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「飯食べるね」卵とそばを隣の席で食べ始めた乗客。私の本音と食べていた乗客の気遣いとは

  • 2026.8.2
「飯食べるね」卵とそばを隣の席で食べ始めた乗客。私の本音と食べていた乗客の気遣いとは

通路から聞こえた電話

新幹線の窓側の席に座って、発車を待っていました。

隣はずっと空いたままで、このまま誰も来ないのかもしれないと思っていたのです。

そこへ、通路のほうから話し声が近づいてきました。

売店の袋を提げた男性が、スマホを耳に当てながら歩いてきます。

「もう新幹線だから、飯食べるね」

電話の向こうに聞いているようでした。

「うん。うん、そうする」

そう言って通話を切り、私の隣に腰を下ろします。

「すみません、通ります」

「あ、どうぞ」

会釈をされたので、こちらも小さく返しました。

発車のベルが鳴って、車体がゆっくり動き出します。

テーブルの上のざるそば

男性は袋を膝に置いて、まずゆで卵を取り出しました。

殻をむく音が、隣で細かく続きます。

袋の口を折り返して、そこへ殻を落としていきます。散らかさないようにしているのが分かりました。

それだけで終わるかと思っていたら、袋からもう一つ出てきました。

ざるそばです。

ふたを開けて、小さな容器のつゆを注いでいきます。だしの匂いが、座席のまわりに広がりました。

そして、そばをすする音が始まったのです。

飲食が禁じられている車両ではありません。それは分かっていました。

ただ、窓側の私は完全に囲まれた形でした。

降りる駅のことが、そこから頭を離れなくなります。

あと二駅。すすっている人の前を、荷物を抱えて通らせてもらわなければなりません。

(食べ終わるまで待ったほうがいいのかな)

声のかけ方が、いくら考えても浮かびませんでした。

先に立ってくれた人

まもなく到着を知らせるアナウンスが流れました。

私は膝の上でバッグの持ち手を握り直して、体だけ通路のほうへ向けます。

結局、何も言えませんでした。すみません、の一言が喉のところで止まったままです。

先に気づいたのは、隣の男性のほうでした。

「あ、降ります?今どけますね」

箸を置いて、ふたをそっとかぶせます。おしぼりで手を拭いて、そのまま立ち上がりました。

通路に出ながら、こちらを見て言います。

「においますよね、すみません」

「いえ」

それしか出てきませんでした。

「3分で食べ終わるつもりだったんですけど、思ったより長引いて」

男性は肩をすくめて笑いました。

「どうぞ、ゆっくりで大丈夫です」

荷物を抱えて席を出るまで、その人は通路の端に寄って待っていてくれました。

ホームに降りて振り返ると、窓の向こうにさっきの席が見えます。

男性はテーブルのそばに手をつけないまま、こちらに気づいて小さく会釈をしました。私も頭を下げます。

気を遣っていたのは、私だけではなかったのでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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