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“教師と恋する中学生”から“謎が深まる大人”へ。進化し続ける実力派俳優の「恋の距離」

  • 2026.8.8
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2022年5月、映画『死刑にいたる病』公開記念舞台挨拶に登壇した岡田健史(現・水上恒司)(C)SANKEI

好きになったら、気持ちを隠してはいられない。相手が10歳上の教師でも、越えてはいけない線があっても、まっすぐに追いかける。

2018年放送のTBS系ドラマ『中学聖日記』で、水上恒司(当時は岡田健史名義)が演じた黒岩晶は、感情を抑えきれない中学生だった。それから7年。2025年公開の映画『九龍ジェネリックロマンス』で演じたのは、相手を気にかけながらも、簡単には近づけない秘密を抱えた大人の男性だ。

恋する相手へ一直線に進む少年から、近づきたい思いと距離を取る理由の間で揺れる大人へ。二つの役を並べると、水上が恋愛作品で担う立ち位置の変化が見えてくる。

感情が先に走ったデビュー作の少年

『中学聖日記』は、水上の俳優デビュー作だ。演じた晶は、担任の末永聖(有村架純)に惹かれていく15歳。聖には婚約者がいて、二人は教師と生徒でもある。思いが強いほど、周囲との摩擦も大きくなる関係だった。

晶は駆け引きで相手との距離を縮める人物ではない。視線や沈黙に気持ちがにじみ、ときには衝動のまま動いてしまう。大人の事情を理解するより先に、「好き」という感情があふれ出す。その危うさと未熟さが、晶という少年の切実さになっていた。

物語が3年後へ進んでも、年齢と立場の差が簡単に消えるわけではない。晶は大人に近づこうとする一方で、まだ答えを求める側にいる。教える側の聖を見上げ、拒まれても思いをぶつける姿には、俳優として走り出したばかりの水上の勢いも重なって見えた。

誰かを支える側へ移った5年後

2023年公開の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』では、特攻隊員の佐久間彰を演じた。現代から1945年へタイムスリップした女子高校生・加納百合(福原遥)を気にかけ、慣れない時代で生きる彼女を支える青年だ。

ここで水上は、年上の相手に答えを求める少年ではなく、年下の相手を安心させる側に回った。ただ、彰もすべてを知る大人ではない。百合には彰が知らない未来が見え、彰には百合が理解しきれない時代の覚悟がある。互いに違うものを抱えたまま向き合う関係だからこそ、一方的に導くだけではない緊張が生まれる。

強い感情を前へ押し出す役から、相手を見ながら自分の思いを置く役へ。水上が演じる恋は、この作品で少しずつ「相手との間合い」を含むものへ変わっていった。

近づくほど、距離を取らなければならない男

その変化がさらに鮮明になるのが、吉岡里帆とW主演した2025年公開の映画『九龍ジェネリックロマンス』だ。水上が演じる工藤発は、九龍の不動産会社で働く鯨井令子の先輩社員。令子をお気に入りの場所へ連れ出し、何かと気にかける一方、二人の距離はなかなか縮まらない。

工藤が抱えているのは、令子に明かせない過去だ。令子はやがて、工藤のかつての婚約者が自分と同じ姿をしていたことを知る。距離が近づくほど、恋と過去の境目は曖昧になり、工藤の振る舞いにも別の意味が重なっていく。

晶は、好きだから近づこうとした。工藤は、気にかけているからこそ簡単には近づけない。相手に向ける視線の強さは共通していても、その感情をすぐ行動に変えるか、胸の内にとどめるかは正反対だ。

『中学聖日記』では、恋に追いつこうとする少年の感情が物語を動かした。『九龍ジェネリックロマンス』では、過去を抱えた大人が保つ距離そのものが謎を深めていく。水上は、恋を告げる勢いだけでなく、言えないことを残した佇まいでも関係を見せる立場へ移った。

教わる側から、相手を支え、距離を測る側へ。水上恒司の変化は、大人の役が増えたというだけではない。誰かを思う気持ちを、近づく動きにも、あえて立ち止まる時間にも宿せるようになった。その歩みがあるからこそ、秘密を抱えたまなざしは、デビュー作とは違うかたちで恋の切実さを伝えている。


※記事は執筆時点の情報です

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