを掲げるのではなく、台場、青海、天王洲というそれぞれ異なる土地の成り立ちを読み解くための「視覚的な装置」として設計されている。埋め立てや土地利用の変遷をデータから抽出し、グラフとしてデザインに落とし込むというアプローチも、本展の「都市を読む」というコンセプトと呼応している。

また、関連企画として、東京都がこれまで支援してきた若手アーティストやキュレーターを紹介する「座標|Coordinates」も開催。子ども向けワークショップや、「アート×ビジネス」をテーマにしたプログラムなども予定されている。

10月10日~12月20日、[台場エリア] 台場公園・お台場海浜公園[青海エリア] テレコムセンタービル 、青海南ふ頭公園、地下駐車場(青海南ふ頭公園内)[天王洲エリア] アイルしながわ、WHAT MUSEUM

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ