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15年前、美人女優が演じた2人のハル。【手】に注目した細かい役作り

  • 2026.9.18
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2011年9月、映画「ツレがうつになりまして。」の会見に出席した宮﨑あおい(C)SANKEI

今から15年前の2011年9月、映画『ツレがうつになりまして。』の会見に、宮﨑あおいと堺雅人が出席した。2008年の大河ドラマ『篤姫』に続く、2度目の夫婦役。二人は次に違う関係を演じる案とともに、この先も夫婦役を重ねる面白さについて話していた。

宮﨑が妻を演じた作品は、この年、もう一本ある。2011年8月公開の『神様のカルテ』では、櫻井翔演じる医師の妻を務めた。偶然にも、二つの役はどちらもハルと呼ばれる。一方はのんびり屋の漫画家、もう一方は穏やかな風景写真家。同じ妻役でも、夫の隣にいるときの印象はずいぶん異なる。15年前の宮﨑の仕事をたどると、配役名だけでは括れない人物の描き分けが浮かぶ。

漫画家の晴子が持つ、自分のペース

『ツレがうつになりまして。』で宮﨑が演じたのは、漫画家の晴子。きまじめな会社員の夫・幹男がうつ病になり、二人で暮らし方を探っていく。夫に比べると、晴子はマイペースで大雑把なところがある。妻が何でも先回りして整えるような夫婦像には収まらず、彼女自身も変わっていく人として描かれる。

宮﨑も、大雑把な女性という点を意識して演じたと話していた。堺も、妻の成長を映画の中心と捉えていた。夫の闘病を描く作品で、妻にも戸惑いや変化の時間がある。宮﨑が演じるのんびりした晴子は、最初から答えを持つ頼もしい伴侶というより、夫と一緒に日々を重ねる人として親しみを感じさせる。

その生活を支える細部の一つが、漫画を描く手つきだ。宮﨑は撮影にあたり、原作者の細川貂々(てんてん)からペンの持ち方や絵の描き方を教わったという。力の抜けた役柄にも、漫画家として仕事をする手がある。妻という立場に加えて、晴子自身の職業や過ごしてきた時間まで感じられるところに、この役の厚みがある。

原作者の夫婦をそのまま再現することが、二人の目標だったわけではない。堺は、自分たちならではの夫婦を作ることを大切にしたと語っている。漫画の描き方という具体は受け取りながら、夫婦の関係は宮﨑と堺の間で作る。実話をもとにした役を、目の前で暮らす二人へ近づける姿勢がうかがえる。

穏やかな榛名にも、支えられる理由がある

『神様のカルテ』のハルは、榛名(はるな)と書く。風景写真家で、櫻井演じる医師・栗原一止(いちと)を温かく受け止める女性だ。宮﨑自身も、男性が思い描く理想に近い人物と捉えていた。晴子の大雑把さとは違い、榛名には、忙しい夫が安心して帰ってこられるような穏やかさがある。

ただ、宮﨑は榛名を一方的に夫を支える人とは見ていなかった。一止に必要とされることで、彼女も自分の居場所を得ていると話している。優しい妻という印象の内側に、相手を必要とする一人の女性がいる。表に出る振る舞いは穏やかでも、彼女にとっても大切な関係なのだ。

堺と作った、すれ違う夫婦の時間

宮﨑の妻役は、優しい表情だけに限らない。『ツレがうつになりまして。』について、堺はけんかの場面で宮﨑が見せた意地の悪い目つきを面白がっていた。二人は、気持ちがすれ違う場面をリハーサルで練ったという。安心して組める相手と、うまくいかない夫婦の時間も作っていたのだ。

穏やかに受け止める顔も、相手を困らせる顔も、その人と暮らす時間の中にある。宮﨑の妻役には、夫を支えるという一言で整えてしまうには惜しい、生活の手触りがある。同じハルという呼び名の下で、二人の女性がそれぞれ違う日々を送っている。その違いまで描く仕事が、同年の二作品に残った。


※記事は執筆時点の情報です

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